街へ
「じゃあ、まずシロウの冒険者登録をギルドで手続きしてから装備や衣類を買いに町へ行くが、全員で行くこともないだろう。俺とイザベラで連れて行くから、ノラはウーコンを連れて街を案内してくれるか」
「はい、わかりましたです。デートってやつですね」
まあ、そんなノリでいいだろう。ウーコンも満更でないような顔をしているし。ギルドからの金をウーコンにも渡してあるから、何か買い物が有っても大丈夫だろう。
3人でギルドの入口をくぐった。今日の受付はソフィアだった。
「おはようございます。今日は依頼ですか」
「いや、冒険者登録とパーティメンバー登録をしたい。登録するのはこのシロウで、俺が保証人だ」
俺はBクラスのカードを示した。
「パーティ「キントウン」さんですね。了解しました。こちらの用紙とこちらの用紙に記入をお願いします。冒険者登録の記入は代筆が必要ですか」
「いや、俺が書く。シロウは他国から来たので、書く方はまだできないんだ」
俺はシロウの登録とパーティへの加入の書類を書いて提出した。
「はい、お預かりします。Eクラスの登録を行います」
シロウはソフィアからEクラスの冒険者カードを受け取った。
「おい、なんだか妙な格好の奴がいるなあ」
振り向くと巨漢のジャックが赤ら顔で近づいてきた。こいつは懲りないようだな。まあ、確かにシロウの着衣は少し変わっているし、戦地から来たままだから破れたりもしているが。
「私のことですか」
シロウが穏やかな顔つきのままジャックに向き合った。ジャックの奴は俺の方に見向きもしない。酔っ払いだし、俺に気付いていないようだ。
「お前だ、お前。ボロボロの格好しやがって。なめてんのか」
シロウはそのままの表情ですっと目を細めた。
「んっ、なんだ・・・」
ジャックは怪訝な表情で少し首を捻るようにした。
「んっ、あ、あう、おお」
そのまま、首をどんどん曲げていき、そのうち上半身が大きく傾き、ドサッという音を立てて転倒した。
「おうっ、ああ、んん」
眼は開けているが、体にうまく力が入らないのか仰向けのまま藻掻いている。
「この方は随分お酒を飲まれたようですね。
では、参りましょうか」
俺達はギルドの外に出た。
「凄いわね」
イザベラが少し青ざめて言った。
「いえいえ、酔っ払い相手の余興です。素面の人間にはああ簡単にはいきませんし、魔物相手ですともう少し難易度があがります」
俺は今までシロウと話していて感じたが、自分の力を必要以上に低く話す。この説明もそのまま受け取るわけにはいかないな。俺達に心を開いていないわけではないと思うが、シロウの、或いは日ノ本の人間のそういった性格なのかもしれない。
まあ、シロウの力はいまのところ未知数だ。ウーコン並ってことはないだろうが、かなりの実力があるのかもしれない。乞うご期待だな。
「じゃあ、まずは洋服だな。イザベラいい店を紹介してくれ」
俺達はイザベラの案内で洒落た洋品店に入った。採寸もしてもらい、洋服を一揃い購入した。
「シロウ。今までの服は捨ててもらってもいいかしら。それとも故郷の思い入れとかあるの」
「いえ、正直言って、好きであの服を着ていたわけではないのです。私は一揆の旗頭に担ぎ上げられたので、遠目にも敵からも味方からもわかるように、それとゼス様の信徒であることを強調するために、異国のものを身に着けたのです。店の方で処分していただいて結構です」
「じゃあ、次は防具屋に行こう」
シロウは防具は全く身に着けていなかったので、皮の鎧と小手、簡易な兜を見繕った。
「うん。いいんじゃないかしら。冒険者らしくなったわね。今までも戦地に居たと聞いたけど、全く防具なしでいたのね」
「そうですね。揃えるお金もありませんでしたからね。それに私には神のご加護がありましたから」
シロウの信仰も本気なんだろうが、どこまで本心なのかよくわからないな。信用できる奴だとは思っているが、心の内がいまいちよくわからない。
「みんなと分かれて二人きりですが、ウーコンと一緒なら安心ですね」
「おお、任せてくれ。魔物が出てきても俺が守ってやる」
「はい、お願いします。街中なので魔物は出ないと思いますがです」
「はは、それはそうか。しかし、俺ばかりが可愛いノラと一緒で申し訳ないな」
「ありがとうございます。私も頼れるウーコンとデートが出来て嬉しいです」
二人は街の店を冷やかして歩いていたが、小洒落た喫茶店に入った。
「ここのクレープが美味しいんですよ」
「そうか、じゃあ俺もノラと同じものを貰おう」
二人は店に腰を落ち着けて、和やかな時間を楽しんだ。
「この世界はまるで極楽だな。力が有ればそれで生きていけるし、こういった場所で可愛いノラと楽しい話もできる。リードに誘ってもらって来たんだが、本当に良かったよ」
「私もウーコンに会えて嬉しいです。他のみんなに会えたことも本当に幸運でした」
翌日、俺達は全員でギルドに向かった。5人揃って初めての冒険であり、シロウの初陣、お手並みを拝見しようってことだ。




