試運転
「見てくれよ」
俺は防具を付けたまま、転移陣で帰宅した。
「着たまま戻ったの、よっぽど嬉しかったのね」
「とても似合っているです」
アダマンタイト製の防具は鈍く光り、俺もかっこいいと思っている。
近くで見ると、いろんな部分に魔法陣が描き込まれているのがわかるが、それも渋いセンスに感じられる。
「どれどれ」
ウーコンが近寄ってきた。
いきなり胸にドンっと拳を叩きつけてきた。
ジミーの時もやってたから警戒していたが案の定だ。
しかし、ウーコンの、まあ、本人にしてみたら軽くだろうが、強烈な一撃を受けたが、意外なほど衝撃は感じなかった。
「おお、大丈夫のようだな」
衝撃は感じなかったが、おそらく俺の顔は引きつっているだろうな。
その後、エリザベス、ノラと3人で何回かクエストに行った。
防具を体に慣らすためだが、シロウは剣に魔法を付与する仕事で泊まり込み、ウーコンはジェミニのクエストに行っていたので、俺だけ両手に花状態だ。
転移もキントウンも使えないので、飛行術で現場まで行くわけだが、これが本来であり、ある意味新鮮でも有った。
「飛行術も普段使っていないとコツを忘れちゃいそうね」
「そうだな。なんでも訓練だな」
「ですです」
久々にダンジョンに潜り、それなりに下の階層まで潜った。
「この辺に出るのは幽霊剣士だったかしら」
「ああ、そうだ。良く違いが判らないんだが、彷徨う鎧とか、アンデッド系の剣士が出てくるらしい」
「アンデッドでも、物理攻撃は通るんでしょ」
「そのようだな。アンデッドだが霊体ではなく、実体らしいということだな。ただし、向こうの剣もこちらを斬れると言う事でもある」
「強いって言う話よね」
「そうだな。剣の達人がこの世に未練を残してアンデッドになったていう説が有力らしいから、それなりに強いんだろうな」
「居るわね」
居るな。イザベラの探知にもかかったようだ。
「出たです」
彷徨う鎧かな。首から上が無い。古そうなプレートメールで全身を覆い、大剣を右手に下げ、左手にはこれも巨大な盾を持っている。
「一匹、いや一人だな。俺が出よう」
一歩前に踏み出すと、鎧もこちらに歩き出した。
右手の大剣をブンっと振り回す。
俺の左肩辺りでガンっと派手な音がしたが、ほとんど衝撃は無い。
直後に魔力を流した剣で相手の右腕を断ち切る。
ドサッと大剣ごと鎧の右腕が落ちた。
「ウッツ、ウゴオ」
とか喚いているうちに左手も落とす。
盾ごと左腕が落ち、達磨状態のところを真っ向唐竹割り。
グワッシャーーンと派手な音を上げて、鎧が真っ二つに地に落ちた。
「中身は空ですね」
「うん。中身の肉体は既に無いってことだろうな」
「次が来たわよ」
見ると、スケルトンのような骸骨顔が鎧を着こんでいる。
「こいつは、ノラに頼んでいいか」
「任せるです!」
声と同時に、ざっと地を蹴り、赤の魔剣を叩きこむ。
ノラは獣人らしく膂力はあるので、魔剣も十分使いこなせるようだ。
その一撃で幽霊剣士は肩口からスパッと身二つに分かれた。凄い切れ味だな。
その後も交代で、或いは協力してアンデッドを退治していった。
ノラの聖魔術で倒すことも考えられたが、今回は肩慣らし的な冒険なので、斬撃を中心にした。
魔石と素材回収はしっかり行った。
元々、このパーティでは稼ぎがよかったのが、お宝を入手してからは経済的には全く心配がなくなったため、素材回収をしなくても、極端なことを言えばクエストを行わなくても何年も遊んで暮らせるわけだが、それに満足はしたくない。
やはり冒険者はモンスターを狩り、コツコツと素材集めをするのが基本だ。
ウーコンやシロウに追いつくためにもその基本だけは忘れないようにしたい。
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