海
ザラタンは上陸するとじっとしていた。
シロウに操られているんだろうが。暴れる様子は全くない。いいテイマーだよな。
「大きいですう」
「これでも子供なんだろうな」
「えええ、そうなの。ドラゴン並みの迫力なんだけど」
「いや、成体は100メートルに及ぶって言う話だ。小さい個体もあるだろうが、これは子供だろうな」
「今はシロウが押さえているんでしょうけど、性格は凶暴なのかしら」
「一般的なザラタンは温厚と言われているな。島と間違えて上陸して焚火をした奴が居た時には暴れたらしいが、普段、人を襲うことはないらしい」
「素材集めってことだったけど、こんない大人しいと倒すのはかわいそうになっちゃうわね」
「かわいそうです」
女性軍の同情を買ってしまったか。シロウに誘導させたのは失敗だったかな。
「俺も無抵抗な奴を殴り殺すのは気が引けるな」
うーむ。ウーコンも擁護派になっちまった。
「では、このままほっておきますか」
「でも、この亀、なにかふさぎ込んでないですか」
「シロウが押さえているから大人しいだけだろ」
「いえ、ノラの言う通りふさぎ込んでいますね。悲しいと言ってもいいような気持ちのようです」
そんなことまでわかるのか。ノラは獣人の感かもしれないが、シロウは千里眼だな。
「多分、海水を望んでいるのではないでしょうか。私はこちらの世界のモンスターはよくわかりませんが、海亀と言えばやはり海でしょう」
もう保護することは決定のようだな。ここで素材採取とはとても言えない雰囲気だ。
「じゃあ、俺が担いでいこうか」
まあ、ウーコンならできるのかな。20メートルはあるが。
「もし、海に放していいのなら私が送りましょう」
うーむ。やはり化け物揃いだな。
「リードいいでしょ。退治するのはかわいそうだから、海に返してあげましょうよ」
「ですです」
「ああ、いいんじゃないか」
とても駄目だとは言えない。海亀の素材は貴重なんだが・・・
「では皆さん近くに来てください」
全員でザラタンの近くに寄った。シロウが左手で魔道具のペンダントを掲げるようにした。
それほど時間をおかずに俺達は砂浜に居た。目の前には青い海原。もちろんザラタンが隣に居る。幸い近くに人影は見えず、騒ぎになることもなかった。
「わーー、これが海ですか。初めて見ました、広いですね。これなら亀さんが来たがるのも当然です」
ザラタンはどすどすと言った感じで歩を進めだした。かなりの勢いで進むので、砂が高く舞い上がる。
「キャッ」
俺達は慌てて脇へ身をかわす。
ザバーンといった勢いでザラタンは海に入っていった。
「うわっ」
波が荒れてこちらまで押し寄せたので、俺達の膝近くまで海水が押し寄せた。
「後で水魔法で洗わないと鎧が傷みそうだな」
「そうね、でも潮風は気持ちがいいわ」
確かに潮の香りが強く漂っている。
「亀さんも喜んでいるですか」
「そうですね。とても明るい波動がきますね。よほど嬉しいのでしょう」
まあ、めでたしめでたしだ。
「私の国には亀の恩返しと言う言い伝えがあります。海の底の竜宮の国に連れて行ってくれるそうです」
「竜宮なら俺はよく行ったぜ。この如意棒も竜王にもらって来たんだ」
本当にこいつには驚かされるな。流石のシロウも目を見開いている。
「亀さあん、恩返しするですよお」
うん。ノラは呑気だな。こいつが居るとほっとするよ。




