ドラゴン討伐
ドラゴンの背中で、翼の付け根を中心に青い炎が燃え盛っている。
飛行隊全員が10メートル以上の距離を取っているが凄い熱気だ。ドラゴンは身を捩り、翼を動かしているが炎の勢いは衰えない。段々翼の損傷が広がってきた。
とうとうドラゴンは横倒しになり、岩山に翼をこすり付けるようにして炎を消しにかかった。
「ファイアーボールを撃てえっ」
アレックスの号令で、魔術師中心に打てる者はファイアーボールを撃ちこむ。
見ると、ドラゴンの背中から翼がほとんど失われていた。火傷の跡も酷いようだ。
ドラゴンは僅かに残った翼の残骸を羽ばたかせ、空中に浮かぼうとしたがバランスを崩して横倒しになった。ドラゴンは翼の浮力だけでなく、俺達の飛行術のように魔力で飛ぶと聞いたことが有るが、今まであった翼を失ったことで、俄かにはバランスが取れないのだろう。
ドラゴンは身を捩るようにしてどうにか立ち上がった。翼がないので、でかい蜥蜴状態である。その間も飛行隊はどんどん攻撃を続ける。ドラゴンの背中は火傷で損傷しており、斬撃が入るようになってきた。その背中は血で真っ赤に染まっている。ドラゴンの血も赤いんだな。
魔術隊もどんどんファイアーボールを撃ち込んでいる。時々後退してマナポーションで魔力を回復しているようだ。
ドラゴンが背後からの斬撃に気を取られている時に、正面から痛烈な一撃が入った。
ウーコンが大きく変化させたニョイボウで脳天を叩きつけたのだ。
ゴキっという音と共にドラゴンの脳天がへこんだのがわかった。
ドラゴンはふらっと傾き、そのままドゴーンと地響きを立てて横倒しに倒れた。
四肢に力を入れて起き上がろうとするが、虚しく地面を掻くだけだ。
倒れているドラゴンに再びウーコンがニョイボウの一撃をお見舞いする。
首のあたりをボゴンっと叩き、ドラゴンの首が変な角度になってしまった。
折れたな。
ドラゴンは体をピクピク痙攣させだして、暫くすると動けなくなった。
「やったぞー」
アレックスに続いて、みんなが雄たけびを上げる。
ドラゴンを討伐したんだ。
ドラゴンが完全に動かなくなったことを確認して、俺達は勝鬨を上げた。
その後は戦後処理だ。
まず、怪我人の収容。戦闘中からヒールやポーションで対応していたが、ブレスを受けた者を治療し、この場で対応できない者は病院に運び込まれた。後で聞いた話では再起できなかった者はいなかったようだ。
次に素材の回収。ドラゴンの素材はかなり貴重である。
むろん、戦った者たちは疲労の色も濃いため、転移陣でギルド職員たちが後続部隊として駆けつけ、その作業の中心になった。
俺達は順次ギルドに戻り、集まれる者は一度集会場に集まった。
「みんなご苦労」
ギルド長の拡声魔法が集会場に響き渡る。
「みんなの協力で強敵ドラゴンを倒すことができ、街の脅威を取り除くことができた。
ただし、みんな今日は疲労困憊だろう。一度体をゆっくり休めてもらって、明日、この場所で祝賀会をやりたい。今日は解散してくれ」
「みんな今日はお疲れ様」
俺達は家に帰り、風呂で体もさっぱりさせてから祝杯を挙げた。イザベラとノラも共同浴場で汗を流してきた。
「かんぱーい」
皆でグラスを合わせる。
「今日の立役者はウーコンとシロウだな」
「いえいえ、私は遅れて迷惑を掛けました。プラスマイナスゼロでしょう」
「あの油はなんだったんだ」
「エリザベス師匠が錬金術で作りあげた言わば魔油ですね。ドラゴンに効くほどの高温を発し、長時間燃え続ける効能があります」
「そうか、あれがドラゴン対策だったか」
「あれで、翼を奪ったのも大きいけど、背中の鱗を弱めてくれて剣が通るようになったわね」
「そうだな、最初は相当魔力を通した剣でもほとんど歯が立たなかった」
「シロウの油も凄かったですが、ウーコンの活躍も凄かったですです」
「ははは、あれくらいは朝飯前さ」
まあ、凄いと言うか何と言うか、人間業とは思えなかったな。
俺達は二人の活躍を肴に盛り上がり、夜は更けていった。




