亀
翌日は久々にキントウン全員で冒険に出ることにした。皆でギルドに向かう。
「全員揃うと楽しいです」
ノラは無邪気にはしゃいでいる。
「私も魔道具の試運転なので楽しみです」
シロウも本当に楽しそうな顔をしている。
「ウーコンとシロウが揃っていればドラゴンでも狩れそうね」
「確かにそんな気がしないでもないが、今日は行かないぞ」
この二人がドラゴンを倒すことは実際できるように思うが、ドラゴンの攻撃力を受けるのは俺達一般冒険者も同じだ。今日はそんな準備はしていない。
「今日の獲物はなんだい」
依頼票を持ってきた俺にウーコンが聞いてきた。
「サーギの森の外れに大きい沼があるんだが、そこでザラタンという巨大な亀の目撃情報があるんだ。その調査依頼が出ていた。調査依頼だから謝礼はたいしたことないが、本物なら結構な素材だから、そっちで稼ごうって言うことだ」
「調査依頼で退治しちゃってもいいですか」
「ああ、退治するなとは書いてない」
以前ウーコンと調査依頼の獲物を殲滅したこともあるから大丈夫だろう。
「ザラタンって海亀のモンスターじゃなかったかしら」
「そうだな。何故淡水の濁った沼に居るのかは謎だな」
「誰か飼ってた人がいて、大きくなっちゃって捨ててしまったじゃないですか」
聞いた話ではザラタンの成獣はドラゴン以上の大きさで100メートルにも達すると言う。そんなモンスターを飼う人間が居るとも思えないが、幼体は普通の亀くらいという可能性もあるのかな。
俺達はギルドから出て、物陰からシロウの転移術で移動した。
瞬く間にサーギの森の沼の畔に出た。初めての所だが、位置をしっかり伝えれば随分正確に移動できる。本当に便利な術だぜ。ちなみに沼の名前はウートー沼と言うらしい。
ウートー沼はかなり大きい。周りは鬱蒼とした森に囲まれ、森に棲む生き物からしたらオアシスかもしれないが、透明度は全くない。向こう岸までは1キロくらい有りそうだ。
「イザベラ索敵して見てくれ」
「ちょっと待ってください」
イザベラが返事をする前にシロウがバッグからなにやら取り出した。
「ノラ、ちょっとこの鏡を持っていてもらえますか」
「はいです」
ノラは幅30センチくらいの鏡をみんなに見えるように持った。
シロウが軽く掌を前に出すと、鏡の表面が揺れるように変化した。
「これって・・・ザラタンかしら」
「えっ、どれですか」
ノラが持った鏡の上から覗き込むように鏡面を見た。それじゃあ、頭が邪魔だよ。
「ああ、凄いです」
鏡にはおそらく沼の中だろう、緑色に濁った水の中に、うっすらと亀のような姿が映っていた。
「大きさがわからないが、見た目は普通の亀と変わらないな」
「ああ、すみません。これは試しに30センチくらいの亀を映してみました」
うん。普通の亀と全く変わらないわけだ。
「こっちですね」
映像がゆらりと変化した。
「こっちが本物か」
やはり画面は緑色の水ではっきりとは見えないが、随分厚みのある、亀らしい物が映っている。四本の足をゆっくり動かして移動しているようだ。
「シロウ、大きさはわかるか」
「甲羅の長さで20メートルくらいですかね」
それから見積もると甲羅の厚みは5メートル以上はあるな。頭部もわりとでかい。
「さてどうするかな。沼から引きずり出す方法はあるかな」
「おまかせください」
シロウは右手で青の魔剣を抜いて垂直に構えた。左手ではペンダントを握り、なにか呪文を唱えだした。
暫くするとザザッと音がして沼の水が盛り上がった。
驚いて見ると巨大な亀が沼に浮かびこちらに向かって泳いできた。
モンスターはそのまま俺達から少し離れた岸にのそのそと上陸した。その固い甲羅で樹木を数本薙ぎ倒している。力はドラゴン並みかもしれない。




