マーマン討伐
この辺の海は透明度が高いようで、かなり先まで見通せる。
いろんな魚が泳いでいて、いい眺めだ。みんなが楽しそうにしているのもわかるな。
「でも、水中だと魔法は制限されるわね。ファイアーボールは効かないだろうし」
「そうだな、そもそも撃てるかどうかもわからない」
「近接の戦いになるってことかな」
ウーコン好みの戦いと言えなくもないな。
「水の抵抗があるから、勝手が違うかもしれないわね」
イザベラが剣を抜いて素振りをしてみるが、確かに剣速は明らかに遅いな。
「魔法も剣も力が出ないです」
「そこは何とかしましょう」
シロウが落ち着いた表情で言う。
「何とかなるですか」
「そうですね、魔法の方はなんとも言えませんが、剣は普通に振るえるようにしますよ」
「シロウが言うなら信用できるわね」
「そうだな、それじゃあイザベラ、探索してくれ」
そろそろ、2キロ程沖に出た。探索の魔法は使えるだろう。
「正面より少し右手ね。300メートルくらい先に20匹くらい居るわね」
ゆっくり近づいた。10メートルくらいのところで向こうも気付いたようだ。
20匹くらいが、ゆらゆらと浮かんでいる。
「さて、シロウ何とかしてくれ」
「はい」
シロウは赤の魔剣を右手で真っ直ぐに立て、左手でペンダントを握った。
ペンダントの周りに何か丸い物が現れたように見えた。林檎くらいの透明な何か。
あっという間に、その丸い物が大きくなった。シロウの体を飲み込んだと思うと、横に広がり、俺達を飲み込むや、直ぐにマーマンの群れも飲み込んだ。
水の浮力が消えたようで、俺達はさっと降下した。
どすんと足が付いたところを見ると海底のようだ。上を見ると3メートルくらいまで水がない。
俺達は高さ3メートル、幅15メートルくらいの円柱の空間に居た。その周りの青さを見るとそこからは海水があるんだろう。
「水の入って来ない結界を張りました。逆にマーマンが外に逃げることもできません。
水がないですが、空気もないのでマウスピースはそのまま咥えていてください。
剣は思う存分振れると思いますが、魔法は空気がないのでどうなるかわかりません」
なるほど、なんとかしてくれたようだ。
俺達は状況がわかったが、マーマン達はきょろきょろしている。結界に手を押し付けている者もいるが、水中にはいけないようだ。
「私は結界の維持に集中したいので、皆さんお願いします」
「では、行くです」
ノラが赤の魔剣を抜いて走り出した。俺達も続く。
戦闘は一方的だった。最初に1匹ずつ斬ったあたりで、ほかのマーマンも迎撃の体制をとったが、魔剣を振るうノラは次から次へと斬っていった。もちろんウーコンも片っ端から殴り倒している。俺とイザベラはそれぞれ3匹ずつ倒した。水がない場所で20匹くらいなら楽勝だな。
「とりあえず素材を取ろう」
みんなで手分けして魔石と素材を集める。マーマンの皮膚は防水性があり、高額で取引されるはずだ。素材はマジックバッグに手分けして入れた。
「じゃあ、結界を消していいですか」
シロウもそれほど簡単なわけではないだろう、額にうっすら汗が流れている。
ざばっという感じで海水があたりに満ちた。マウスピースがあるから大丈夫だが。
「これで引き上げるのか」
ウーコンの声が響く。
「イザベラ、広めに索敵して見てくれ」
イザベラが呪文を唱えるのも、低く響いてくる。
「1キロ四方には見当たらないわね」
「それじゃあ、戻るとするか」
俺達は帰りも海中の散歩を楽しんだ。




