ドラゴン対策
「今紹介いただいたアレックスだ。リーダーをやらせてもらう。
既に領主にも王都にも連絡はいっていて、今後騎士団などの援助も見込まれるかもしれないが、ドラゴン相手だと時間が読めない。今にも街まで飛来してくる可能性がないわけじゃない。
そこで、当面は俺達がドラゴンを退治する前提で行動する。よろしく頼む」
おーっ、とかいう声がそこかしこで上がる。まあ、Sクラスはカリスマ性もあり、人気も高い。
「基本的には今いるメンバーで討伐に向かうが、質問や意見はあるか」
前の方に居る男が手を挙げた。
「現地までの移動はどうするんだ」
もっともな質問だな。
ギルド長のベンジャミンが半歩前に出た。
「今、偵察隊を兼ねた先発隊3名を山に向かわせている。テレフォンで随時情報を取っているが、そのうちの1名が転移の魔法陣を使える男だ。そいつに現地とギルドを転移陣で結ばせる。でかくはないので、ここの全員が一度に移動できるわけではないが、小集団ごと移動してもらう。行った先を前線基地として、そこからアレックスの指示に従って討伐してもらうつもりだ」
「万一のことも聞いておきたいが、退却するとなったら転移陣で戻ればいいのか」
「はんっ。戦う前から逃げる算段かよ。用心深いことだな」
一気に空気が冷え込んだ。
声の方を見ると、思った通りアーロンだ。また、薄ら笑いを浮かべてやがる。こいつは俺達のことが気に入らないだけじゃなく、誰にでもこうやって絡んでいくんだよな。
「なんだとっ。俺は戦略的なことを聞いているだけだ」
「はは、戦略的が聞いて呆れるぜ。怖いならとっとと帰るんだな」
質問者も確かパーティリーダーでAクラスのはずだ。メンバーも怒ったようで、騒然となってきた。
「なによ失礼しちゃうわね。参加するなら当然確認しておくことでしょ」
「笑っちゃうわ。アーロンの言う通り、早く帰れば」
てんでに勝手なことを言いだした。中には「もっとやれ」とけしかけている奴もいる。騒ぎが好きなのは冒険者の最大の欠点だな。
「てめえら静かにしやがれっ」
大音量の拡声魔法が集会場全体に響き渡った。
ギルド長かと思って前方を見ると違った。アレックスだ。凄まじい威圧を全体に撒き散らしている。集会場全体が水を打ったように静まり返った。
「俺達は急ごしらえのチームになるわけだ。全てがスムーズにいくわけはないが、無用なトラブルは避けてくれ。特にアーロン頼むぞ」
そこで、再び威圧を放つ。笑顔でこれだけの圧をかけるのは流石Sクラスだな。
「はいはい、わかりましたよ」
一方のアーロンは一応の返事はしたが、相変わらずヘラヘラしている。あの威圧を軽く受け流す辺りは、こいつもただものじゃないな。
続いてギルド長が口を開いた。
「一応、さっきの質問に答えておく。転移陣は設定しておけば、魔力さえ流せば誰でも使える。魔法陣を描くのは技術が必要だが、それを使うのは魔力さえあれば、あとはコツだけだ。ただし、魔力の無い奴は自力では動かせないからそこは頭に入れておいてくれ。以上だ」
今度はアレックスが半歩前に出た。
「転移陣が用意できれば順次現地に跳んでもらう。武器や防具の準備をし直す者もいるだろうから、暫くは適宜、必要に応じてここから出て行ってくれてもいい。ただし、時間が許す限りコミュニケーションは続けていきたい。さっき言ったように急ごしらえだが、少しでも連携が取れるように努力したい」
うん。このリーダーならついて行こうっていう気になるな。
「ちょっといいかあ」
アーロンが手を挙げた。
「今、連携って言ったが、俺は急ごしらえで簡単に連携が取れるとは思えねえ。互いに足を引っ張るような真似は論外だが、俺達「銀の暴風」は連携に自信がある。ほかの奴に入られて連携が崩されちゃあ堪らねえから、現地では勝手にやらせてもらうが、それでいいよな」
言っていることはおかしくはないな。アーロンが「足を引っ張る真似は論外」って言ったことには驚きだが。
「それでいいんじゃないか」
アレックスの横から、バレンティーナが口を挟んだ。
「正直言って私もみんなと連携できる気はしていない。一人で勝手に暴れさせてもらう心算だ。連携できる者は連携して、アーロンが言ったように、足を引っ張るようなことをしないように気を付けることだけ全員で気を付けていけばいいだろう」
「確かにバレンティーナと連携できる人間は少ないかもしれないな。今言ったように、功を焦って他人の邪魔をしたりしないようにだけはみんな気を付けてくれ」
そこで、一度全体を見回した。
「ところで、ドラゴンと戦った経験のある奴はどれだけ居る。手を挙げてみてくれ」
俺も一応手を挙げる。横を見るとウーコンも手を挙げている。ユーロンのことだろうが、少し違うような気がするな。
手を挙げたのは15人くらいか。Aクラス以上はだいたい経験があるってことかな。
「半分近くは経験があるようだな。ドラゴンを知らない者はいないだろうが、一応俺の経験から話をするから聞いてくれ」
この時点で集会場から外に出た者が数名居る。おそらく、武器や防具の準備に行ったんだな。
「まず、ドラゴンはでかいのは当たり前だが、体はとても固い。オーガなんかとは比べ物にならない。だから、剣で斬るには相当の打ち込みが必要だ。次に言うまでも無いが空を飛ぶ。だから、魔術師はいいが、戦士系は飛行術や舞空術が必要だ。空を飛べるものは手を挙げてくれ」
俺も手を挙げる。ウーコンも上げている。まあ、飛べることは飛べるな。飛行術じゃないけど。
シロウもイザベラも手を挙げている。
「飛べるものは空中で戦うわけだが、可能なら背後に回り、翼にダメージを与えたい。地に落とせば、こちらの勝機は上がると思う。戦士で飛べない者はドラゴンが地に降りてから斬りつけるわけだが、足もかなり頑丈だ、なかなか剣は通りにくい、細かい話だが、足の指の先を狙ってくれ。多少は固さが弱い。
それから少ないが魔術師もいるだろう。魔術師は正確性を心がけてくれ、ドラゴンも飛行している間は素早いし、飛んでいる味方を撃っても困る」
「当たり前だよ、そんな間抜けな魔術師はいないだろ」
「銀の暴風」女魔術師だ。アーロンと一緒で口も性格も悪い。
「そんな魔術師がいないことを期待している」
アレックスも苦笑している。
「最後にドラゴンで怖いのは炎のブレスだ。慣れれば吐くタイミングはわかると思うが、あれを浴びたら一発でやられちまう。基本的には正面には立たないことと、ブレスを撃たれそうになったら風魔法の盾を至急出してくれ。近くにいる者は重ね掛けしてくれ。ここは要注意だ」
そうだな。ブレスだけは絶対浴びるわけにはいかない。




