レイス討伐
俺達は入口から距離を保ちながら階段の正面に移動した。
階段の上まで、様子がよく見える。
階段の上は確かに回廊になっているようで、奥は壁がなんとか見えるが、左右の空間はアンデッドだらけだ。まさか、常に回廊がこんな様子じゃないだろう。多分、俺達がガーゴイルを殲滅したのを察知して、入口付近に集まってきたんだろう。
ウーコンは階段に降りてきたスケルトンにニョイボウを振るう。一振りで数体のスケルトンが砕ける。盾も何もあったもんじゃない。盾ごと、或いは剣ごと叩きのめしている。あっという間に回廊まで上り詰め、そこのアンデッドを薙ぎ倒すが、犇めいているのでそこから進むのは容易じゃない。倒した奴は床に散らばり、その上に奥から奥から詰めてくる。
一方のシロウは階段をゆっくりと昇って行った。それに気づき近づいてくるアンデッドを一体づつバッサリと斬り落としていく。見ると、盾を構えても盾ごとスパッと斬っている。
この二人には普通の盾は意味がないようだ。
「面倒だ、伸びろ如意棒」
ウーコンの掛け声と共にニョイボウが10メートル程も一気に伸びて、アンデッドを砕いていく。そのまま横に薙ぐとそこのスケルトンは殆どの奴が首を跳ばされた。
薙ぎ倒された空間に躍り込み、短く戻った如意棒を滅多やたらと振り回す。踏みつぶすスケルトンの体がバリバリと音を立てている。
ウーコンはそのまま回廊の左に押し込むようにアンデッドを倒しまくっているので、俺達からは姿が見えなくなった。ガンとかドカというような音ばかりが聞こえてくる。
シロウの方は悠然と進み、残ったスケルトンやグールをスパッスパッと斬っていく。
やがて俺達の目に入る部分では、立っているのはシロウとレイスだけだった。
レイスは立っていると言うよりも、ゆらゆらと漂うように存在しており、黄色くぼやけている。身体強化で視力を上げても、実体が良く見えない。大きさは2メートルに足らず。中心の濃い部分がなんとなく人型に見えなくもない。
シロウは再び両方の魔剣を高く掲げた。レイスもぼうっと光っているが、シロウはそのうちギラギラと輝きだした。
少しすると、シロウの輝きが少し落ち着き、レイスに向かって伸びていった。
その光はレイスに届き、レイスを囲むように流れていった。
「ゴゴ、グガア、オオオ」
低い、苦しそうな声がレイスから漏れ出した。
見ると、中心の濃い部分が実体を持ち出したように現実的な色合いになってきた。
「ナ、ナンダ。コレハイッタイ」
シロウの放った光の帯が薄まり、そこには魔術師のような、しかし古めかしいローブを身に着けた大柄な男が立っていた。長い金髪が左右に垂れている。
つっとシロウが一歩踏み出し、あっさりと右手に持った青の魔剣を振り下ろした。
魔剣は吸い込まれるように男の左肩口から入り込み、その体を二分して抜けていった。
「ウブッ」
男は斬られたことに気付いたのかどうか。下半身が床に立ったまま、斬られた部分がズルリと落下した。
シロウが視線を移すと、そちらからウーコンが出てきた。終わったようだな。
「全部片付いたか」
声をかけると二人がこちらに手を振った。
「大丈夫だ、全部片づけた。こっちに来ていいぞ」
俺達四人はジミーを中心にしたまま、慎重に階段を昇って行った。
生き残りはいないだろうが、階段自体がスケルトンの残骸で足を進めるのも大変だ。
どうにか回廊まで昇りきって左手を見ると、階段の残骸どころではない。回廊の突き当りまで、50メートルはあると思うが、びっしりとモンスターが倒れていた。手前は殆どスケルトンだが、奥を見るとグールが半分くらいは見える。アンデッドの場合、死体と言っていいのかな。元々死んでいるはずだが。
「凄まじいな」
「まあ、数が多いだけでどうってことは無いだろう」
凄まじいのはウーコンのことだが。
「俺は数だけだが、シロウは凄いな。そいつは亡霊だろう。俺が如意棒を振り回しても倒せたかどうか」
「確かに霊体のようでしたね。霊は斬りにくいので、実体を持ってもらいました」
レイスに実体を持たせるってのは人間業とは思えないな。俺も多少の魔術は修めたが、想像がつかない。そんなことができる魔術師なんているのかな。
「簡単に言うなあ。シロウを敵に回さなくてよかったな」
その科白がウーコンから出ることも驚きだ。どっちも化け物だと思うが。
回廊の左側はアンデッドの亡骸で埋まっていて歩きにくそうなので、反対の右側を進むことにした。
俺とイザベラで探査の魔法をかけるが、モンスターの気配はない。
この建造物は左右からぐるっと回って反対側で繋がっているようだ。確かに回廊だな。その中は庭と言えばいいのか、外から眺めた通り大木が生えているのは間違いないが、その中心がよくわからない。何か結界が張られているようで、俺達の魔法では確認ができなかった。
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