転移
ドラゴンとの戦い方の注意を話していると、ギルド長が前に出てきた。
「今、先発隊から連絡が入った。転移陣が完成した。転移陣は念のため2ヶ所設置してある。最初に援護部隊を現地に送る。ギルドの職員だが、ポーションや軽食も用意したりする心算だ。
冒険者は10分後から移動を開始する。場所はギルド本部の3階だ。一つの転移陣でだいたい10名が移動できる。移動後は速やかに転移陣から降りてくれ。後からどんどん移動するから、気を付けてくれ」
具体的に転移の話になり、あたりはざわざわしてきた。装備を用意するためか、外に出て行く連中もいる。
「俺達はどうする。どんどんいくか」
「そうだな、特に変更する装備もないだろうし、早めに転移するか」
「すみませんが私は一度戻らせてください」
シロウが申し訳なさそうに言った。
「どうしたの。なにか忘れ物」
「エリザベス師匠の所に行って、借りてきたい魔道具があるんです」
「へえ、秘密兵器か。そりゃあ楽しみだな」
「じゃあ、行ってくれ。シロウは貴重な戦力だから、なるべく早く戻ってくれよ」
シロウを除いて俺達はギルドの3階まで階段を昇って行った。ほかの冒険者たちもぞろぞろ昇っていく。
横を見ると知った顔が居た。
「やあジョナサン。一人なんだな」
「うむ」
「そうか、バレンティーナは副リーダーだから、今回は別行動になるんだな」
「うむ」
この男は本当に無口だな。
前回も鎧を身に着けていたが、今回はそれより重厚なフル装備だ。ドラゴンと戦うために最高の防具にしたんだろうが、当然と言うか軽々と動いている。まあ、ガチャガチャと音は大きいが。
3階には職員が案内に立っていた。
「どちらの部屋に入っていただいても構いません」
俺達はまとまって手前の部屋に入った。
中を見ると直径5メートルくらいの魔法陣が床に描かれている。これが転移陣だな。
「10名ずつでお願いします」
俺達のほかにも数名が転移陣に入り、陣の外側に男性の職員が二人立っていた。
「いいですか。発動させますよ」
一人の掛け声で、二人とも屈みこみ、両手を転移陣に翳す。
二人が魔力を流しこむと、魔法陣がパアっと光りだし、周りがぼやけてきた。それほど時間がかからずに俺達はリーゴーチ山地に転移した。
言われた通り、早めに転移陣から横に移動する。
周りには先に来た冒険者のほかにギルドの職員が10名以上いた。
「冒険者カードをお願いします」
それぞれに職員が寄ってきて、端末にカードを翳させる。管理がしっかりしているな。
「腹ごしらえする人はこちらにどうぞ」
話の通り軽食も用意されている。
「到着した者は聞いてくれ」
見るとアレックスが拡声魔法を使っている。
「ここはわかると思うがリーゴーチ山地の少し奥だ。既に索敵の魔法で位置を探ったが、ここから大体5キロ登ったところにドラゴンが確認されている。眠っているのか、今は地上で休んでいる。できれば飛ばないうちに攻撃をしかけたいが、戦闘開始は概ね全員が揃ってから行うので、暫時休憩してくれ」
冒険者達が興奮しているのがわかる。
「ノラ。お前はここで待機してくれ」
「やっぱり近づかない方がいいですか」
「ああ、油断はできない。今回は後方支援に徹してくれ」
「わかりましたです」
あたりを見回すと、机にポーションが用意されている横に大きな魔道具があるのが目に入った。
職員の持つ端末を大きくしたようなもので、たしか動画を映す魔道具だな。
見ていると画面が明るくなった。
おおっとそこここで声が上がる。
画面にはドラゴンが映っていた。
「これが今のドラゴンの状態だ」
確かに地上に座り込んでいるな。目を瞑っているので眠っているのかもしれない。
これはドラゴンの近くで魔道具を持って映しているやつが居るわけだな。中々の勇気だな。
こちらで見ている冒険者達も緊張しているのがわかる。ドラゴンの姿が魔道具越しとは言え、これだけはっきりと見えれば無理もないな。
「今、集合している者は27名だ。到着が30名を超えたら出発して、ドラゴン近くまで移動するが、飛行魔法が使えない者は今出発してくれ。案内にギルド職員が1名同行する」
10名くらいが徒歩で出発した。Bクラスの戦士系が多いようだ。俺達は飛べるから待機する。
「ウーコンが飛ぶってのはキントウンで飛ぶってことだよな」
「ああ、そうだな」
「小さいキントウンを2個出せるか」
「ああ、可能だな」
「それに片足ずつ乗せて飛ぶってのはどうだ。普通にキントウンに乗って飛んでると目立ちすぎると思うんだよな」
「それもそうか。じゃあ、やってみるよ」
ウーコンは直径30センチくらいのキントウンを2個出して片足ずつ乗せてみる。少しだけ地面から浮いているがいい感じだな。
「こんなもんか」
「ああ、いいんじゃないか」
あまり奇異な魔術を見せない方がいいだろうからな。




