リードVSトリオン
俺はエリザベスの店に行き、防具への付与を頼んだ。
一度にはできないようだから、剣だけは自分で佩いている。
それだけで、強くなったような気持になるから不思議だな。
数日すると、ジミーの店が開店した。
商店街の悪くない場所に、ひっそりとした感じの店だ。
道具屋と言えばいいのかな。
遺跡で見つけた魔道具と思われる品が5点ほど。
簡易な防具や武器が10点くらい。
よくわからないような壺とか普通の什器類も置いてある。
なんでも屋だな。
ジミーは店の中央より少し奥に椅子を置いて腰かけてきた。
「やあ、開店おめでとう」
「おめでとうです」
「よかったな」
「おめでとうございます」
「いいお店ね」
5人揃って開店を祝いに来た。
「ああ、みんな、ありがとう。みんなのお陰で夢がかなったよ」
「これからどんどん店をでかくしていくんだろ」
「へへへ、そううまくいくといいけどね」
俺達は暫く品物を手に取ったりして、ジミーのご機嫌を取っていた。
暫くすると、ウーコンはジェミニと出かけるようでキントウンで飛んでいった。
「じゃあ、私はエリザベスのお店に行きますね。アイシャに来るように声をかけてきます」
「いいよ、あんなうるさい人は」
シロウは転移術でさっと消えていった。
段々人通りも増えてきて、店を覗いたり、入って品物を手に取る人も出てきた。
「兄さん、この小刀はいくらだね」
早速、買い手が現れて、品が売れていく。あまり安いものはないが、いい物が揃っているからな。
「へえ、こんなところに店ができたのか」
目つきの鋭い若者が入ってきた。若い女を二人従えている。
「あらっ」
イザベラが小さく声を上げた。
「トリオンです」
ノラが呟くのに合わせるように、トリオンがこちらをじろっと見た。
「んっ、こないだの猫娘か。今日は猿は居ないようだな」
闘気を全身から溢れ出させているような剣呑な雰囲気を醸し出している。
「あっ、ほんとだ。ケモミミの子だ。あの生意気な猿は居ないわね」
言いたい放題だが、ジミーの店でトラブルは起こしたくないな。
俺達が黙っていると、トリオンがずいっと寄ってきた。
「俺は剣闘士のトリオンだが、お前たちは冒険者か」
「ああ、そうだ。俺はパーティリーダーのリードだ」
「ふーん。中々のようだな。まあ、俺は優しいから、人間を甚振る心算はないけどな」
馬鹿にしたように上から目線で言ってくる。
確かに力もある様だから、チンピラを追い払うようなわけにはいかないな。
「なんだ、剣闘士が冒険者に喧嘩を売る心算なのか」
「へえ、喧嘩を買いたいってことか」
トリオンがギロッと睨んでくる。決して大柄ではないが、凄い殺気だ。
「買ってもいいが、ここじゃ狭いな。表に出てもらおうか」
ジミーの新しい店を壊すわけにはいかないからな。
俺達とトリオン隊、3人ずつ6人とも外に出た。
「そっちの女達は戦うわけじゃないんだろ」
「当たり前だ、俺の応援団だよ。彼女たちの声援で俺は力を振るうんだ」
「ふーん。天下の剣闘士が声援を受けて、往来で喧嘩するのか」
できれば、適当なことを言って、丸く収めたいんだがな。
「ふん、今更怖気づいたか」
駄目か、こいつもウーコン並みの戦闘狂か。
「怖気づいたわけじゃないが、俺とお前がやり合えば、多分ただじゃ済まない。どっちが怪我をしてもつまらないかと思ったんでね」
「気にするな、怪我をするのはお前の方だ。まあ、怪我だけで済めば御の字だがな」
全く引く気はないらしい。
俺達は互いに睨み合った。
「トリオン様、そんなやつやっつけちゃって」
「懲らしめてやって」
向こうの応援団は賑やかだが、こっちの応援団は静かだな。まあ、俺を信頼してくれているんだろう。
トリオンが腰に佩いた剣の柄に手を掛ける。俺も流れで柄を握る。
しかし、凄まじい殺気だな。モンスターは獣としての闘気を出すが、人間の殺気とは違う。俺は随分モンスターを殺してきたが、人を殺したことは無いし、こうやって真剣で対峙したことも少ない。うっかりするとこの殺気に押されそうだが、新しい剣が俺に力をくれた。まだ、魔力の付与も何もしてないが、柄を握っただけで、俺の心を落ち着かせ、そして集中力を高めてくれた。
何分そうしていただろう。
俄かに、トリオンが間合いを取った。
十分離れた位置で、剣から手を放した。
「ふんっ、馬鹿馬鹿しい。考えてみれば、花形剣闘士の俺がこんな冒険者風情とことを構える必要なんてない。いくぞ」
そう言うと、直ぐに踵を返して歩きだした。
ぽかんとしていた応援団も慌てて後を追う。
「そうね、馬鹿馬鹿しいわよね」
「あなた、命拾いしたわね。トリオン様に感謝しなさい」
最後まで、賑やかな連中だ。
ふっと息を吐くと、傍らにイザベラとノラが立っていた。
周りを見回すと、野次馬が重なるようにしていたが、「なんだ」と言うような声と一緒にバラバラに散っていった。
「よかったわ。リードの力は信じていたけど、どうなるかと思ったわ」
「トリオンの方こそ命拾いしたです。でも、斬り合いにならなくてよかったです」
「ああ、おれも良かったと思っているよ。しかし、人間相手はモンスターとはまた違った怖さがあるな。この新しい剣が勇気をくれたお陰で逃げずに済んだよ」
「リード良かったよ」
ジミーも店から出てきてくれた。
「あの人凄かったね。ちょっとシロウみたいな力を持ってたようだよ」
「リードの方が強いです」
「うん、俺もそうは思うけど、剣の腕だけじゃなくて、何か魔力とかとは違うものを出しそうだったよ。あれは何かのギフトじゃないのかな」
ギフト持ちか、それは見たかったな。俺が観客ならばだけど。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!
ぜひよろしくお願いします!




