姉弟
俺とシロウ、そしてイザベラはジミーを連れて錬金術師の所に向かった。
ウーコンはノラと街に出かけた。
「シロウはいつも錬金術に行くのに歩いていくのか」
「そうですね。転移すれば早いのでしょうが、時が熟成させるものもあるでしょうから」
何やら難しいことを言っている。錬金術の次は宗教かもしれないな。
「そうね、時は金なりとも言うけど、こうやって歩いて街並みを眺めていく時間も人間には必要かもしれないわね」
早速、信者が一人できたようだ。
だが、俺やイザベラは兎も角、シロウやウーコンのような新参者は歩いて街をうろつくのもいいかもしれないな。
「シロウやイザベラは哲学者のようだね」
ジミーが楽しそうにしている。笑っている時は普通の子供に見えるな。
街はずれと言ってもそれほど遠いわけではない。話をしているうちに店に着いた。
「こんにちは」
シロウに続いて全員で店に入る。ふと、ジミーの方を見ると、何か急に大人しくなったようだ。気配自体が薄くなったように感じる。
「いらっしゃい。今日はお仲間と来たのね。
あら、あなたジミーじゃないの」
エリザベスはジミーと面識があるらしい。
「ジミーですってっ!」
大きい声がしたかと思うと、奥から姉弟子が、いやジミーの姉が飛び出してきた。アイシャと言ったか。
「ジミー!」
「やあ、姉ちゃん」
「やあじゃないわよ、どこをほっつき歩いてたのよ、どれだけ心配させれば気が済むの」
確か無口な娘と聞いていたが、そうでもないようだ。
「海辺の方に行ってたんだよ」
「どこに居たっていいけど、連絡をよこしなさいって言っているでしょう。何のためにテレフォンを渡したと思ってるの」
「ああ、忘れてた」
ジミーの方は急に口数が少なくなったようだ。
「アイシャもジミーが心配なんでしょうけど、そんなにポンポン言わなくてもいいでしょう。兎に角、みんなで奥に行って頂戴」
俺達は言われるままに皆で奥の作業場に移動した。そこにはテーブルと椅子もあるので、とりあえず座らせてもらった。
エリザベスも奥にやってきた。
「店番はいいんですか」
「ええ、ゴーレムも居るし、誰か来ればわかるから」
首を伸ばして店の方を伺うと、小柄な熊型ゴーレムが店番らしく、入口の方に移動していた。
「ジミーも手紙だけでもよこしなさいね。アイシャはあなただけが生き甲斐なんだから」
『あなただけが生き甲斐』か。歌の文句で聞いたような気がするな。
「別に生き甲斐じゃないですけどね。なにをしでかすか心配なだけです。ありもしないようなお宝ばかり追いかけているんだから」
「なんだよありもしないって、姉ちゃんの錬金術よりよっぽど確かな情報だぜ」
「私の錬金術は立派な技術です。あなたのはおとぎ話ばっかりじゃない」
「おとぎ話なんかじゃない」
いつもこう言われているから、疑われると腹を立てるんだな。今も真っ赤な顔で抗議している。
「アイシャも頭ごなしに言うもんじゃないわよ。ジミーもそんなに興奮しないで」
まあ、年の功と言うか、エリザベスがいい緩衝材になりそうだ。
「それで、今日はどうしたの。シロウ達と知り合ったようだけど」
「はい、エイジラーの港で出会いまして、まあ、意気投合したわけです。確かにどこまで信憑性がある話かは未だわかりませんが、ジミーの夢に私達も乗せてもらおうということになりまして」
うん。シロウは話し方がうまいな。「夢」って言い方はいいな。
「はああっ、あんた達馬鹿じゃないの」
夢の無い人間も居るようだ。
「アイシャ、興奮するんじゃありません」
アイシャは恨めしそうに押し黙る。
「確かに宝探しの話は真贋の根拠は薄いかもしれませんが、アイシャさんは何故そこまで疑うんですか」
「だって、ジミーの宝探しは子供のころからよ。今も子供だけど。何度も周りを巻き込んで、迷惑かけて、いい加減にしてほしいわけよ」
「なるほど、やはりお姉さんだけあって、そう言う場面を何度も見てきたわけですね。でも、今回は私達が好きで巻き込まれているので心配しないでください。私達はお金も力もあります。ジミーの宝探しの力になれる自信がありますし、ジミーが危険な目に合わないように全力を尽くします」
アイシャが俯いて押し黙った。少し目が潤んでいるように見える。
少しすると顔を上げて言った。
「私はジミーが無事で、皆さんに迷惑をかけなければそれで構いません。よろしくお願いします」
一転してしおらしくなった。やっぱり弟のことが心配ってことだな。
「ウーコンどこに行きますか」
「ノラと一緒ならどこに行っても楽しいが、闘技場はどうだ」
「ああ、面白そうですね」
「俺はこの間イザベラに連れてきてもらって気にいったんだ。丁度ヴァレンティーナ達ともそこであったんだ。その場でジェミニに誘われたんだ」
「そうでしたか、縁があったってことですね」
二人は入場料を払って一般席に入った。
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