魔法付与
アイシャ達は直ぐに作業に入ると言うので、俺達は家に帰ることにする。
シロウは作業を手伝うので、暫くは店に泊まり込むだろうな。
ジミーは作業に興味が有るようで、手伝うと言い張ったが、邪魔だからと帰された。
仕方ないので家に泊めるか。
家に帰ると、間もなくウーコンとノラも帰ってきた。
「お帰り、楽しかったか」
「ええ、とっても楽しかったです。闘技場に行ってきたです」
「ああ、この前も居たトリオンが出場してたよ。あいつは強いな」
「そう言えば、こないだもトリオンを評価していたわよね。わざと苦戦したって」
「そうだ。今日もギリギリの勝利に見せて実は余裕が有ったな」
「そうなの、ノラ、見てて分かった?」
「全然わからないです。危機一髪に見えましたです」
「そうよね。私も全くわからなかったわ」
俺も以前観戦に行ったことはあるが、随分行ってないので、花形選手も変わっただろうな。今言っているトリオンってのに心当たりはないな。
「防具はどうだった」
「ああ、順調だな。新しく防具を一式買ったんだが、これから錬金術で魔力を付与するそうだ。シロウも手伝って10日かかるそうだ。暫くは泊まり込みだな」
「なるほど、そんな簡単にはできないか」
「僕は3日でやってくれって言ったんだけどね」
こいつもマイペースだな。
俺達は防具に魔法が付与されるまでの間、自由な形態の毎日に戻った。
ウーコンもジェミニに誘われて冒険に行った。暴れに行ったと言ったほうがいいかもしれない。収穫より、さっぱりしたその表情が物語っている。
俺とイザベラ、ノラもクエストに行ったり、剣や魔法の訓練をしたりという日常を送った。
ジミーは戦うことは苦手と言うか興味がないようで、宝探しの予習としてクエストに同行するかと言っても言を左右にはぐらかし、もちろん剣の稽古などは全くしなかった。
俺達は夜になるとジミーから遺跡探索の情報を小出しに聞いていった。資料も多少みせてもらったが、その全体像をジミーの頭の中で展開していることが大事なことと認識できた。確かに、こいつにもしものことが有ったらお宝にはたどり着けないだろう。
防具の付与は約束通り10日で完成した。
「へえ、これが俺の防具だね」
俺達は全員で錬金術の店に集まった。
「そうよ、着てみて頂戴」
レギンス、軽鎧、小手など一つずつ身に着けていく。眺めていると、内部には何ヶ所か魔石が縫い付けられており、それ以上にいたるところに魔法陣が描かれている。確かにこれは手間がかかる仕事だろうな。
アイシャだけでなく、シロウもエリザベスでさえも目を赤く腫らせている。
「なかなか似合うわね」
「似合うです」
イザベラとノラが笑顔で褒める。
「へへへ、もっと言っていいよ」
「馬鹿ね、お世辞に決まってるでしょ」
アイシャは疲れているだろうが気が張っているようだ。
「やっぱり随分軽くしてくれてあるね」
「そうね、重さは大体十分の一くらいね。強度は逆に10倍以上。鎧だけで言えばプレートメールよりかなり丈夫よ」
「攻撃を受けると強度は弱まりますか」
「普通の鎧より消耗は少ないけど、全く損傷しないわけではないわ。ただ、強いモンスターの攻撃を諸に受けて傷まないってことでもないから、慢心は禁物ね」
「勿論、モンスターの牙がジミーに届かないように守らせてもらいます」
ウーコンが軽く拳を握り、正面からドンっと音がするくらい突いた。
「うん、大丈夫そうだな」
一瞬ドキッとした。みんなも目を見開いている。
いくら軽くと言っても、その軽い一撃でオーガくらいなら弾き飛ばすくらいの打撃だ。本当に強度が弱まらないのかな。アイシャも顔が引きつっている。
見るとエリザベスは全く落ち着いている。安心させる表情だ。
「ウーコン、テストをありがとう。ジミーもこれで安心でしょ」
「えっ、ううん、そうだね。安心安心」
ダメージは全くないだろうが、声は震えている。流石に殴られた本人なので、驚いているな。
「ウーコンの本気の一撃を受け止められるかはテストしてみたくありませんが、付与が十分できている証明にはなったでしょう」
ここにも一人落ち着いている人間が居た。
「ところでジミー、もう一日待ってくれないか」
「えっ、もう一日」
俺の提案にジミーが驚いて声を上げた。
「ああ、キントウン全員でジミーの安全を守りたいんだが、シロウがおそらく徹夜続きだろう。一日休ませてやってくれないか」
「うーん、もう一日かあ」
「ジミーここまで待てたんだからもう一日待ってあげなさい」
エリザベスが優しく諭すように言葉をかける。
「うん、そうだね。その方が安心だしね。わかったよ」
うん、やはり年長者の言葉は説得力がある。
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