トリオンVSウルフ
ウーコンとノラが席に着くと、ワアっという歓声が上がった。
競技場にはトライデントを持ったトリオンが入場したところだ。
「トリオンさまー」
黄色い声援がいくつも上がる。
「ああ、今日もトリオンが出場か。こないだ来た時も試合を見たんだ。その時はマンティコアを倒していたけど、今日はどうかな」
「反対からも出てきましたです。犬ですかね」
トリオンの正面に体長2メートルほどの犬型モンスターが5頭現れた。
「あれはグレイトウルフって言ってたな」
「ああ、グレイトウルフでしたか。一人で5頭も相手するですか」
「その剣を使えれば、ノラでも相手ができるんじゃないか」
「5頭と戦うのは怖いです」
ぐわーーーんと銅鑼の音が開始を告げる。
トリオンは三叉槍を地面すれすれに構え慎重に間合いを詰める。
一方のグレイトウルフは2頭が右へ1頭が左へ移動した。
「ああ、囲まれちゃったです」
「まあ、余裕だろ」
「そうなんですか」
グレイトウルフの1頭はそのままトリオンの後ろに回り込み、5頭でトリオンを囲む形となった。
トリオンは周りに注意を払うようにしながら、体を低く、半身に構えた。
「ガウッ」
真後ろのグレイトウルフが5メートルほどの距離を一気に詰めたが、ほとんど同時に体を後ろに捻り、槍の石突を後ろに突き出した。
「ギャンッ」
飛び掛かったグレイトウルフは喉元に一撃を喰らい横転する。
直後に残りの4頭が飛び掛かった。
トリオンの動きは素早く、1頭を柄で弾き、1頭の口に槍の穂先を突き立てたが、その1頭が串刺しにされながら、思いっきり穂先に喰らいついた。トリオンは体を投げ出して残りの2頭の攻撃をかわしたが、1撃目が肩を掠め、2撃目は左手首に嚙みつかれた。
「キャアアーー」
ファンの悲鳴があちこちで轟く。
トリオンは右手で抜いた短剣で左手に食いついているウルフの喉元を突き刺した。続く動作でショートソードを抜き、正面のウルフをざっくり袈裟斬りに落とした。
トリオンは右手一本でショートソードを構え、残りの1頭と対峙するが、その左手には喉元に短剣を突き立てられたまま血だらけのウルフがぶら下がっている。その牙が小手の防具を変形させるほど圧迫している。眼の光は消え失せているが、牙が緩む様子は無い。
最初に石突を喰らったウルフが立ち上がり、トリオンの正面に2頭が並んだ。
グルルルルと喉を鳴らしながら、2頭は同時にジャンプした。
それに対し、トリオンは両手を思い切り突き出すようにした。
右手のショートソードは思い切り深くウルフの口に突き立てられ、左手はブンっという音を立てながら、喰らいついたままのウルフを飛び掛かったウルフにぶち当てる。
怯んだところへ飛び掛かるようにしながら右腕を巻き付けた。既にショートソードは手から離れている。
左手には未だ1頭をぶら下げたまま、最後の1頭をヘッドロックの形に極めながら、地面にねじり倒す。
トリオンより遥かに大きいグレイトウルフを右腕一本を巻き付けるだけで締め落とそうとしていた。
防具の隙間から腕の一部が覗いているが、その筋肉は真ん丸に膨れ上がり、血管が太く浮いていた。
「凄い力ですね」
「ああ、あれは腕に魔力を流しているんじゃないかな」
「そうなんですか」
「うん、俺は魔法のことはわからないが、リードが以前使った身体強化の魔法とは少し使い方が違うように見えるな。それにしてもあの体でウルフを締め落とすとはな」
既にグレイトウルフは白い泡を吹きながら、体を痙攣させていた。
その動きが止まってから、ゆっくりとトリオンは体を起こした。
「ウヲオオオッ」
雄たけびを上げながら、両手を上に突き上げる。その左手には未だ、1頭のウルフがぶら下がっていた。
「キャアアアアア」
「ステキイイ」
「トリオンさまあ」
観客席は熱狂の坩堝に包まれた。
「すごい試合でしたね」
「ああ、凄かった。特に凄いのはトリオンが未だ全力を出していないことだ」
「えええ、あれで全力じゃないんですか」
「うん。前回もそうだったが、ギリギリに見せるのがあいつのやり方なんだろうな」
「でも、一歩間違えればやられそうでしたです」
「そうだ、それでもああいう戦いをやるのがすごいな。まあ、俺は真似できないが」
落ち着いたアイシャに今後の説明をした。
ジミーのことを心配し過ぎたあまりのようなので、落ち着けば物分かりは良かった。
「なので、アイシャにはジミーの身を守れるような魔力付与の防具を用意してもらいたいんだ」
「うーん」
「なんだ、難しいのか」
「魔力付与はできますけどね、まず、それなりの防具が必要になってきます。安物の鎧に魔力だけ付与しても大した防御はできません」
「そういうものか」
「はい、それでそれなりの防具はそれなりの金額がしますが、私もそんなに貯えがあるわけではないので・・・」
「じゃあ、その分は俺が投資しよう」
「えっ、いいんですか」
「ああ、俺たちは金も有ると言っただろ。お宝を見つけたら色を付けて返してくれりゃあいい」
「おお、流石リードの兄貴太っ腹だぜ」
「なに言ってるの、ちゃんとお礼を言いなさい」
アイシャがジミーの頭を思いっきり押さえつけた。
「ああ、ありがとう。姉ちゃん痛い痛い」
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