結界
シロウはゆっくり眠らせて、俺達ものんびり過ごした。
勿論、宝探しに行く準備のチェックなどは行うが、気持ちを落ち着けるための余裕の時間としてはいい休養だと思う。このメンバーなら大抵のことには対応できるが、ジミーを守らなければならないし、やはり未知の冒険には期待だけでなく不安もよぎる。
出発の当日がきた。
「さて、出発するとするか」
ウーコンの促しで外に出た。
「じゃあ、ウーコン。打ち合わせ通りキントウンを頼む」
当然だが、ある程度のシュミレーションや打ち合わせは済ませている。
シロウの転移術の方がある程度は早いが、宝探しの現地の位置も含め、自分の目で見て移動するために、俺達はキントウンを選んだ。
「いつものより大きいです」
「そうだな。6人乗るからな」
キントウンの大きさも自由自在のようだ。
先頭には当然ウーコンが位置取り、その腰にしがみ付くようにして、ジミーがウーコンの脇から顔を覗かせている。
「へへへ、面白そうだね」
膝も笑っているようだ。
中央にはイザベラが座った。立って乗ることもできるが、座ると怖さが半減するらしい。
その後ろに、右にシロウ、左にノラが立った。
殿は俺が位置する。雲の上で殿もないかもしれないが、万一を考えて後方の注意もしておく。
今回のクエストは注意し過ぎるということはないだろう。
キントウンは速い。瞬く間にラースターの北、山岳地帯に到達する。
リーゴーチ山地を下に見てなおも北に向かう。
「そろそろスピードを落として」
「わかった」
ここまでは鳥より遥かに速く飛んできたが、近くなってきたので鳥くらいの速度で進む。
「山の形からしてもこの先くらいなんだと思う」
かなり山岳地帯に入り込んでいる。周り全てが山であり、既に人家などは全く見えない。
「この辺でちょっと止まれるかな」
「任せろ」
キントウンはゆっくりと速度を落とし、やがて空中の一点に止まった。山並みを避ける意味もあり、かなりの高度を飛んできた部分もあるが、今の位置は地上から100メートルくらいか。
見える景色の多くが森に覆われており、部分的に地面が露出しているところが散見される。
「今、正面に見える方向がかなり窪んでいるでしょ」
「ああ、500メートルくらい先かな、樹々の様子を見るとかなり落ち込んでいるな」
「多分あの辺のはずなんだよ」
「じゃあ、近づいてみるか」
「慎重に行ってくれ。イザベラとノラはジミーを守る準備をしておいてくれ。もちろん臨機応変だが、基本的には俺と3人でジミーを守る。敵を倒すのはウーコンとシロウに任せる」
「ええ、わかったわ」
「わかったです」
キントウンはなおもスピードを落とし、人が歩くくらいの速さで窪地と思われる地帯に近づいた。
「あれは何ですか」
ノラはかなり眼がいい。身体強化で視力を上げている俺にも見えた。
「飛行型のモンスターの群れだな」
「む、群れですか。私には大群に見えるです」
「多分、ワイバーンだな。100匹以上は居そうだな」
「どうするの」
「ウーコン、降下して森に入ってくれ、森ならワイバーンも追ってこないだろう」
「よし」
キントウンはすーっと高度を下げ、樹々の間に入っていった。
「あ、あれは何ですか」
今度は樹々の下から、灰色の何かが上昇してきた。
「ガーゴイルの大群だな。イザベラ、ノラ風魔法で盾を二重に張れ」
「はい」
「はいです」
「ウーコン戻ってくれ」
「わかった」
キントウンは反転し、樹々の高い位置をそれなりの速度で戻る。
その間に早いガーゴイルが何匹か襲って来た。体は1メートルくらいと小さいが、おそらく石の体で、爪や嘴は鋭いだろう。
シロウは素早く飛行魔法で飛び出し、青の魔剣でガーゴイルを斬り捨てた。石の体のはずだが、魔剣の前ではバターのように斬れていく。
キントウンに近づく奴は俺がライトニングを見舞ってやった。
暫くするとガーゴイルは追ってこなくなった。上を見るとワイバーンも近くには来ていない。
「窪地の部分が結界になっているようですね」
なるほど。結界から出た者は追ってこないのか。
「結界の守護者ってことね」
俺達は既に、先ほど停止していたあたりまで戻っていた。
「みんな、被害はないな。ジミーも大丈夫だったか」
「は、はは、あれがガーゴイルなんだ」
真っ青な顔で震えている。
「大丈夫よ」
イザベラがすっと腕を回し、ジミーを抱きかかえるようにした。
「ウーコンとりあえず、地上に降りてくれ」
「うん」
キントウンは樹々を避けて垂直に下がり、俺達は地面に降り立った。
「ジミー、落ち着いたか」
顔色は多少戻り、震えもなくなっていた。
「キントウンに俺達が乗ったままではウーコンが戦いづらいだろうから、ここからは歩いて行こう」
「それはいいが、歩いて行ってもさっきの魔物は襲ってくるぞ」
「ちょっと数が多すぎるわね」
まあ、ウーコンとシロウが殲滅する間にこっちにも来るだろうな。あの数だとジミーを守るのも楽じゃない。
「ウーコン退治してきてくださいです」
「そうね、シロウと二人で間引いてもらいましょうか」
「おお、いいとも。その方が手っ取り早いしな」
「では、二人で行ってきましょうか」
ガーゴイル100匹だが、この二人だと散歩に行くついでのようだ。
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