非常放送
俺達はヒュドラとキメラの素材を持ってギルドに帰還した。
「素材の買取を頼む」
量が多いので、俺一人で裏の解体場までマジックバッグに入れたまま運び、そこで素材を出した。
「えーと、念のため聞きますが、ヒュドラとキメラですか」
「ああ、そうだ。ヒュドラの毒液もちゃんと持ってきたから勉強してくれよ」
「いえ、素材の良し悪しはこっちで見ますが、査定額は総務の方ですからね。それにしても、これだけのモンスターを一日で狩ってきたんですか」
「ああ、そうだ。うちのパーティには化け物が二人いてね。ヒュドラ十頭くらいは軽いって豪語してたよ」
「リードさんこそ、その若さでAクラスなんて十分化け物でしょうに、まだ凄い人が居るんですか」
「まあ、世の中上には上が居るって言うやつだな」
解体場に素材を置いて受付に戻った。
「キントウンの皆さんはレベルの高いモンスターを複数狩ってこられたので、昇格の審査を行いますが、ご希望とかありますか」
「そうだな、ウーコンとシロウの審査をお願いしたい。俺はたいした活躍じゃなかったし、イザベラとサラは実力的にまだ様子をみたい。上位者に同行しただけで昇格なんて陰口を叩かれたくないしな」
「へえ、わかってるようなことを言うじゃねえか」
横手から声がかかった。振り向くと銀の暴風のアーロンだ。噂をすると影が差すって言うが、婉曲に言っただけで出てきちまった。
「俺はわかることしか言わねえよ」
「ふん。減らず口は達者だな。また、大物を狩ってきたんだってな。大したもんだ」
薄ら笑いを浮かべながら言う。
「何が言いたいんだ。今日はジェミニもいないから俺達が狩ってきたのはわかるだろう。
「はは、そんなのは何とでもなるだろうよ」
「アーロンさん、言いがかりは止めてください。ギルドがしっかり行った査定です。不満があるなら、ギルドに申し立ててください」
受付のソフィアが毅然とした態度で間に入ってくれた。うん。この子も成長したんだな。
「いや、不満なんてないさ。大したもんだと思ってね」
アーロンは薄ら笑いのまま酒場に向かっていった。
「全く失礼しちゃうわね」
「ですです。やっぱりウーコンに懲らしめてもらわないと駄目ですかね」
うーん。それは却下だな。
昇格の方はウーコンがAクラスに、シロウがBクラスに無事承認された。
まあ、この二人はSクラスで全然おかしくないからな。
俺達は全員での冒険を終え、再び先週のように自由な形態で行動した。
シロウは錬金術の修行。ウーコンがイザベラとノラを交代で冒険に同行し、俺は残った方の稽古だ。
再び週末が近づき、また全員での冒険に出かける予定だが、俺は少し悩みを持った。
それはウーコンとシロウの実力がどうも突出しすぎているらしいと言うことだ。確かにこの二人はSクラス並みの実力者だ。俺より上だと言うことは認めよう。
問題はこの二人に頼り切ったような冒険になっていく傾向のことだ。前回の時はウーコンはヒュドラを一人で倒し、ついでのようにキメラも退治してきた。
この調子だと、俺は兎も角イザベラとノラの出番は全くないままになりかねない。ノラは回復役として同行しているわけだが、怪我をする人間はでそうにない。そりゃあ安全に冒険が出来ればそんないいことはないが、ただの見学者を続けるのでは成長はしないんじゃないだろうか。
まあ、一回行っただけだから、暫く様子は見たいが。
俺達は全員揃ってギルドに向かったが、急に全員のテレフォンがピッと鳴った。それと同時にウーーっというサイレンの後に非常用と思われる放送が流れた。
これはギルドが拡声魔法を町全体に流しているようだ。男の太い声が聞こえた。
「冒険者ギルドから、ギルド会員の冒険者に伝える。緊急の招集をかける。Bクラス以上の冒険者は至急ギルドに集まってくれ。緊急のモンスター対策のための集合だ。それなりのリスクはあるが、Cクラス以下でも勇気を持って参加したい者は協力を頼む」
非常放送は繰り返し冒険者に呼びかけた。緊急のモンスター対策か。数年前のスタンピード以来だな。




