ライトニング
俺達は再び自由な形態の日常に戻った。
シロウは(魔剣を持って)錬金術に通い、イザベラとノラは交代でウーコンに同行して冒険へ。残った一人が俺と稽古だ。
今日はノラが稽古の日だった。ノラも既に舞空術、飛行術を身に着けており、今日は剣術と魔法の稽古を行った。ノラは狼狽癖が有るようで、戦闘において咄嗟の動きは得意ではない。しかし、元々短剣に魔力を流すことを多用していたように魔力の使い方は器用と言ってもよかった。回復系の魔法を中心に身に着けていたので村では聖女と呼ばれていたそうだが(眉唾ものだが)、最近は攻撃魔法も稽古して、ある程度使えるようになってきた。
「今日はライトニングの魔術をやってみよう」
「わかりましたです」
魔法或いは魔術は魔力をどう使うかだが、基本的に魔力は誰でも持っている。そして、大気の中にも魔力は満ちている。それを体内の魔力と区別するために魔素と呼ぶ者も居る。これはイザベラからの受け売りだが。
回復系の魔法の多くは対象(怪我人など)の体内の魔力に干渉し、術者の魔力で細胞を活性化させたり、大気の魔素で浄化をしたりするらしい。
一方で攻撃系の魔法の多くは自然の魔素に干渉し、自分の体内にある魔力を放出する。
全てがそうでもないだろうが、概ねそういった理屈でなりたっているようだ。
ライトニングは大気に含まれている電磁気に干渉し、術者の体内の魔力を雷のごとくに放出する。
というようなことを一応ノラに説明した。
まあ、ノラはいつものとおり首を捻っているが。
「なるほどです」
まあ、なんとなくでもなんとかなるんだよな。兎に角イメージだ。
「じゃあ、まずは自分の手の中で雷を作ってみよう」
「はいです」
バリバリっと音がして、掬うように揃えたノラの両掌に包まれた部分で魔素が光っている。
「いいな。それを増幅するようにイメージしよう」
集中しているので、口を開かずに、雷を大きくしていく。暫くすると両手で抱えるくらいの大きさになった。
「よし、そのくらいでいいだろう。あそこの木に、軽くでいいからぶつけてみよう」
バリバリっという音を発しながら、雷が立ち木に撃ち込まれた。ノラの腕程度の太さの木だったが、ごおんという音と共にライトニングが撃ち込まれ、ボキッとばかりに真ん中から倒れた。
「やったです」
「うん、いい感じだな」
ノラも着実に力を着けてはいる。
「リードなにか悩んでいるですか」
「うん?そんな顔をしていたか」
「そうですね、難しい顔をしていますです」
「まあ、たいしたことじゃないんだけどな」
「悩みは喋るといいですよ。私相手でもいいから口にしてみるといいです」
「はは、ありがとう」
ノラに説教されたか。
「どうしたんですか」
「うん。俺達キントウンのことだけどな。Sクラスになったウーコンを筆頭にここのギルドでもトップクラスだとは思うんだ」
「そうですね」
「だけど、ウーコンの実力が凄すぎて、まあ、俺達も成長はしているんだろうが、どうしてもウーコンに頼る部分が大きい。ウーコンがいてくれれば大抵のモンスターは倒してくれる。なんせドラゴンでさえ殴り倒しちまうんだからな。だから、だいたい冒険は順調に達成できる」
「そうですね。聖女の出番はなかなかないです」
「ああ、そういうことだ。普通のパーティーは時には危険な目にも合い、ギリギリで凌いで帰還することもある。でも、俺達はそんなことはない。いつも安全な冒険を続けている」
ノラの言う通り口に出すと、思考がまとまってくるようだ。
「確かに安全に冒険できるならそんないいことはないかもしれない。だけど、俺は何か違うものを感じてしまうんだ」
「なるほど。そう言えばそうですね」
ノラにも伝わったかな。
「じゃあ、たまにはウーコンにお留守場してもらったらどうですか」
俺は一瞬言葉を失った。そうだよな。たまにはそうすればいいんだ。一人で悩むことなんかなかった。ノラの言う通り、しゃべってみるもんだな。
ウーコンとイザベラが帰ってきてから、その話をしてみた。
「ああ、そうか俺が暴れすぎたか。そうだな、現地に行けば俺はどうしても暴れちまう。たまには留守番するか」
「すまないな。まるで邪魔にするようなことを言って」
「なあに気にするな。俺もたまには骨休めするとするよ」
「そうね。私達も少しは自立しないとね」
特に拒否されないようでよかった。ひょっとしたらウーコンが腹を立てるかと心配したが、杞憂だったようだ。
「そう言えば、シロウは今日も泊まりなのね」
「そうですね。テレフォンに手紙が送られてきたです」
「なにか集中した研究でもしているんだろうな」
シロウはあれから錬金術師の所に行って、魔剣の研究でもしているのか、3日程泊まり込んでいた。




