港町
俺達は陸に上がって、魔道具をシロウに返した。
「面白い魔道具だったわね」
「面白かったです」
ウーコン以外は軽重はあるものの、防具を身に着けていたので、水魔法で塩水を洗い流した。
防具も小まめな手入れをしておかないと傷むからな。
ウーコンも塩水に濡れたままでは気持ちが悪いようで洗い流した。
とりあえず村長の家による。
「おお、お帰りなさい。首尾はいかがでしたか」
「ああ、マーマンを20匹ほど退治してきた」
マジックバッグを開けて素材を見せて確認させた。
「襲われたところから1キロほどは探ってみたが、ほかにはいないようだった。これで様子を見てくれ」
「ありがとうございました。これで漁にも出られます」
村長一家の感謝の言葉を受けて俺達は村を後にした。
「さて、それじゃあ帰るとするか」
「折角だから貿易港の方にも行ってみない」
「行ってみたいです」
「そうだな、まあ時間はまだ早いが」
俺達はシロウの転移魔法で東のエイジラー港に移動した。
港の外れの倉庫街に転移して、そこから大きな建物のある中心地に徒歩で向かった。
「ここは活気が有るわね」
「ああ、エイジラーの港は街としてもそれなりに大きいからな。特に港はにぎやかだな」
大きな船が何隻も接岸していて、いろんな品物を運び入れ、または運び出している。
俺達は食堂らしい建物に入って見た。
「ここは港の人達用の食堂かしら」
「そうだな、隣は観光客用の店のようだ。そっちに行くか」
「まずは、こちらで食事をして、働く人たちの様子を見てみましょう」
俺達はそれぞれ食券を買って食べ物を注文した。
労働者用の食堂と言った感じなので、椅子やテーブルは決して華美なものではないが、食事は味付けがしっかりしてうまかった。
「なかなか美味しかったわね」
「美味しかったです」
食後の茶を飲みながら見るとはなしに外を眺めていると、賑やかな話声とは別に、激しい言い争いが聞こえてきた。
「何かしら」
「行ってみるです」
外に出てみると二人の男が言い争っているのを野次馬が遠巻きに眺めていた。
「てめえ、なんど言わせるつもりだ。ここで店を出してえ奴は俺様にまずは挨拶するんだよ」
「何度もいいますが、組合の許可はもらっています。文句をつけられる筋合いはないでしょう」
怒鳴っている奴は2メートルくらいの大男で、もう一人小柄な男が市に店を広げているのに文句をつけているようだ。地回りというやつかな。
大男が小男の方あたりをどんっと突いた。対格差が有るので簡単に吹っ飛んで俺達の近くに倒れこんだ。
「ちょっと、事情は知らないけど、暴力はよしなさいよ」
イザベラが小男に手を貸して助け起こした。
「うっせえ。関係ねえ奴は引っ込んでろい」
お決まりの文句だな。
「乱暴は止めてと言っているのよ」
「なんだ、このアマ。お前がかわりにショバ代を払うってえのか。それともその体で払うのか」
俺が前に出ようとしたところで、シロウがさり気なく止めた。
見ると、大男が急に硬直したように動かなくなった。どんっと膝をつき、拝むような姿勢で前かがみにうずくまった。
野次馬もきょとんとしているところにシロウが小男とイザベラを促す。
「この方は怒りすぎて、具合を悪くしたのでしょう。さあ、今のうちにあちらに行きましょう」
俺達は小男を連れて少し離れた喫茶店に入った。




