闘技場
その翌日、じゃあ、ウーコンに留守番してもらって冒険に行こうかと話しているところにシロウが帰ってきた。
「ただいま帰りました。朝帰りで失礼します」
眼が赤い。あまり寝ていないのかもしれない。
「シロウが帰ってきたなら、私がウーコンを街でも案内しようかしら」
「うん?」
「ウーコンも一人で家に居るのは退屈でしょう。と言って、街を冷やかすのは天下無敵のウーコンでもちょっと二の足を踏むんじゃないかしら」
「そうだな。俺一人じゃあ、どこへ行けばいいのか見当がつかないな」
「だから、私が街を案内するわよ。いいでしょう」
俺達はシロウにも説明し、結局、俺とシロウとノラで冒険に出かけることにした。イザベラがウーコンをエスコートして街をぶらつくようだ。
俺達3人はギルドに行って依頼を見たが、たいしたものは無かった。
「サーギの森はどうですか」
珍しくノラの提案だ。サーギの森は王都とラースターの中間を北に行ったところにある深い森だ。モンスターも多く居るので冒険者が討伐に出かけることはあるが、一般の旅人は南の街道を使うため、あまり開発されていない。近隣に村も少なく、補給地がないため、楽な場所だとは言えない。ただ、俺達は移動手段があるので困らない。
「いい案だな。あそこならモンスターにはことかかない。まあ、大物にでくわすかもしれないが」
シロウに場所を説明し、ギルドの外に出て、目立たない場所から転移した。
「ウーコンはどこに行きたい」
「いや、俺は街に出る時は誰かに連れてきてもらうだけだし、どんな店が有るのかも、まだよくわからない。全部イザベラに任せるよ」
「私だけなら洋品店に行くけど、ウーコンはおしゃれよりも戦いでしょ。闘技場に行ってみない」
「闘技場か面白そうだな」
闘技場は街はずれに常設されていた。ここでは毎日のように剣闘士同士、或いは剣闘士とモンスターが戦い、観客は入場料を払ってその戦いを見に来ていた。
剣闘士同士の戦いはその勝敗に金をかける公設の賭博も行われていて人気だが、出場する剣闘士がなるべく死なないように武器は木製の物に限られ、回復士やポーションも準備されていた。基本的に魔法攻撃は禁止である。
戦いの割合としては剣闘士対モンスターが多い。こちらは武器は全く自由で魔法を使おうが魔道具を使おうが自由である。こちらの回復は自腹であり、回復士或いはポーションを持った仲間を同行することが許されている。
闘技場はすり鉢状になっており、中央の競技場と柵を隔てて周りを囲むようにある観客席に分かれていた。
「へえ、結構でかい施設だな」
「そうね。今日は平日のわりに人が入っているようだわ」
二人が入場料を払って一般席に座ると、ちょうど一試合目が始まるところだった。拡声魔法で選手が紹介される。
「本日の第一試合目は期待のルーキー、トライデント槍のトリオンがモンスターマンティコアと戦います」
俺達はサーギの森の入口付近に転移した。
「一番近くの村はここから10キロ程南にあるはずだ。補給地としては距離が離れているので、一応食料や薬はマジックバッグに入れてきた。まあ、シロウが居れば補給地も何も関係ないかもしれないが」
そうなんだよな。シロウもウーコンとは毛色が違うが、まあ、化け物の部類だよな。こっちの方が正体がわからない分怖いかもしれない。
「ところで、シロウ。錬金術師の所に泊まり込んで、魔剣の研究でもしていたのか」
「そうですね。その研究も進めてきました。どこにどのような魔法陣が隠され、どの部分にどんな魔力が込められているかとか、多少わかった部分はありますが、もっと研究を進めれば、この剣のいろんな使い方が発見できるかもしれません」
斬る以外にも、魔術を放ったりできるのかな。
「それと、剣とは全く別の魔道具も研究が進みまして、実はそっちが主研究なんです」
「へえ、どんな魔道具なんですか」
「それはまだ内緒です。もう少ししたら本物をお見せできると思いますから、お待ちください」
「はい、待つです」
シロウが主研究と言う魔道具とは興味深いな。




