シロウの錬金術
私は日ノ本の国から逃げてきた。
日ノ本に限らず、あの世界では私を受け入れてくれる場所は無かった。
幕府に捕らえられ、磔を待つ身であった。
死が怖いとは思わなかった。天に召され、パライソでゼス様にお会いできるなら本望とさえ思っていたが、なにか未だやり残したようなものが有るように思えた。
そして転移の外法を我が身に施し、結果としてリードの世界に来ることができた。
なんだろう。何か私を縛っていたものが全てほどけたような、そんな心持ちだった。
私が転移したその場にはリードだけでなく、ウーコンも居た。女性の仲間も二人いた。
最初は私も新世界に緊張していたが、慣れるにつれ、ここが素晴らしい世界であることがわかってきた。
魔法の類は日ノ本にも有った。私が身につけたものは伴天連の魔術が基本だが、神道や仏教にも同様の技術体系があり、また、こちらの世界とは少し違うが魔物も闇の中には棲んでいた。
しかし、こちらの世界は魔力に満ち満ちている。また、私自身にも魔力が備わっていることが実感として分かった。
そして、錬金術と出会い、私は生き甲斐という物を見出した。
錬金術は面白い。エリザベス師匠にも感謝しているが、この世界で受け入れてくれたリード達にも感謝している。
二つの魔剣とペンダントを使った時には、この世界の王になれるかもしれないとも思ったが、些細なことだ。
そんなものより、この錬金術を極めたい。これが私の天職だったようだ。
「シロウそこは赤色で下書きをした後で、青色を重ねて頂戴」
「わかりました。彫りはいらないんですね」
「そうね、そこは彫るとちょっと素材が弱くなっちゃうのよね」
こうして一つひとつ技術を学んでいく。それが成果となって見られるのは楽しい。
「そろそろ魔力が不足しそうなので、マナポーションを飲んできます」
「私のも」
隣室で一本飲み干し、師匠と姉弟子の分を持って作業場に戻る。
「ありがと」
「悪いわね、私の分まで」
あと一息だ。これだけのものは神具と呼んでもいいんじゃないか。
シロウからの連絡でエリザベスの店に転移した。
「こんにちは」
「いらっしゃい、できたわよ」
出迎えてくれた三人は揃って目の下に隈を作っていた。
「ありがとうございます。随分無理をさせたようで」
「作業に入ればいつものことよ。それに今回は素晴らしい防具に描かせてもらったから、錬金術師冥利に尽きるわ。まあ、お金はいただくけどね」
何かドワーフ達と言い方が似ているのは気のせいか。
「着けてみていいですか」
「もちろんよ。私とアイシャはとなりの部屋で一服するから、シロウ見てあげて」
「かしこまりました」
鎧、レギンス、小手と順々に着けていく。
「おお、これは凄いな」
付与前に着てみた時も凄い防具だということはわかったが、その凄さが倍加し、しかも魔力が満ちていることが実感する。
「これならウーコンやシロウと戦うことが出来そうな気がしてくるな」
戦わないけど。
「いえ、素でやり合えば、私はリードの足元にも及ばないでしょう」
シロウの謙遜はどこまで真に受ければいいのかよくわからない。
「ありがとう。エリザベスは隣の部屋に行って、もう休んでしまったのかな」
「そうですね。体力的にも限界のようでしたので、もう眠ってしまったかもしれません」
「じゃあ、申し訳ないけど、これ渡しといてくれるかな。続けてお願いする剣なんだけど」
俺は腰に佩いていたオリハルコンの剣を外して台の上に置いた。
流石のシロウも引きつったような表情をしていた。防具の次は剣と言う約束ではあるが、寝不足の状態で次の依頼物を見るのはシロウでも辛いらしい。
シロウのこんな顔は初めて見た。よく脳裏に刻み込んでおこう。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!
ぜひよろしくお願いします!




