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剣闘士VS剣闘士

「後ろに控えている奴はなんだ」

それぞれの選手の後方にローブを着た男が控えている。

「ああ、あれは回復士だな。致命傷にならないようにヒールをかけたりするんだが、治癒魔法をかけた時点でその選手の負けだ。だからタイミングが難しいとも言えるな。

お互いに殺すつもりでやっているわけじゃないから、ある程度の打撃が入ればそこで終わることが多いんだが、それぞれの応援もあるし、興奮しちまうと訳がわからなくなっちまうことも有るからな」

「そうね、時々事故が有ったりするわよね」

「ああ、見ている奴らの中にはそれが目当てだったりするからな」

「なるほど。まあ、こういうところに出るんだからそういうのも覚悟の上だろうな」

ぐわーんという銅鑼の音と共に両者が間合いを詰めてきた。

「プレートアーマーが二丁斧のジェイコブ、メイスを持っているのが疾風のアダムだな」

「へえ、みんな二つ名がついているのか」

「まあ、人気商売だからな」

ジェイコブは兜の前面も降ろし、両手の斧を顔の高さに構え、じりじりと間合いを詰めている。

アダムはある程度の間合いまで近づくと軽快に足を動かしていた。左手のバックラーを前面に出し、メイスは体の後ろに隠すように構えている。

「どっちが仕掛けるかしら」

「アダムだろう」

「へえ、ウーコンよくわかるな」

「ジェイコブは先に動けば翻弄されちまう。まず、様子見だろうさ。ところで魔法は禁止とか聞いたが、空を飛ぶのは駄目か」

「いや、飛ぶのはオッケーだな。駄目なのは攻撃魔法だ。ファイアーとかライトニングなんかが禁止だ。ただ、剣闘士は元々魔法が得意じゃない奴が多い。得意な奴は冒険者になったり、剣闘士でも魔物相手にする奴が多いな。

ジェイコブは全く魔法は使わないが、アダムはどうかな。動きの速さを見ていると身体強化の魔法を使っているような気もするんだが」

「後ろの回復士が開始前にかけているかもしれないわね」

言っている間にアダムが動いた。左右にフェイントを掛けながら、ぐるっと体全体を右に回転させ、メイスでジェイコブの兜の右側に打ちかかった。

意表を突いたようだが、ジェイコブも予想していたのか、右手の戦斧でメイスを弾いた。

するとメイスを弾かれながらも、その勢いのままにアダムの右足がジェイコブの右足に内側から鞭のように打ち付けた。

ガシャンという重い音が響く。ジェイコブが全身鎧で足も固めているように、アダムも両足には鋼鉄のソルレットを付けている。重い一撃が入った。

ブンっと振った左の戦斧が来る前にアダムは既に距離を取っていた。

「早いな」

「ああ、引き足が早いだろ。あれは身体魔法をかけているんじゃないかな」

前に出てくるジェイコブにアダムも逆に間合いを詰め、素早くメイスを振った。上半身を襲うメイスを両手の戦斧で弾くが、アダムは手数が多い。戦斧で弾ききれない打撃が何発かはジェイコブの体に当たったが、もちろんプレートアーマーに守られている。

イラついたのか、ジェイコブが左の戦斧でメイスを弾いた直後に右の一撃を見舞った。

「おーっ、うまいなあ。俺にはああいう真似はできないな」

強烈な戦斧の一撃はバックラーで滑らせるように流され、たたらを踏むジェイコブの兜の目の部分、ベンテールにメイスが突き刺すように撃ち込まれた。

「ぐっごおお」

ジェイコブはのけ反るように後方に倒れた。

アダムはとどめをさせるように構えているが、ジェイコブの回復士が飛ぶように近づいてきた。

直ぐにポーションを目の部分に浴びせるように注ぎ、続けてハイヒールの強力回復魔法をかける。

「どうかな、眼球をやられていると、ポーションとハイヒールでも戻らないかもしれないな」

「いや、眼玉は多少ずれているな。目に損傷はあるだろうが、ある程度は回復するだろう」

「へえ、ウーコン見えたのか」

「ああ、俺は目はよく見えるんだ」

ジェイコブはプレートアーマーごと担架で運び出された。

アダムはメイスを頭の上で振り回して愛嬌を振りまいている。

「アダムもさっきのトリオンほどじゃないけど人気が有るわね」

「そうだな、多分アダムに金をかけた連中の声援だろうな」

2試合目が終わり、暫く休憩が入る。

「ウーコンちょっと付き合ってくれないか」

「ああ、構わないが」

ウーコンとイザベラはジェミニの二人について階段を降りて行った。


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