最下層
俺達は順調に7層に降りた。11時を回ったところだ。そろそろ時間も気になってきた。
「ここが7層ですか」
「すごく広いわね」
ノラとイザベラが驚きの声を上げている。
「天井が有ることはあるのね。あまり高くて、まるで外に居るみたいに感じるわ」
「本当です。でも、やっぱりダンジョンらしく薄暗いですね」
このあたりも天井や壁にはヒカリゴケが灯りを放っているが、広いせいか薄暗さは一層だ。
「ウーコン、そろそろ時間も心配だ。すまないがキントウンを出してくれるか」
「おお、任せとけ」
俺達は7層をキントウンで通り過ぎ、8層への階段近くまで移動した。鳥型のモンスターも居るが、キントウンが速いせいか、襲ってはこない。ノラはキントウンが楽しいようでキャッキャと喜んでいる。イザベラもかなり慣れてきたようだ。
俺達は8層に降り、同じようにキントウンで移動し、9層に降りた。
「さて、いよいよここが最下層と言われている9層だ。7層や8層もそうだが、強力なモンスターも棲息している。俺やウーコンはなんとかできるが、イザベラとノラには荷が重いから、慎重に行ってくれ」
「はい、わかりましたです」
「そうね、私も魔力がうまく使えるようになってきたけど、調子に乗らないようにするわ」
俺はウーコンの方に振り向く。
「この間の場所を覚えているか」
正直、俺もかなり緊張している。異世界に跳ばされ、そして帰ってきたその場所に行くんだ。モンスターだけに気を付けていればいいわけじゃない。
「ああ、だいたいわかるぜ、キントウンで移動するか」
「ああ、頼みたい。占いでは正午と言う時間を言われただけだから、正午にあそこに行けばいいのか、それともあそこに向かう途中でなにか起きるのか、或いは、俺達がどんな道を選んでも同じなのか。まるでわからないが、早めにあの場所に行っていた方が気持ちが落ち着くんじゃないかと思うんだ。正直、俺も不安は感じるんだ」
「そうか、俺は楽しみだぜ。まあ、とにかく筋斗雲を出すよ」
楽しみか。ウーコンは頼りになるぜ。こいつは異世界から来たが、根っからの冒険者かもしれないな。
ウーコンにキントウンを出してもらい、俺達は9層を移動した。降りた所は中央より少し奥。俺がヒュドラに追われ異世界に転移した所。そしてウーコンと共に戻ってきた場所だ。心当たりの場所と占い師ジョンは言った。ここに違いないだろう。まだ、時間は少しあるな。まさか、今度はこのメンバーでどこかに跳ばされるんじゃないだろうな。
「リード緊張しているのか」
「そうだな、緊張している」
「リードも緊張とかするのね」
「はは、俺も人間だぜ。まあ、モンスターは怖くはないが、何が起きるかわからないってのは緊張するな」
「リードさんも人間だったですね」
「何言ってやがる。この中で普通の人間族はリードだけだろう」
「ああ、そうだったですね」
みんな俺の緊張をほぐそうとしてくれているのかな。
話をしているうちに異変が起きた。
前回と同じあたりの空間が捻じれたようになってきた。
「みんな、下がれっ」
俺がイザベラを、ウーコンがノラを庇うような格好で後ろの林ギリギリまで下がった。
正面の空間は渦を巻いているように見える。光がうねり、明滅する。転移陣から離れた場所から見ているので、まだ落ち着いていられるが、俺達の立っているこの場所は時空がしっかりしているのがわかる。渦の中は明らかに時空が歪んでいる。光がぐるぐる回っているようだ。
すると何かが出てきた。誰かと言った方がいいか。誰かが捻じれた時空からはじき出された。ゴロンと転がり出てきた。俺は剣をウーコンはニョイボウを構えた。
「あんたは」
そこには俺達の知っている男が倒れていた。




