オーク討伐
俺達はギルドの建物に入った。
とりあえず、めぼしい依頼が無いか探すんだが、ウーコンとシロウは字が読めないので、ロビーの椅子に座って待っている。二人ともまだギルドに慣れていないので、きょろきょろと辺りを見回している。
俺はイザベラとノラと3人で依頼の張り紙を物色していった。
「なにかおいしい依頼は無いかしらね」
「まあ、何でもいいって言えばいいんだけどな。シロウの力を見たいって程度だから。それにキツイ依頼を選んじまってもウーコンが何とかしてくれるだろうしな」
「それはそうですけど、シロウの力を見る適正の依頼が有ればいちばんいいですね」
「そうだな。
うん、これとこれにしようぜ」
俺達は二つの依頼の紙を持って窓口に行った。
今日の受付はサラだ。
「おはようございます。リードさん両手に花ですね。今日は依頼ですか」
「ああ、そうだ。無駄口を叩いていないで受付をしてくれ」
「はいはい。おや、依頼も二つですか。欲張りさんですね」
「まあな。あそこに座っている二人の実力なら軽すぎるかもしれないが」
「ああ、実力者のお猿さんと新しいイケメンですね。ちょっと変わった髪型ですが」
うん。シロウは日ノ本のチョンマゲという髪型のままなので、ここでは少し異質に見えるな。
「何度も言うが猿人だ。シロウも異国から来たばかりなので、変わったヘアースタイルなんだ」
俺達は依頼の手続きを終えて、ウーコン達の元に移動した。
机の周りに椅子が配置してあるのでそこに座り、依頼書と地図を出して説明した。
「ウーコンのキントウンも早いが、シロウが移動の魔法を使えるようだから、依頼は二つ受けてきた。まあ、シロウのお手並みを見せてもらおうってことだから、気楽にいこうぜ。もし、強いモンスターが出てもウーコンが叩きのめしてくれるだろうしな」
「おう、任せてくれ」
「ウーコンさんに任せておけば大丈夫ですです」
俺は地図で場所を示し、依頼の内容を簡単に説明した。
その後ギルドの外に出て、人目に付きにくい建物の陰に周った。
「じゃあ、シロウ頼むぜ、さっき言った草原まで移動させてくれ」
「承知しました。では、みなさん、それぞれ手を繋いでください」
俺達は円陣を組むようにして、隣同士で手を繋いでいった。
「我らの神ゼスよ・・・」
シロウが呪文を唱えだした。呟くように言っているので、よくは聞き取れない。暫くすると周りの景色がぼやけた。
あまり長い時間を感じずに俺達は草原に移動していた。異世界への転移に比べるとあっけないように感じるほどだった。
「これは便利ね。エルフの里でも転移の魔法陣で移動したことはあるけど、効果はほとんど同じね」
俺は地図を出して、山の形などから草原のどのあたりか見当をつけた。
「さて、もう一度依頼を確認するぞ。今度の相手はオークだ。オークも条件によってゴブリン以上の繁殖力を見せる時が有る。今いる場所の東には人間の村が有るが、逆の西にオークの村が有る。最近オークが人間の村付近で出没して、家畜などの被害が出ているからギルドに依頼が来たんだな。オークはゴブリンよりは強いが、うちのメンバーなら退治は簡単だろう。ただし、その量にもよるだろうがな。オークの村に近づきすぎると相当な数のオークと出くわすかもしれない」
「とりあえず、すぐそこに1頭居るわね」
俺もイザベラの言う方を探知する。丈の高い草で直接は見えないが、確かに1頭いるな。
「では、とりあえず、倒してよろしいですか」
シロウもわかったらしい、ウーコンと一緒で気配でわかるのだろうか。
「ああ、頼むぜ」
シロウは腰の剣をすらりと抜いた。片刃の剣で日ノ本ではカタナと言うらしい。
シロウはカタナを右手で持ち、左手を前に突き出し、何かを呟くようにした。魔法の詠唱だろうか。
すると、草をかき分けて豚面のオークが1頭出てきた。身長は2メートルくらい、右手には棍棒を持っているが、襲い掛かってくる様子はない。夢遊病者のようにただ、足を前に運んでいるように見える。
一瞬。シロウが腰を落とし、伸びあがりながら両手でカタナを斬り下ろした。
「ッゴオ」
オークは左肩から袈裟懸けに斬られ、地響きを上げるようにして横倒しになった。即死だな。
「こんな感じでよろしいですか」
「へえ、凄い腕前だな」
ウーコンが感心したように言う。
イザベラとノラは息を呑んだ。俺も正直声が出ない。確かにこの程度のオーク1頭なら、俺達のうち誰でも簡単に倒すことはできるだろう。しかし、このオークは全く無防備で斬られた。そして、その無防備なところをシロウは躊躇せず、落ち着き払ったまま、一刀に斬り捨てた。胆力と言うのかなんと言うのか、その技術だけでなく、シロウを怖いと思わせられるような場面だった。
「あ、あたしが魔石を取りますねです」
ノラが慌てたように、ナイフを取り出した。
「ああ、頼む。オークの肉は家畜の飼料になるから、まあまあの値段になるはずだ。マジックバッグが空いているから、素材も回収しとこうぜ」
俺達は手分けして素材を切り取っていった。
「悪いが俺にはこいつがパーディエに見えちまう。作業は勘弁してくれ」
確かにウーコンの弟弟子のパーディエはオークそっくりだ。気持ちはよくわかる。
「イザベラ西の方を広めに索敵してみてくれるか」
「ええ、わかったわ」
イザベラは暫く探索していたが、
「うーん。1キロくらいのところに5,6頭の群れが幾つかあるんだけど、問題はその先ね。5キロ先には50頭くらいの群れがいるわ」
「そうか。俺達はほとんど全員が個の力は強い。個人差はあるが、なんでもできる人間が多い。だから逆に連携はほとんど取れないのが実情だが、オークの50頭くらいなら問題ないな」
「ああ、俺は100頭でも大丈夫だが、さっき言ったように仲間だったパーディエを思い出しちまうんだ。すまないが、後ろに居させてもらえないか」
「わかった。もしもの時はウーコンに頼むが、残りの4人で前に出よう。いや、ノラは回復が得意だから、後衛にいたほうがいいか」
「そうですね。私も接近戦はできますし、ウーコンの分まで戦いたいですが、50頭相手では荷が重いので、後衛に居させてもらえるとありがたいです」
「じゃあ、俺達3人が前衛でいいかな」
「ええ、いいわ。私もノラに教わって、魔剣を使えるようになったから。攻撃魔法とセットで戦うわ。魔剣士と呼んで頂戴」
こいつも意外とお調子者かもしれない。
俺達は右にイザベラ、左にシロウ。そして真ん中に俺が位置する前衛で、5メートルほど後ろに後衛の二人が付いてきている。
ここから先は高い草は無いのでかなり見通しが利くが、時々、木や盛り上がった土などで、隠れる場所が無いわけじゃない。まあ、こっちは索敵もできるし、たいして知能の無いオークが隠れてはいないだろうが。
1キロ近く進んだところで、5頭の群れを見つけた。
「そうだ、イザベラに言っておくことが有る」
「なにかしら」
「イザベラは攻撃魔法が使えるようになったから、どんどん攻めるだろうが、ここは草原だからファイアー系の魔法は止めてくれ。草に燃え移ったら、こっちが炎で逃げられ無くなっちまうからな。それとできればサンダー系も燃える可能性があるから控えてくれ」
「そうすると何ならいいのかしら」
「攻撃魔法だとアイスかな。後は風だな。土はどちらかと言えば守りだからな」
「アイスと風か。やったことないんだけど」
「5頭だし、練習の心算でやってくれ。とりあえず、アイスダガー程度で」
「わかったわ。アイスダガーね。やってみる」
氷を短剣状にして相手に叩きつける攻撃魔法だが、イザベラの魔力量ならうまく練れば大丈夫だろう。




