魔眼
「助けてくれてありがとう。まあ、ほんとは俺一人でもあんな奴はどうってことなかったけどね」
一応礼は言ったが、なかなか負けず嫌いな奴のようだ。
港町らしく麦わら帽子をかぶっていたが、取ると随分若い。子供に見えなくもない。
「俺はジミー。割と最近露店を出したんだけど、あのデカ物がうるさくってね。まあ、実際のところ助かったよ。あれはなんかの魔術だろ」
「へえ、いい眼をしているようだな」
「はは、鑑定には自信があるんだ。あんた達がただ物じゃないのもわかるぜ」
「鑑定が商売なのか」
「そうだね。隠れた宝を発掘して店に出してるんだ。目利きができないと商売あがったりさ。
ところで風の噂に聞いたんだけど、ラースターのギルドでSクラスの冒険者が認定されたんだってね。それも猿人の」
そう言って、ウーコンを横目で眺めた。
「眼だけじゃなくて耳もいいんだな」
「ありがとう、褒められるのは嬉しいね。だけど、俺がもっと気になっているのはそっちのお兄さんさ」
ジミーはシロウの方を見やった。シロウの凄さが分かるのかな。
「さっきのデカ物もお兄さんがやったんだろ。どうやったのさ」
「ばれてしまいましたか。まあ、眠ってもらっただけですが」
「その胸のペンダントが怪しいね。それ強力な魔道具でしょ」
流石にシロウの顔色が変わった。
じっとジミーの顔を見つめた。
「魔眼ですか・・・」
「お兄さんもいい眼のようだね。俺のは生まれつきなんだ。ギフトってやつだね」
生まれついての特殊能力をギフトって言うのは聞いたことがある。魔眼ってのも言葉は聞いたことがあるが、これが本物なのか。こいつもシロウ並みの化け物なのか。
「まあ、お互い腹の探り合いは止めておきましょう。私達は敵対するより、むしろ協力したほうがいいと思いますよ」
「そうだね。ごめんごめん。俺はおしゃべりなのが玉に瑕でね。つい、言わなくてもいいことを言っちゃうんだ。それで何度も痛い目にあってるんだけど治らない。これは性分だね」
確かに随分お喋りのようだ。
「ところでジミーは露店を出すと言ってたけど、商品はどこにあるのかしら」
「ああ、これだよ」
そう言って、背負ったリュックを下ろした。
リュックの口を広げると、中から一抱えもある壺を出してみせた。
「マジックバッグか」
「ああ、そうだよ。流石にSクラス級の冒険者の人達は知ってるんだね」
「ああ、俺達も持っては居るが、お前はそんなに金回りがいいのか」
「そうだね。掘り出しもんを手にすれば金回りがいい時もあるけど、普段はピーピーしているね。このマジックバッグは姉さんに作ってもらったんだ」
「へえ、姉さんか」
「ああ、姉さんは腕のいい錬金術師でね。俺が独立する時に餞にくれたんだ」
「いい姉さんだな」
「へへ、そうだね」
ジミーは愛想を崩した。年相応と言うか、笑うと幼さが顔に出る。
「お兄さんたちは冒険者でしょ。エイジラーには仕事で来たの」
「ああ、コーガ―で一仕事してきたんだが、海は珍しいんでね。それでこっちまで足をのばしてみたんだ」
「ジミーは冒険者ではないですか」
「違うよ。残念ながら腕っぷしには自信がないんだ」
正直なところだろうな。あのデカ物がどうってことないってのは見栄を張っていたようだ。
「じゃあ、掘り出し物は自分で冒険して探すわけではないですね」
「そうだね。知ってる冒険者が持ち込んでくれたのを代わりに売ったり、お宝の噂を聞いたら、その話を流して探してきてもらったりだね」
「じゃあ、私達がお宝を探してくるのもいいかもです」
宝探しか。夢があるかもしれないな。
「ねえ、お兄さんたちは強いんでしょ。僕を宝探しの冒険に連れて行ってくれるってのはどうかな」
ジミーが目をキラキラさせて言った。
俺達は誰ともなく顔を見合わせた。




