魔道具
30匹ほど居たトロルは全て頭部を破壊されて地に伏している。
俺がやった奴は頭部が体にめり込んでいて、バレンティーナとジョナサンが倒した奴は首がちょん切れている。また、ジョナサンが素材回収を始めたので、俺も身外身の法で分身を出して手伝った。ヴァレンティーナは休憩だ。最初の頃の俺と一緒で、戦闘以外は人任せのようだ。
「トロルの皮は回復力が強いから、鎧とかの素材にいい値が付くらしい。丁寧にやってくれ」
うん。口だけは出すようだ。
俺達は筋斗雲で街に戻った。
「本当にキントウンっていうのは便利だな。それだけでもウーコンが仲間になってくれて助かったよ」
「はは、それはなによりだ」
素材や魔石はジョナサンがマジックバッグに入れて運んできた。ギルドでの換金は任せて、今日は解散だ。
「楽しかったぜ。俺はジェミニの戦い方が気に入った。これからもよろしく頼む」
「ああ、私達もいい刺激になった。ところで報酬の話はしていなかったが、3分割でいいかな」
「ああ、それで頼む。口座に入れておいてくれ」
俺もある程度の現金は持っているので、報酬はギルドの口座に入れておくことが多い。ジョナサンに口座を教えて頼んでおいた。
「すまないな。ジョナサンはたいした戦闘をしていないが、一応素材回収で頑張っているから、3分の1はくれてやってくれ」
「姉さん酷い言い方だな。俺も精いっぱいやっているんだけどな」
「俺は3分割で構わないぜ。ジョナサンはよくやってくれているよ。それに戦闘だってその気になれば俺達とそう変わらないくらいの力があるだろう」
「ありがとう」
ジョナサンは深く頭を下げた。
「姉さんは威張ってばかりだからな。ウーコンにそう言ってもらえると俺は今までの苦労が報われた気がするよ」
ジョナサンも意外と喋れるんだな。それに硬派な外見だが、繊細のようだ。ヴァレンティーナに威張られていたんだな。
「何を言っている。私がいつ威張った。私は姉として、リーダーとして当然のことを言っているだけだ」
腕を組んでふんぞり返っている。どうも自覚はないらしい。中々弟と言うのは辛いもののようだ。
俺達が稽古から戻ると丁度ウーコンも帰ってきた。ジェミニでの冒険は楽しかったようで上機嫌だ。まあ、ヴァレンティーナとなら加減無しで暴れても大丈夫だろうからな。
暫くするとシロウも帰ってきた。シロウはウーコンとは別の意味で表情を出さないが、こっちも楽しそうな雰囲気を醸し出している。
「ただいま戻りました」
「何か嬉しそうね」
「わかりますか。実は魔道具が完成したんです」
「この前言っていた魔道具が完成したですね。ワクワクです」
「ひょっとして、その首から下げているペンダントかしら」
それは俺も気付いていた。今のシロウは髪型以外はこちらの衣服を身に着けていて違和感がないが、今日は掌より大きいくらいのペンダントが目についた。
「イザベラの慧眼には感服します。これが私の作った魔道具です」
シロウはペンダントを持ち上げてみんなに見えやすいようにした。銀色の鎖の先に繋がっているペンダントは周りが濃い青色の枠で、中央は薄い青色のガラス状のものでできていた。その中央には親指くらいの大きさに黒っぽいものが埋め込まれていた。
「先日頂いたサイクロプスの眼球を大きめの加工した魔石に組み込んであるんですが、私の魔力を増幅する効果があります」
「ほお、そりゃあ凄そうだな」
ただでさえ、シロウの幻術は規格外だ。あれが増幅されれば天下無敵だな。
「こないだは青の魔剣で力が増したと言っていたが、それ以上か」
「そうなんです」
珍しくシロウが笑顔になった。
「魔剣の力では2倍程度でしたがこの魔道具は5倍くらいに増幅されます。多分双方の相性もよさそうですから、両方の力を合わせれば10倍以上になるでしょう」
増幅されなくても十分恐ろしいちからだと思っていたが、どれだけなんだ。
「こんなこともできます」
シロウが右手を正面に突き出すようにすると、その先にあるソファアがゆっくりと空中に浮かんだ。ふわふわと漂った後、元の場所に静かに戻る。
「えええ、凄い力ですです」
「自分以外のものを空中に浮かべる力は聞いたことが無いわね」
「ほかにもどんなことができるのか研究中ですが、楽しみでなりません」
本当に楽しそうな顔をしているが、俺はなにやら恐ろしいものを感じるよ。




