ドラゴン目撃情報
俺達は急ぎギルドに向かった。
「私も行った方がいいんでしょうか」
「ノラは自由だけど、みんなと団体行動の方が安心だろう。話を聞いて心配なら帰ったっていい」
「じゃあ、一応行くです」
ギルドには続々と兵が集まってきた。
ロビーでは入りきれないことを見越していたんだろう。冒険者たちは食堂兼酒場に誘導された。食堂兼酒場は臨時休業し、急ごしらえの集会場として、普段のテーブルやイスは全て片付けられていた。
俺達が放送を聞いてからもう30分くらい経っただろうか。集会場には40人近い冒険者が集まっていた。
「みんな、集まってくれてご苦労。俺はギルド長のベンジャミンだ」
入口から反対側に一団高い舞台のようなものが設けてあり、そこに3人の男が立っており、真ん中の男が拡声魔法で話を始めた。3人とも40は過ぎているだろうが、屈強な冒険者の雰囲気を出している。おそらく元々は優秀な冒険者だった者が引退してギルドの幹部になったんだろうな。
「緊急のモンスター対策とだけ話したが、これから詳細を説明する。なお、今集まってくれている者のレベルなどを確認したいので、冒険者カードを出してくれ。職員が端末を持ってチェックをしていく」
10人くらいの男女の職員が手に平たい道具を持って回り始めた。あれが端末か。多分魔道具だな。
「説明を始めるので、カードのチェックは聞きながらやってくれ。それから、遅れてくる者もいるだろうから、その連中に説明してくれてもいいが、俺の話を聞き落とさないように頼む」
中々ややこしい指示だな。
「では、説明を始める。今回はドラゴンだ。リーゴーチ山地の北約10キロの地点で飛行するドラゴンが目撃された」
その言葉を聞いた瞬間、全体がざわついた。大声を上げる奴はいないが、流石にドラゴンと聞いて、ほとんどの冒険者が驚きの声を上げたようだ。
ドラゴンと言えば史上最強の生物と言われている。種類にもよるが、成体なら最低でも体高20メートル。ヒュドラやグリフォンよりも大きいわけだが、大きいと言うだけではなく、体の固さや、牙、爪の鋭さなど、生物としての強さや生命力などがほかのモンスターより一段と上に見られている。
俺はここのギルドとは別の地域で一度だけドラゴン狩りに参加したことが有るが、中々恐ろしいものだった。その時はSクラス3名Aクラス15名Bクラス8名のメンバーで俺はBクラスになりたて。Sクラス中心に戦って倒したわけだが、ブレスを吐かれてその一撃でBクラスの4人が死んだ。爪でやられて引退に追い込まれたのがやはりBクラスで3人。Bクラスで無事だったのは俺だけだったってことだ。
個体にもよるんだろうが、ドラゴン相手にBクラスは正直荷が重いだろう。今回、Cクラス以下にも声をかけているが、まともに参加するのは無謀だろうな。まあ、後方支援ということだろうか。
「驚いたと思うが話を続ける。目撃したのはリーゴーチ山地を狩場としている猟師2人。2人なので、目撃自体は事実だと考えられるが、そいつらも動揺しているようなので、情報としては不確かな部分もあるからそこも承知しておいてくれ。大きさは約30メートル。体はグリーン。通常のドレイクと思われる。
目撃されたのは昨日の午前9時頃。目撃後谷付近に下降したと思われる。目撃情報としては以上だ」
そこでギルド長は一息おいた。あたりは、やはりざわざわしている。遅れてきた者もいるようで、それもざわつく理由のようだ。
ギルド長は職員から一つの端末を受け取り、
「現時点で集まってくれている冒険者の数を伝えておく。
Sクラス2名、Aクラス13名、Bクラス23名、Cクラス1名」
Cクラスはノラだけのようだ。
「相手はドラゴンだ。リスクは高い。参加は強制ではないが、できれば一人でも多くの参加をお願いしたい。ここまでで何か質問とか意見のあるものはいるか」
まず、俺が手を挙げた。
「最近Aクラスに上がったリードです。今言ったCクラス1名はうちのメンバーです。俺はBクラスの時にドラゴン狩りに参加したことが有るが、Bクラスの奴が何人も死んだり、大怪我を負った。Cクラスではリスクが高すぎると思うが、戦闘場所から100メートルは離れた場所での後方支援くらいにさせてもらえないか」
「うむ。概ね了解だが、そういったことも含めてこれから早急に詰めていきたい。
Sクラスの二人前に出てきてくれ」
Sクラスはオーラが凄い。人を掻き分けなくても、人垣が割れるように通路が開いていく。
2人のSクラスが壇上に立った。
「紹介するまでもなく知っているだろうが、Sクラスのアレックスとバレンティーナだ。このギルドには後一人Sクラスがいるが、残念なことに今王都に行っていて不在だ。そこで、これからのリーダーはアレックスに任せて、私達ギルドは後方支援のスタンスで行きたいと思う。バレンティーナには副リーダーをお願いしたい。二人ともよろしく頼む」
おそらく、事前に話はしてあったんだろうな。アレックスの方が確か年上で30歳を超えたくらい。バレンティーナは30手前のはずだから、正リーダー副リーダーの役も妥当だろうし、このアレックスと言う人はかなり常識人だと聞いている。バレンティーナのような戦闘狂は現地では兎も角、こういった集まりで話をまとめるタイプではないだろうから適材適所と言った感じかな。




