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市井のトリオン

3人で家に戻った。丁度スーザンが家事に来てくれた。

「ああ、いいタイミングだったな」

スーザンは信頼できるようなので、玄関のカギを渡してあるが、家人が居る時に来てもらった方がいいだろう。

「お昼は3人でいいですね」

「ええ、そうね」

「そう言えば、ジミーは出かけているんだな」

「仕事に行ったわよ。っていうか、資金が出来たから、露店じゃなくて店を構える心算みたいよ」

「そうか、そりゃあいいな」

スーザンが昼食を作ってくれて、4人で食べた。スーザンのうまい飯のお陰で、楽しみが一つ増えたな。

「私はこの後、師匠の所に行ってきます」

「そうだ、俺も行かなきゃ。付与をアイシャに伝言してもらったが、直接頼まないとな」

「それでは、一緒に行きますか」

「じゃあ、私はお留守番ね」


シロウと二人で転移陣に乗った。超特急で錬金術の店だ。

「こんにちは」

「いらっしゃい」

今日は二人とも店に居た。クマゴロウも居るから3人か。

「すみません。アイシャに伝言を頼んだんですが、魔力の付与をお願いできますか」

「いいわよ。何に付与するの。魔法陣も描きこむってことね」

「はい、魔法陣もお願いします。付与してもらいたいのは剣と防具です。今、注文しているので、1週間くらい先だと思います」

「そう、わかったわ、誰に注文したの」

「ドワーフのアウルヴァングルとグレンディルに頼みました」

「そう、予想はしていたけど、あの二人じゃ話が大変だったでしょう」

エリザベスは笑みを浮かべながらも複雑な表情をした。

「とても大変でした。モンスターと戦う方が楽でした」

俺は苦笑いした。

「そうね、あの二人は若者を揶揄うのが趣味なのね。生きる目標かもしれないわ。辛いかもしれないけど、年寄を楽しませると思って我慢して頂戴」

「はい、ありがとうございます。エリザベスさんに付与をしてもらう心算だと伝えたら安心していました」

「精一杯やらせてもらうと日数はかかるわよ。剣もあるし、やっぱり一ヶ月は見てほしいわね。

適当でいいなら一週間でしあげるけど」

「一ヶ月でお願いします」

「わかったわ。魔剣くらいでいいわね」

「はい、それでお願いします」

魔剣くらいってのはなんだ。まだ、その先が有るって言う意味か。怖くて聞けない。


ウーコンとノラは街でウインドショッピングをしていた。

「私はいろいろ見られて楽しいですが、ウーコンはほかの方がいいんじゃないですか」

「いや、構わないよ。ノラが楽しいなら俺も楽しいってことだ」

「ありがとうです。じゃあ、そこの喫茶店で休憩しましょうです」

店は満員だった。席を探して座って注文をする。

店員が離れると、ノラがこっそりと話しかけた。

「ウーコンの後ろに居るのはトリオンみたいです」

「そのようだな」

「わかるんですか」

「気配が凄いからな」

「ああ、そうですね。普段でもこんなに殺気を出しているんですね」

「戦闘狂なんだろうな」

ノラは声を潜めていたが、ウーコンは割と普通の声で喋っていた。

「おい、戦闘狂ってのは誰のことだ」

ウーコンが振り向くと、トリオンが立ち上がっていた。脇には女性が3人席に座っている。

「ああ、すまない。悪気はないんだが、地声が大きいもんでね」

「すみませんです。前に試合を見たことが有るので、私が話を振っちゃったです」

「ふん、猿と猫か、獣人の分際で、このトリオン様の話をするのは100年早いな」

「そうよ、そうよ。私達のトリオン様に獣人がき易く話しかけないで頂戴」

話しかけたのはそっちだと思ったが、ウーコンは黙っていた。この世界に来た時から、リードには差別で嫌な思いをするかもしれないと注意されていたが、ここのところ調子がよかったのですっかり忘れていた。調子に乗っていたと言ってもいいかもしれない。

「そうか、悪かったな。試合を見た時に凄い剣闘士だと思ったんでね、つい、喋っちまったよ」

トリオンも落ち着いたのか、表情を和らげ、腰を下ろした。

「そうか、俺の試合を見たか。じゃあ、俺の強さは良く知っているんだな」

「ああ、あんたは強いな。何故、わざわざ相手に攻撃させているのか不思議なくらいだ」

ノラが吃驚して顔を上げた。

「貴様、なんと言った」

案の定、トリオンは顔を赤くして、また立ち上がった。女達はきょとんとしていたが、直ぐに表情を変えた。

「あんた、トリオン様に何言ってるのよ」

「いや、あんたは本気になれば、あの程度の魔物は軽く捻れるんだろうが、弱い相手に時間を掛けてるのが、まあ、俺にはできない芸当なので、少し不思議な気がしていたんだ」

「貴様っ、表に出ろ」

トリオンは真っ赤になって怒り出した。

今日は三叉槍は手にしていないが、腰の剣に手を掛けた。

「す、すみません。私が代わりにお詫びしますです。許してください」

ノラが立ち上がって、二人の間に入って頭を下げた。

トリオンは剣の柄から手を放した。

「ふん。今日の所は勘弁してやる。女に守られるとは情けない奴だ」

今度はウーコンが顔を赤くして立ち上がろうとしたが、ノラが後ろ手で必至に抑えた。元々赤い顔なので、顔色を変えたことは周りにはわからない。

「じゃあ、いくぞ」

トリオンは女たちを連れて出て行った。

「ウーコン、ごめんなさい。出しゃばったことをしましたです」

ウーコンも少し落ち着いて腰を下ろした。

「いや、俺が悪かった。ノラと楽しい時間を過ごしている時に、あんなトラブルを起こすべきじゃなかった。俺は腕に自信があるからいい気になっていたようだ。この世界に来たばかりの時に、シロウからも注意されていたんだが、すっかり忘れていたよ。」

「ウーコンが機嫌を直してくれて嬉しいです。ウーコンなら簡単に勝っちゃうのはわかっているんですけど、楽しい時間には戦ってほしくないです」

「そうだな。ノラの言う通りだ。楽しい時は楽しまなきゃ駄目だな」


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