舞空術
俺達はそれから一週間くらい依頼をこなした。
ビッグスパイダー、トロール、ワイトなどを狩った。
互いの実力をそれなりに推し量ることができ、ある程度の連携のようなものもできてきた。まあ、実際はほとんどがソロでもいける器用貧乏タイプであり、一人何役もこなせるメンバーなので、割とみんなで殴るというのが基本戦術ではあるが。
「今日も大漁でしたです」
「こういう時は、やっぱりリードのマジックバッグがものを言うわね」
今日はワイバーンを狩った。俺とウーコンで空中から叩き落し、みんなで袋叩きだ。ワイバーンの被膜はレアなので素材として高額のはずだ。
そしてシロウもラースターの地形に慣れてきたようで、転移も素早くできるようになってきた。パーティキントウンは軌道に乗ったと言っていいだろう。
「これからは少し自由度を持った形態でもいいと思うんだが」
「自由な形態ってどういうことかしら」
「ああ、いつも5人全員じゃなくて2~3人で依頼を受けるとかっていう意味だ」
「じゃあ、残りの2~3人は何をするですか」
「剣や魔法の稽古とかだな。例えばイザベラなんかは飛行術を覚えると便利だろう」
「ええ、それは素晴らしいわね。でも、できるかしら」
「イザベラはエルフとして魔力自体はかなり多いから、コツさえわかればできるだろう」
「飛行術には私も興味がありますね」
シロウは異世界出身だが、魔力は多いのかな。
魔法は大きく分けて攻撃魔法、回復魔法、補助魔法、その他の魔法に分けられる。補助魔法は身体強化などのバフ系や敵にかけるデバフ系などだな。舞空術など飛行魔法はその他の魔法に分類されている。
俺はイザベラと違って魔法学校に行ったわけではないので公式な理論は知らないが、ある程度自己流で解釈している。
魔力は人間の体内と大気中にあり、それを変化させ、属性をつけて具現化する。攻撃魔法は体内の魔力をそれぞれの属性を付けて撃ちだすものが多く、回復魔法は自然界に存在する魔力を具現化して対象に施す場合が多い。人によっては大気中の魔力を魔素と呼んだりもするようだ。
魔法は人によって魔術とも呼び、その区分けは明確ではない。その種類や力量で呼び分けているんだと思う。シロウの使う幻術も基本は魔力をどう使うかだと思う。ウーコンの分身の術なんかは相当異質だが、元を辿れば魔力によるものだろう。
ウーコンはその特異体質もあるし、魔力量も相当だと思うが、シロウは謎だな。
「じゃあ、明日はイザベラとシロウが飛行術の訓練。ウーコンとノラで適当な依頼をこなしてきてくれるか」
「私も飛行術は習いたいですが、とりあえずはウーコンとカップルで冒険に行ってきます」
「二人で大丈夫かしら」
「ああ、俺に任せとけ」
「モンスター退治はあまり心配してないけど、ギルドの手続きとか、変なのに絡まれないかとか、そっちの方が心配なのよ。ノラ頼むわよ」
「任せてくださいです」
「変なのは俺が黙らせるから大丈夫だ」
「まあ、そこでやりすぎないようにってことも含めてノラ頼んだぞ」
「はいです」
「俺もギルドに慣れてきたから、殺しちまうことはないよ。
多分」
まあ、その多分が心配だな。
「明日はそれでお願いしますが、私は先日少し言ったように、また錬金術の店に行かせてください」
「ああ、習いたいって言っていたな」
「ええ、こちらの世界の技術に興味があります。習うことができるなら身に着けたいですね」
そういうことも含め、今後はそれぞれが自由なやり方でいくことにした。
翌日、俺はイザベラとシロウを連れて近くの空き地に行った。そう広くはないが、ファイアーをぶっ放すわけじゃないいから大丈夫だろう。
「じゃあ、最初は舞空術からだ。まず、体を空中に浮かすだけだな」
「それが基本なのね」
「ああ、そうだ。やっぱり魔力を練るところからだが、シロウはできそうか」
「やってみましょう」
二人は体内の魔力に集中し、魔力を体内で回すような作業に集中した。
「魔力が練れてきたら、それを足の裏にゆっくり溜めるようにしてみてくれ」
「うん、できそうね」
「足の裏に溜まったら、今度は魔力をゆっくり足の裏から下に放出する。ここはゆっくりやるのがコツだ。慌てると怪我するから気を付けてくれ」
二人が集中する。
二人ともわずかだが、地から足が離れたようだ。最初はかなりの集中力がいるだろうから、二人とも黙り込んでいるな。
「できたっ」
イザベラが行った瞬間。
「きゃっ」
イザベラが50センチくらい体を浮かべ、その勢いで後ろにひっくり返った。
「大丈夫か」
俺も慌てて駆け寄った。
「あたたたた」
俺が手を差し伸べると腰をさすって起き上がった。ヒールの必要はなさそうだ。
「中々難しいわね」
「最初はそんなもんだろう。とにかく集中することだ、今は喜んだのが集中を切らしたな」
ふと横を見ると、シロウが地上1メートル程に浮かんでいた。
あまり表情を出さない奴だが、その唇には僅かながら微笑が浮かんでいた。




