魔剣
俺達は昼間から夕方まで大騒ぎした後で家に帰った。
「はは、兎に角めでたいな。ウーコン、シロウ昇格おめでとう」
「ああ、ありがとう。よくわからんが、褒められるのはうれしいね」
ウーコン自体は冒険者がクラスを気にしていることにあまり興味がないようだ。
「ありがとうございます。しかし、私はウーコンと違ってエリザベス師匠の開発した魔油を使っただけです。本来ならエリザベス師匠を賞していただきたいところです」
とても殊勝な言い方だが、こいつは今一どこまで真に受ければいいかがよくわからない。ウーコンが分かりやすいのとは真逆だな。
魔油をエリザベスが作ったと言うのは事実だろう。しかし、シロウもかなり関わっているだろうし、ドラゴン退治に魔油を使ったということ自体がシロウの慧眼と言えるだろう。
「あの種子島を短くしたような魔道具も合わせて作ったのか」
「そうですね。元々の原型は師匠が作ってあったんですが、それをあの形に改良してもらいました」
「ねえ、そう言えば副賞に剣を貰ったでしょう。見せてくれない」
そうそう。二人は賞状と一緒に剣を副賞としてもらったんだ。
「これですね」
シロウが傍らから副賞の剣を取り出し、ギラリと鞘から抜き放った。
「おう、これは」
その刀身は青みがかっており、静かな湖面を想像させた。魔力が込めてあることは明らかで、ほんのりとオーラのようなものを纏わりつかせている。
「凄いわね」
全員が息を呑んでいる。
「ウーロンの剣も同じでしょうか」
「どうかな」
ウーロンが剣を取り出し、徐に刀身を鞘から抜いた。
「うっ」
こっちの剣は赤みがかっている。それにこっちのオーラは波動が凄い。一瞬太陽光を浴びたのかとのけ反りそうになった。
「これはウーコンらしいと言うか、凄い迫力ね」
静と動。それぞれの性質をまとった魔剣のようだ。
「こう言っちゃなんだが、こんな宝剣があるならドラゴン退治に使えばよかったのにな」
「全くですです」
俺達はひとしきり大笑いした。
「私はありがたく使わせていただきます。この国の剣にも慣れておきたいですからね。ただ、その前に師匠のところでよく調べてもらおうと思います」
シロウはスッと剣を鞘に納めた。
「この魔力のことか」
「そうですね。剣に魔力を注いで魔物を斬ることは学びましたが、この剣のように最初から魔力を付与するにはそういった技術が必要でしょう。錬金術師よりも鍛冶師の範疇かもしれませんが、錬金術の重要な分野の一つではないかと思います」
この男はウーコンのような根っからの戦士とは違って研究者のようだな。
「俺はこの剣はいいよ」
ウーコンがぽつりと言った。
「んっ。使わないってことか」
「そうだな。イザベラが言ってくれたように俺らしい剣ではあるのかもしれない。だけど、俺には長い間使ってきた如意棒がある。今更戦い方を変えようとは思わないな」
まあ、何百年と生きてきた奴の思考はそうなのかもしれない。
「リード。貰ってくれないか」
「えっ、俺にか。凄い宝剣だぞ、売ってもひと財産くらいだと思うぞ」
「はは、売るわけにはいかないだろう。それにこういったものは使わなけりゃ意味がない。リードならうまく使うんじゃないか。それに、こっちの世界に来てからずっと世話になっているからな。そのお礼だと思ってくれ」
いやいや、こっちが世話になっているような気もするし。こんな宝剣を貰っちまっていいのかな。
俺は少し考えたが、
「うん。ありがたく頂戴するよ。確かに使うことに意味があるだろうからな」
ウーコンの言う意味が少しわかる。根っからの戦士のウーコンは戦いのあるこの世界に合っているんだろう。オシショウサマはいい人だったが、その教えや生き方はウーコンには向いていなかったと思う。それと同じようにこの剣も戦いに使うことが本来なんだろう。




