帰還
俺達はキントウンから降りて街に入った。
「さて、どうするかな。ノラを休ませてはやりたいが、まずはギルドに行った方がいいだろうな」
「そうだな。ギルドにあいつらのことを訴える必要があるだろう」
イザベラも相当腹を立てているようだ。
ギルドに入り窓口に行くと、ソフィアが話を聞いてくれた。
「サラ自分で話すか」
「はい、私はDクラスのノラと言いますです。パーティ『曙』のメンバーですが、カーバーラダンジョンの4層でミノタウルスの群れに襲われて囮にされたんです」
「えっ、囮ですか。それは酷いですね。あれ、『曙』のメンバーさんはギルドには戻っていないようですが」
「ああ、俺達がミノタウルスの群れから助けた後で、飛行魔法で戻ってきたんだ。多分、追い抜いちまったんだろうな」
「ええ、行きにはダンジョンまで一時間近くかかりましたですから、戻ってくるのもそれ以上はかかると思いますです」
「では、それまで奥で上司に話を聞いてもらいます。こちらにどうぞ」
「俺達もいたほうがいいんだろうが、ぞろぞろ行っても邪魔だろうから、イザベラ一緒に行ってやってくれ」
「そうだな。ノラ私でいいか」
「はい、お願いしますです」
二人はソフィアに促されて奥に入っていった。
「じゃあ、俺達はここに陣取って奴らが来るのを待つか」
「戻って引きずって来なくてもいいか」
ウーコンも怒っているようだな。しかし、こいつが引きずってきたら命がないかもしれない。
「まあ、待っていればいいだろう」
「大変だあ」
「ダンジョンでミノタウルスが出たんだ。仲間が一人犠牲になっちまった」
ギルドはそんなに混雑していなかったが、数名が近寄ってきた。
「ミノタウルスが出たのか」
「よく逃げてこられたな」
「あ、ああ仲間が足止めをしてくれたんだ」
「そうよ、ノラが身を挺してミノタウルスを止めてくれたの。私達に逃げてって」
三文芝居が始まったようだ。魔法使いは熱弁を振るっている。本当にノラが健気に犠牲になったのかと勘違いしてしまいそうだ。
「よくゆうぜ。仲間を囮にして逃げてきたんだろう」
3人はギクっとした表情をして一瞬動きを止めた。
「な、何を言うのよ。酷いこと言わないで」
「酷いのはお前たちだろう」
ウーコンも俺に並んだ。
「勝手なことを言う・・・。あれ、あんた達は」
パニックだったろうが、多分ウーコンの姿を見て気が付いたようだな。
「エマ、酷いじゃない。私をミノタウルスの前に突き飛ばすなんてです」
ノラが奥から出てきた。隣にはソフィアと上司らしい男性が並んでいる。確か受付部長のローガンだったか。
「ノ、ノラ。どうしてここに」
3人はダンジョンから逃げる時以上に驚愕な表情をうかべた。
「仲間なら、まず、ノラの無事を喜んだらどうだ」
「ああ、もちろん喜んでいるさ。だが、どうして。エマが突き飛ばした後、動けないように拘束の魔法をかけたんじゃなかったのか」
「バカッ、なに言ってるのよカール。馬鹿な事言わないで」
まあ、語るに落ちたって言うやつだな。
「君たち、『曙』のメンバーのカールとジョンソンとエマだな。奥で話を聞くから来なさい」
ローガン部長が厳しい顔つきで言った。3人は慌てふためいていたが、そのまま連れていかれた。ゆっくり口裏を合わせる心算だったんだろうが、俺達が先に帰っていたんで動揺してボロをだしたんだろうな。
「ノラは帰る宿はあるのか」
「いえ、無いです。『曙』で部屋を取っていたので、帰れませんです」
「じゃあ、俺達の所にくるか。酷い目にあった後で、一人で宿を探すのも辛いだろう」
「いいんですか。とても助かりますですが」
「ああ、ウーコンもイザベラもいいだろ。悪いがイザベラの部屋に入れてやってくれるか」
「そうだな。と言うか、リードの家だしな。リードが良ければいいだろう」
「ありがとうございますです。命まで助けてもらって、お礼の言葉もありませんです」
ノラはペコペコと頭を下げる。ケモミミがひょこひょこ動いて中々可愛いもんだ。ウーコンもニコニコしているようだ。
「そう言えば昼飯を食い損ねたな。ギルドじゃ落ち着かないから外で済まそうぜ」
俺達は落ち着いた感じの外の食堂で遅い昼食を済ませてから家に戻った。




