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追放ブーム

でかい声のする方を見ると、ロビーの一角で数名の冒険者がもめているようだ。

ロビーに備え付けたテーブルを囲んで4人の冒険者が立ち上がって睨み合っていた。どうもパーティの仲間のように思える。その中で背の高い男が正面の女に指を突き付けている。多分この男が怒鳴ったんだな。

「マ、マーク。今なんと言ったんだ」

女の方を見ると耳が尖っている。これは多分エルフだな。この街にもエルフは割と居る。エルフは魔力が強い者が多いので、冒険者としては特に後衛の火力として人気が有る。俺はエルフと話したことはほとんどないが、金髪に碧眼、スマートな体躯で、まあステレオタイプのエルフと言えるな。たいして特徴もないので、次に会ってもわからないかもしれない。強いて言えば剣を腰に下げているのは珍しいかもしれない。魔術師はあまり重い剣を持たない場合が多いからな。

「聞こえなかったのかイザベラ。お前を追放すると言ったんだ」

マークと呼ばれた男は突きつけた指をなおも刺すように伸ばして大声を出した。

俺はいいかげんにしろと言いたい。結構うんざりとした気分だ。と言うのも、俺が転移する前から『追放』ブームなんだよな。

確かに冒険者はストレスが高い。そりゃあ命を懸けて冒険をしているんだ。ストレスが無いわけがない。だからストレス発散のために酒場でバカ騒ぎをする奴も多い。いろんな発散方法があるんだろうが、最近になってどうもストレス発散のために「追放だー」と騒ぐのが流行ってきたんだな。

そりゃあ追放する方はいいだろう。一方的に怒鳴りつけて、何故だ―と慌てる奴をこき下ろす。いいストレス発散になるだろうよ。でも、やられる方の気持ちになって見ろよ。つまらないことで言いがかりをつけられて万座の中で恥をかかされて追放だ。たまらないぜ。

そりゃあ、パーティを組んでいりゃあうまくいかないことだってあるだろう。気が合わなかったり、役割分担が想定と違ったり、いろんな齟齬が出て、一緒にはやっていけないってなることも当然あり得るだろう。だけど、一度は仲間としてやってきたんだ。袂を分かつことになったって言い方、やりようがあるだろう。まあ、俺のようなソロをやってきた人間にたいしたことはわからねえかもしれないが。

「な、なぜだ。なぜ私がパーティを追放されなければならない」

イザベラと呼ばれた女は真っ青い顔をしている。

「言わねえとわからねえか、お前が役立たずだからに決まっているだろう」

一方、マークの方は真っ赤な顔をしている。もう自分の言葉に興奮しているんだな。いやだいやだ。

「わ、私のどこが役立たずだ。ちゃんとチームに貢献しているだろう」

「あら、あなたのどこがチームに貢献しているのかしら」

マークの右隣の女が言った。小柄でフードをかぶっているので顔はよく見えないが、杖を持っている様子からも回復役なんだろうな。

「私は率先して先行し、しっかり斥候で貢献しているつもりだ」

「俺達がお前に期待していたのは魔法だよ」

今度はマークの左隣の男が言った。マーク程の身長はないが、横幅があり力が強そうだ。

「前衛は俺とマークで足りてるんだ。後は後衛でどかーんと魔法をぶっ放してくれりゃあいいんだが、お前は魔法は全然ダメじゃないか」

「それは仕方ないだろう。私の魔法は索敵に特化しているんだ。索敵でちゃんと結果を出して、この剣でも貢献しているはずだ」

「だから、剣はいらねえんだよ。ピーターが言ったように前衛は足りてるんだ」

「そうかもしれないが、私が索敵中心だというのはパーティに入る時に言ったはずだぞ」

「ああ、聞いたよ。そりゃあ確かに聞いた。だけど、お前エルフだろ。エルフって言ったら魔法だよ。どかーんていう火力を期待するに決まっているだろう」

「だから私は攻撃魔法は得意じゃないんだ」

「もういいっ!兎に角お前は追放だ。あばよ」

「ま、待ってくれ」

3人が行こうとするのをイザベラは追いすがったが、相手にしてもらえず、1人ロビーに残された。


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