ガーゴイル
「まずは窪地の手前まで移動しよう」
とりあえず、全員で前進する。先頭にはウーコンとシロウ、その後ろに、ジミーを挟んでイザベラとノラが脇を固める。殿は俺だ。
右も左も天を衝くような大木で、大人三人でも抱えきれないものも多い。
樹々の間を縫うように進み、暫く歩くと窪地の境に着いた。
「これは窪地と言うより崖ね」
すぐそこから直角に近く地面が落ち込んでおり、覗いてみると10メートルくらい下に地面が見えた。樹々で見えにくく、うっかり落ちれば大怪我だ。下の地面からも30メートルを超える大木が軒並み生えており、樹々の天辺は確かにこちらとは差があるものの、崖になっていることに気付きにくい。俺達なら、うっかり落ちても舞空術でなんとかなるが、飛べない人間にとっては致命傷だな。
「崖の下からもなだらかに下っているようですね」
「ガーゴイルが見えるです」
崖の真下には布陣していないが、絶壁から100メートルほど先にガーゴイルが見え隠れしている。
ワイバーンと違って、樹々で隠されているため、総数は見積もれない。
そう言えば、頭上では何匹かのワイバーンがギャーギャーと騒いでいる。結界の外まで飛んできたはぐれ者も居るようだ。
「どうする、俺とシロウだけで降りるか」
「いや、同じ高さで様子を見たい。全員で降りよう。緊急の時はイザベラとノラで風の盾を起こしながら、ジミーを抱えて昇ってくれ」
「わかったわ」
「わかったです」
「ははは、僕も降りるんだね。でも僕は飛べないよ」
「イザベラとノラで両脇から抱えてやってくれ」
ジミーは緊張しているのだろう。顔が引きつっている。
「ジミー、怖いかもしれないが、お前を全くここに置いたままってわけにはいかない。恐怖も少しずつ慣らしてくれ」
「わ、わかったよ」
「じゃあ、ウーコン、シロウ先に降りてくれ」
「おう」
シロウは舞空術でスーッと垂直に降りていく。
ウーコンは一人乗りのキントウンを出して、真っ直ぐ降りていく。
底に着いたが、特に襲われることはなかった。見える範囲のガーゴイルも動きは無い。
ウーコンが遠くを眺めてから、俺達に呼びかけてきた。
「いいぞ、降りてこい」
まず、イザベラとノラがジミーの両脇から手を入れて支え、舞空術でゆっくり降りていく。
「うわっ、うわっ、うわっ」
最後に俺が周りを警戒しながら降りる。
全員が無事に窪地に降り立った。
「目に入るだけで20匹くらいか」
「ああ、探査を掛けたが、やっぱり100匹以上だな。150近く居るようだ」
「はは、それは楽しみだ」
強がりではなく、本当に楽しみのようだ。
「では行きましょうか」
シロウが青の魔剣をスラっと抜き放ち、悠然と進んでいった。
ウーコンもニョイボウを頭上でぐるぐる振り回しながら進んだ。力が有り余っているようだ。
ウーコンとシロウが50メートルほど進むと、ガーゴイル達も前に進んできた。石の翼を羽ばたかせ空中に浮かび上がる者もいる。
「じゃあ、いくぞおお」
突如ウーコンは走り出した。あっという間にガーゴイルの群れと激突する。寸前に横に大きく飛び上がり、木の幹を蹴って空中のガーゴイルに如意棒を叩きこむ。一瞬で3振りすると、3体のガーゴイルの頭部が弾け飛んだ。地に着くと直ぐに走りだし、地上の数体を叩き壊すと、またジャンプして木を蹴り、空中の数体を砕く。
シロウは左手にペンダントを握り、右手に魔剣を下げ、呪文を唱えながら悠然と進む。
あっという間に数十体のガーゴイルに囲まれるが、シロウの周り1メートルからガーゴイル達は近づけない。結界が張られているようだ。シロウが口角を上げ、ペンダントを翳すと数体が結界の中に突入してきた。
一瞬のうちに魔剣が煌めき、5体のガーゴイルが首を落とされて地に落ちた。シロウはなおも悠然と進みながら数体ずつ結界の中に呼び込んで斬り捨てる。まるで無人の野を行くようだった。
ウーコンが100体程、シロウが50体程のガーゴイルを殲滅するのにそれほど時間がかからなかった。
既に周りには動けるガーゴイルはいなかった。
「終わったか」
「流石にウーコンは素早い、私の倍は倒していますね」
「何言ってやがる、俺がせっかちって言うだけだろう。お前だって、本気でやれば、今の何倍も倒せるだろうに」
「そういうことにしておきますか」
「じゃあ、戻るか」
二人が進むと石を砕くような音が聞こえてきた。多分ガーゴイルを砕いているんだろうな。シロウは石をバターのように斬っているから、あんな音はしないだろう。ウーコンだろうな。
少しすると前方から何か近づいてきた。
「一匹来たです」
「うわわ」
一匹のガーゴイルがこちらに向かって跳んできた。
イザベラとノラがジミーの前に出て風の盾を張る。
俺は剣に魔力を流し、大きく踏み込んで飛び上がった。
ザクっという手ごたえがあり、ガーゴイルを肩先から二つに斬り落とした。
ドサッと地に落ちる。
「はぐれガーゴイルが結界の外まで出張ってきたんだな」
「結界に近づかなければ絶対大丈夫って訳ではないわね」
「油断はできないです」
ジミーは口を食いしばるようにして、ガーゴイルの死体を見下ろしている。
いつになく真剣な眼差しで、いくらか覚悟ができたのかもしれない。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!
ぜひよろしくお願いします!




