魔力を練る
俺達はグレイトウルフを解体し、魔石と素材を回収した。グレイトウルフの牙は鋭く、武器の材料になる。毛皮も傷の無いやつはそこそこの値段で売れる。今回はウーコンも回収を手伝ってくれた。まあ、こういうのは慣れもんだし、根は気のいい奴だからな。
俺は背嚢からマジックバックを出して広げる。広げても背嚢程度の大きさだが、レベルの高い魔法が施されていて、中には小さな部屋くらいの収納力がある。かなり高額だったが、とても便利なので転生する少し前に入手していたのを家に置いていたんだが、今回が初お目見えだ。
イザベラも回収は割と手馴れていた。
「おお、マジックバッグか、凄いものを持っているな」
「ああ、奮発したんだ」
魔石と牙は嵩張らないが、毛皮10数頭ぶんは普通の背嚢じゃあとても入らないので、とても便利だ。
「イザベラちょっといいか」
「ああ、何かな」
「お前の魔法を少し見せてくれ」
イザベラはちょっと渋い表情をした。魔法に関しては劣等感を持っているのかもしれない。
「まあ、構わないが。どうすればいい」
「まず、炎を出してみてくれ」
イザベラは詠唱し、掌に拳大の炎を出した。少し揺れている、安定していない感じだ。
「ここは岩場だから延焼は大丈夫だろう。そこの大きい岩にファイアーボールを撃ってみてくれ」
ハっと言う掛け声とともに、炎が打ち出されるが、スピードも遅く、岩に当たってそのまま消えてしまった。
「なるほどな」
「何かわかるのか」
「最初に炎を掌の上に出したが、あまり慣れていないだろう」
「そうだな、元々苦手だから、前回出したのは随分前のことだ」
「そうだろうな。今のはその炎を放るようないイメージで撃ったと思うんだが、今度はまず、魔力を体の中で練ってみてくれ」
「練る?」
「ああ、魔力を体の中で回して大きく育てるようなイメージだ」
「ああ、やってみよう」
イザベラは集中するような厳しい顔つきになり、詠唱しながら体内の魔力を動かすようにした。近くに居ても魔力が練られているのが感じられる。
「そのまま、投げると言うより、魔力を岩にぶつけるようなイメージで出してくれ。
「ハアッ!」
今度は人の頭ほどの炎がイザベラの両手から放出された。それなりのスピードで岩にぶつかり、ドンという音で岩が少し砕けた。
イザベラはハアハア息を荒げている。
「いいじゃないか」
「ああ、自分でも驚いている。こんなことは誰も教えてくれなかった」
イザベラは額の汗を拭きながら、輝くような笑顔をしている。
「俺もエルフに知り合いはいないからわからないが、エルフは当たり前に魔法が使えて、人に教えるなんてことはないんじゃないか」
「そのとおりだ。誰も説明なんかしてくれない。聞いてもエイってやるんだよとか言うくらいだ」
「それなら後は練習だな。イザベラもエルフだから魔力は強いんだ。今みたいに魔力を練る練習は普段でもできるだろう。慣れてくれば魔力も安定してもっと力強くなっていくはずだ」
「ありがとう、君たちとパーティが組めて本当によかったよ」
仲間の喜ぶ顔は嬉しいもんだな。俺もパーティを組んでよかったと思う。それに、メンバーの力量が上がるのは頼もしい限りだ。
「じゃあ、次に行くか。イザベラ索敵を頼む」
索敵しながら少し登っていった。
「この先の林の中だな。グレイトウルフより大きいな。3頭いるようだ」
「ああ、このあたりはグレイトウルフとグレイトベアが棲み分けているはずだ。グレイトベアだろう」
俺達は林の手前で止まった。
「じゃあ、今度も俺とウーコンが先に行くが、1頭はイザベラに任せることになると思うから気を付けてくれ。グレイトベアはウルフ程の速さはないだろうが、一撃は重いから、まともに喰わないようにしてくれ。ああ、それと魔法が使えるようになったと言ってもファイアーは止めてくれ、山火事になると拙い」
「わかった、気を付けるよ」
「じゃあ、ウーコン頼むぞ」
「ああ、任せてくれ」
俺とウーコンを前衛に林に入った。木はそれほど密集しているわけではないので進みやすい。直に3頭のグレイトベアが唸りをあげているところに出くわした。
身長は3メートル余り。3頭とも立ち上がり、腕を振り上げていた。
俺たち二人はさっと躍り込む。
グレイトベアの頭部は高い位置だし、毛皮も固いので、俺はまず右の後ろ脚に斬りつけた。
手ごたえがあり、ゴウッと云う声と共に四つ足になり、それでも怯むことなく前足を振ってきた。
それを躱し、剣で肩と頭部に斬りつけた。毛皮が固いが頭部への一撃はざっくりと手ごたえがあった。断末魔のグレイトベアがグワッと再び立ち上がったタイミングに合わせて飛び込み、はらに突きを見舞った。
よし。なんとか1頭倒して振り向くとウーコンがグレートベアに対峙し、グレートベアの後方からイザベラが斬りつけている光景が目に入った。別の1頭はウーコンの横に倒れている。どうも頭が陥没しているようだ。
イザベラが背中に斬りつけるが、グレイトベアの体毛は固くて滑るので、致命傷は与えられないようだ。それでも斬られるのは痛いので、グレートベアが後ろを向こうとする。するとウーコンがニョイボウを伸ばしてベアの頭を殴る。ニョイボウは自在に伸びるんだよな。
「お前の相手はこっちだって言ってるだろう。前を向かないと殴り殺すぞっ」
どうもイザベラに斬撃の練習をさせているようだな。グレイトベアが少し気の毒な気もする。それと多分毛皮は傷だらけで商品価値が下がるな。まあ、ほかに2頭分あるからいいけど。




