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冒険者ギルドあるある

「ここが冒険者ギルドか」

ウーコンがギルドの建物を見上げて言った。まあ、それほど大きい建物というわけではないが、3階建てでそれなりの大きさは有る。一階がギルドの受付と、それに並んで食堂兼酒場。裏手には魔物の解体場などがある。二階が事務室で三階はギルドマスター室や客間が有るらしい。俺は入ったことはないが。

入口のドアを開けてギルドに足を踏み入れる。久しぶりだ。僅かに喧騒が聞こえてくる。まだ日が高いが、隣接する酒場で騒いでいる連中が居るんだろう。ここのギルドの受付は三つあるが、今は客も少ないので窓口は一つしか開いていない。ギルドは午前中に依頼を探す時と、夕方の依頼の報告が混む時間なので、この時間は閑散としている。

俺が見慣れた受付嬢の所に向かおうとした時に酒場との境のドアがバンッという音と共に開いた。

ひょいっとそちらを見ると2メートル近い大男が赤い顔で入ってきた。

「うん。猿が居るのかあ」

酔眼を細めるようにしてウーコンを見て寄ってきた。

「おいおい、いつからここは動物園になったんだあ」

酔っ払いだけに声がでかい。まあ、ギルドあるあるだな。

ウーコンもそちらを眺めるが、呆れているんだろうな。

「おいっ。俺様の声が聞こえないのか」

誰に言っているのかもよくわからないが、ウーコンか俺に絡もおってことは確かなようだ。

体がでかいからまあまあの力があるのかもしれないが、俺は見たことがない。俺が数ヶ月留守にした間にこの街にやってきたんだろうか。まあ、見ただけである程度の力はわかるが、いくら力自慢でもウーコンや俺の相手じゃあないな。


ギルド登録は基本AからGまでクラスが有り、その上に特別にSクラスが有る。一番下がGクラス。薬草採取のような簡単な依頼をこなして実績を重ねクラスをあげる。GからFには誰でもなれる。依頼達成が可能なことがわかればFになれる。そしてFからがモンスター討伐の依頼だが、FからEも誰でも上がれる。当然最初はスライムやゴブリンのような弱いモンスターが相手だが、モンスターを倒せれば誰でもEクラスになれる。結局、全く冒険者に適性の無い者や女子供でなければEクラスになれるのだ。

だから、FクラスやGクラスの人数は少ない。この二クラスは冒険者を続けられるかどうかの篩のようなものなので、長くFクラスなんて人間は普通はいないのだ。

しかし、Eクラスから上はそれなりの人数が居る。それでも少し気の利いた奴、まあ、多少腕に自慢のある人間ならDクラスまでは上がれる。だからDクラスになって冒険者は一応一人前に見られる感じである。

まあ、こいつが腕力はあったにしてもDクラスかぎりぎりCクラスってところだろう。

ちなみに俺はBクラス。俺の年齢でBクラスはほとんどおらず、一応俺は凄腕冒険者と呼ばれている。それも実績を積んでもうじきAクラスになるだろうと言われているので、自分で凄腕冒険者だと言っているのである。


「おいっ、無視してんじゃねえ」

男はウーコンに近づいていって掴みかかろうとする。猿だと思ってるなら、聞こえないのかとか無視するなとかおかしいとは思わないのか。まあ、酔っ払いだから仕方ないか。

俺はさっと手を伸ばし、男の手首を掴む。

「何しやがるっ」

振りほどこうと腕に力を入れるが、勿論ピクリとも動かない。

「何しやがるはこっちの科白だぜ。俺の仲間に汚ねえ手で何しやがる」

「てめえの仲間だと。猿が仲間なのかよ」

「こいつは猿人だ。猿だって言うんなら、無視してんのかって科白は寝ぼけてでもいるのか」

「うるせえっ。俺に意見してんじゃねえ。とっととこの手を放しやがれ」

「ふん。自分で振りほどいたらどうだ」

男は「うんっ」と全身に力を入れるが全く動かない。俺は少し握る力を強める。男の顔が赤から青に変わっていった。

「ま、待て。ちょっと待て」

俺はそのまま男の腕を背中まで捻じり上げる。

「ぐあっ。おおお」

とりあえず、折れる寸前まで捻って止めておく。男は唸るばかりで声も出せない。

「じゃあ、俺の仲間に絡んだことを謝ってもらおうか」

腕を捻じる力を少し加減して男が喋れる程度にしておく。

「な、何を言いやがる。俺様がなんで猿に謝らなけりゃ・・うっ、ま、まって・・」

俺は腕を捻じる力を緩めたり強くしたりしてコントロールした。

「どうしたんだ、謝らないのか」

「あ、ああ、悪かった」

「すみませんだろ」

「な、何を・・あ、ああ・・すみません」

俺は手を放し、男を突き倒すようにした。

どんと尻餅をつき、酔いがさめたような顔でこちらを見上げている。俺は男の胸倉を掴んで片手で、そのまま持ち上げる。男は尻餅をついた格好からそのまま上に上がり、足を突こうとしたがつま先立ちくらいまで持ち上げる。多分150キロ以上あるだろうが、俺には軽々だ。

「お前、名前は」

「ジャ、ジャックだ」

「これに懲りたら、俺達に近寄るなよ」

「あ、ああ、わかった」

俺はぐっと胸元を捻じり上げる。びりりっとジャックのシャツが悲鳴を上げる。

「わかりましただろ」

「わ、わかりました」

俺はそのまま放るように突き放す。どさんという音の後にごんっという音が響いた。背中から落ちたジャックはそのまま床に後頭部をぶち当てていた。

俺達はジャックをほっておいて受付嬢の窓口に向かった。


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