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ヒュドラ討伐

週明けに俺達は全員でギルドに向かった。休養も十分取り、ヒュドラ対策の打ち合わせも行った。


受付窓口にはサラが居た。いつもながらニコニコしている。

「おはようございます。みなさんお揃いですね。依頼をお探しですか」

「いや、今日はダンジョンに潜ろうと思うので、その届だけ頼む」

「了解です。こちらの書類に記入をお願いします」

俺は必要事項を記入し、全員でギルドの外に出た。

「じゃあ、シロウ頼む。場所は大丈夫だな」

「ええ、昨日確認しましたので」

俺達は物陰に隠れ、全員で手を繋いで転移術で移動した。場所がわかっているので、カーバーラダンジョンの最下層と言われている9層に直接の移動だ。

短い時間で何度か見た9層の景色の元に来ることができた。

「本当に便利な術ね」

「ああ、まったくだ、これだけで飯が食えそうだな」

「このパーティを馘になったらそれも考えてみましょう」

周りを見回すが、とりあえず危険はなさそうだ。いきなりモンスターと鉢合わせする可能性もないじゃなかったので警戒はしていたが、みんなが冗談を言う余裕ができてよかった。必要なだけの力を抜くことは大事だからな。

「ヒュドラはこの付近に出没するわけですね」

「ああ、そう言われている。俺の感覚だと、もう少し奥のような気がするが」

俺はけもの道が続いている森の先を示す。

「イザベラ探査を頼む」

「ええ」

イザベラが索敵の魔法でヒュドラを探す。

「居るわね。この先50メートルくらい先よ。1匹だけのようだから、肩慣らしにいいかもね」

「そうだな、ほかの奴らが集まったりする前にまず1頭片付けるか」

俺達は標的に向かって前進した。先頭に俺とウーコン、真ん中にノラ、後衛をシロウとイザベラが固めた。ヒュドラ以外にも物騒な奴が出てこないとも限らないので、聖女の安全を第一に考える。

「この茂みの向こうに開けたところが有るわ、そこに1頭」

「じゃあ、イザベラとノラが最後尾で、ヒュドラの姿が見えたら直ぐに風魔法を展開してくれ。残り三人でヒュドラを囲むように攻める。いいな」

「おお、任せろ」

「了解しました」


「いくぞ」

俺の掛け声で三人で茂みを超える。少し後ろをイザベラとノラが慎重についてくる。

直ぐにヒュドラの巨体が目に入った。胴体の体高が4メートルくらい。標準的な大きさだ。

ヒュドラが臨戦態勢に入る前に俺達は一斉に襲い掛かった。

俺は一発ライトニングの強烈な奴をお見舞いし、相手が動けないうちに首を一つ斬り落とした。

首は高い位置にあるので飛行術で飛びあがっている。

「よし、一丁上がりだ」

返す剣で次の頭を真っ向から竹割りにした。

ここで一呼吸して少し下がった。

別の頭がこちらを向いて口を開けた。

「シャアアアッ」

多分毒を吐こうというんだろう。寸前で、俺はウインドカッターを喰らわす。風魔法が間に合い、口から毒を吐かれる前に3本目の首が胴体から離れた。

ほとんど同時にヒュドラの胴体がガクッと地に落ちた。見ると首は9本ともべたっと横になっている。

「やったか」

「早いわね。びっくりよ」

「ですです」

イザベラとノラも風魔法の盾を解除して近づいてきた。

「毒を吐く前に倒せて重畳でした」

「3人とも余裕ね」

俺は兎も角、ウーコンとシロウは確かに余裕のようだ、汗一つかいていない。

「この調子なら10頭くらいはいけるかな」

うーん。ウーコンには楽な作業だったようだ。俺も頭を三つ潰したが、それなりに緊張したんだが。

「そうですね。1頭づつでいいならいくらでも狩れるでしょう」

うーん。化け物二人だな。剣術なら俺の方がシロウより上だと思っていたが、怪しいかもしれない。

「リードが最初に稲妻を撃ってくれたのが大きいですね。あれで、どの首も動きが止まりましたから」

「まあ、とりあえずは魔石と素材採取だ。ヒュドラの皮は丈夫で高く売れるし、牙も武器の素材になる。そうだ、牙の後ろに毒の袋があるはずだが、気を付けてくれ。毒自体は錬金術のいい材料になると聞くが、毒に直接触ると皮膚がただれるからな」

毒の袋はそれごと切り取り、安全のため用意の皮袋に入れて保存する。


素材採取を追えて、少し前進した。

「今度は2頭居るわね」

「1頭ずつは無理か」

「そうね。ほとんど同じ場所に居るから、同時にやるしかないわね」

「じゃあ、ウーコン1頭頼めるか。俺とシロウでもう1頭をやろう」

「おお、任せとけ」

「リード、また稲妻をお願いします」

「うん。イザベラとノラは防御を怠るなよ」

「わかったわ」

「ですです」

俺は再びライトニングを叩きつけた。ヒュドラが怯んだところへ直ぐに斬りかかる。

俺も今日2回目なので、少し全体を見る余裕がでてきたので、二つ目の首を斬る時に、シロウの方の様子が目に入った。シロウも既に一つ首を落とし、二つ目の首だが、なにか不思議なものを見ている気がした。シロウの剣速はそれほどとは思えないのだが、それに対するヒュドラの動きが鈍い。鈍いと言うか動いていない。まるで据物切りのように動かない相手を易々斬っているように見える。俺は一呼吸で首を二つ落とし、一旦地に降りて、一呼吸おいて飛行し、二つの首を続けざまに斬った。

俺が地に降りるのと、ヒュドラが倒れるのがほとんど同時だった。

短時間で、俺で言えば二呼吸で倒したわけだが、集中力が半端ない。俺は大きく肩を上下させて空気を貪った。それに引き換え、シロウは全く息を乱した様子がない。しかも首は五つ落としている。

「・・・シロウ。いったいどうやって斬っているんだ」

「えっ、刀を振り下ろして斬っていますが」

「いや、まるで止まっている相手を斬っているように見えるんだが」

「ああ、幻術でヒュドラの意識を止めているので、頭も止まっていますね。とても斬りやすいですよ」

そりゃあ斬りやすいだろうな。止まっているんだから。

「んっ、ウーコンは」

振り向くと、1頭のヒュドラが頭を全て叩きつぶされて地に伏しているが、ウーコンの姿が見えない。

少しすると、なにやら引きずってきた。

ヒュドラ並みに大きいモンスター。ライオンの背中から山羊の頭が生え、尻尾は蛇。間違いなくキメラだな。この辺はキメラも棲息しているとは聞いていたが。

「悪い悪い、待たせたか。こいつが、背後から襲ってきてな、殴ったら逃げようとしたので、そこまで追いかけたら遅くなっちまった」

一人でヒュドラを叩きつぶし、ついでのようにキメラ退治か。キメラも慌てて逃げようとしたが捕まったか。相手が悪かったな。こんな真似はSクラスでもできないんじゃないか。


俺達はヒュドラ2頭とキメラ1頭の素材を採取した。

大漁だ。


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