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リーゴーチ山地

リーゴーチ山地はハーラ草原から北の位置にある。急峻な斜面もあるが、割となだらかな登りであり、山と言うより丘という方が正しいのかもしれない。

林もあるが、俺達が降り立ったところは岩場であり、少し先になだらかな傾斜の草原が続いている。

「着いたぞ」

イザベラに声をかけるが、俺にしがみ付いたまま離れない。まあ、俺は柔らかい体に抱き着かれてこのままでもいいのだが、そうも言っていられない。

俺の声が耳に入らないくらい緊張しているようなので、少し強めに肩を叩く。

「おい、もう地面に足をつけてるぞ」

「え、も、もう着いたのか」

おっかなびっくり目を開けた。腰を突き出した格好で俺にしがみ付いている。

「もう、離れても大丈夫だぞ」

「えっ・・・あっ」

イザベラは慌てて俺から離れた。流石に恥ずかしかったのか、真っ赤に上気した顔をしている。

「す、すまない。なにせ雲に乗るなんてことは初めてなんだ」

「イザベラは舞空術とかは使えないか」

「ああ、できない。できるエルフも居るだろうが、私は見たことがない」

「まあ、それじゃあ怖いだろうな。俺は空も飛べるが、それでも初めて雲に乗った時は緊張したな」

「そうだろう、そうだろう。生きた心地がしなかったよ」

話しているうちに、少しは落ち着いてきただろうか。

「さて、この先の草原あたりだな」

「グレイトウルフだったな」

狼型のモンスターだ。ライオンくらいの大きさで群れを成す。スピードの速さと群れの連携が厄介と言われている。

「イザベラは守りはどうだ」

「一応剣士の端くれだからそこそこだと思っているが」

「ウーコンは石の体だからもし嚙まれても文字通り歯が立たないだろうし、俺もモンスターウルフにやられるようなことはない。だが、奴らの牙はまあ強力だろうから、イザベラが噛まれた時のダメージを想定しておかないとな。手足を食いちぎられちまったら回復も難しくなっちまうからな」

「小手と拗ね当ては装備しているが、もろに噛まれたら心配だな」

「じゃあ、強化の魔法をかけておくか」

俺は強化の魔法を詠唱し、イザベラの体を鋼並みに強くしておく。

「さて、行くか」

俺達はゆっくり草原に足を踏み入れた。

「じゃあ、イザベラ、索敵を頼む」

「うむ、任せてくれ」

イザベラが索敵の魔法の詠唱を始める。俺も一応無詠唱で索敵しておく。ウーコンも魔法ではないが、ある程度の気配はわかるようだ。まあ、完璧だな。

「100メートルほど先だな。20頭くらいだ。結構いるな」

「とりあえずイザベラは下がれ、俺とウーコンが前に出る。ただし数が多いからそっちにも行くぞ、油断するな」

「ああ、わかった」

「ウーコン頼むぞ」

「ああ、任せとけ」

風は無かったので匂いは流れていないだろうが、暫く進むと向こうも気付いたようだ。草の丈は高くはないがグレイトウルフの体高をギリギリ隠している。近い奴は目視できるが、奥の奴は動かない限り目では位置が確認できない。

前面の4頭が跳びかかってきた。10メートルくらいをひと飛びの身体能力だ。並みのCクラスではおたおたするかもしれない。まあ、俺の動体視力にはどうってことはない、こちらの2頭を続けざまに斬り倒す。ほぼ同時にウーコンが向こうの2頭を殴り倒していた。

だが、息つく間もなく、左右から数頭が襲い掛かってきた。いつの間にか横に回っていたようで、この辺の連携がこいつらが面倒なところだ。だが、俺達の不意を突けるわけでもなく、俺は2頭を斬り倒す。

「おうっ」

イザベラの声と気配に振り向くと、後ろには3頭が回りこんでいた。

イザベラは最初の1頭を斬ったが、別の1頭が肩に、もう1頭が足を狙っていた。俺は身体強化の魔法をかけてある脚力で近づき、足元の1頭を突き倒した。

「くっ」

イザベラの肩に噛みついている1頭の口に剣をこじ入れて引き離す。

キャンっと離れるところを唐竹割に斬る。

「イザベラ大丈夫か」

「ああ、強化の魔法が利いているようだ。肩にもダメージはほとんどない」

グレイトウルフの嚙む力は強いので心配していたが、どうにか防ぎきれたようだ。

周りの様子を探るとウーコンが戻ってきた。

「最初のも入れて8頭倒した。こっちはどうだ」

「ああ、イザベラが肩を嚙まれたが、魔法の防御で守りきれたようだ」

「そりゃあ良かった。後数頭残っているはずだが、逃げたようだな。もう近くに気配がない」

「イザベラ、一応索敵してみてくれ」

「そうね、ウーコンの言う通りみたい。もう100メートル先を逃げているわ」

肩慣らしの相手ではあったが、俺達は緊張を解いた。


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