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まあ、いいか【連載版】  作者:
魔王の探し物
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様子見

 



 悪魔狩りが何かを聞き、納得はしたものの、神族側の裏事情があまりに血だらけで魔族側より物騒だと抱いたのは多分間違っていない。悪魔狩りの再追試となれば、当然以前ヴィルの長兄に報せた天使がまた報せを入れるのは目に見えており、規則を破る天使や神族に再び罰を下す。

 その天使が誰かまではヴィルでも分からないときた。



「兄者が特別親しくしてた天使なんて知らないよ。俺自身、天使に興味ないから」



 幼少期のトラウマのせいで熾天使だけではなく、天使全体を嫌っている節があるようで。ただ、その中でミカエルだけは特別らしい。



「本当に再追試がされるなら、魔界にいるリゼルくんに報せなきゃ、なんだけど」



 魔王としても、確実性がない情報を魔界にいる鬼畜補佐官に伝えるのは躊躇うようで。どうしたものかと一同、頭を悩ませていると控え目なノックが扉から聞こえた。向こう側からした声に魔王が応えるとそっと扉が開かれた。



「あ」



 紫色の瞳が部屋にいたジューリア達を捉えるとバタンと閉まった。きっと一人だと思って訪ねたのだろう。



「どうしたんだろう。貴方に用事があるなら、私達部屋から出ましょうか?」

「後でビアンカの部屋を訪ねるから気にしないで」



 だが、何か用事があって来たのは明白。魔王はこう言うがジューリアとしては気にしてしまう。


「それよりさ!」突然ヨハネスが声を大きくした。



「君の婚約者の皇子が言ってたお茶会って何時やるの?」

「あ、ああ。招待状が届くから、その時に分かるよ」



 ヨハネスは人間が催すお茶会に強い興味を持ったらしく、参加する気満々だ。ジューリオには皇后にお伺いを立てると言っていたが、天使様の願いを断るとは思えない。多分参加を許可するだろう。ヨハネスが変な真似をしないようヴィルも強制参加。ふと、ジューリアは天界のスイーツ事情を訊ねてみた。



「天界に人間が食べるようなスイーツってないの?」

「あるにはあるよ。天使や神族は娯楽が好きだから、そういうのは充実してる」

「ふーん」



 ただ一人「僕はない!」と頬を膨らませたヨハネス。実父に厳格に時間制限、食事制限をされていた彼は甘いお菓子やジュース等といった物を食べた経験がない。大教会で初めて食べたスープに目を輝かせていたのだって、温かい食べ物を初めて食べたからで。

 極端な制限を課せられると解放された時の反動が大きい。前世の同級生に高校生になるまで門限は夜の七時、就寝は十時までに、テレビやゲームを一切禁じられひたすら勉強漬けにされている子がいた。同じ高校に進学したから知っていたが、高校生になると今まで制限されてきた事を解禁されたらしく、反動が大きく出ていた。毎日深夜までテレビを視聴してゲームをして、帰宅時間も大幅に遅くなった。バイトを始めたのもあったから余計に。


 教育熱心な両親も考え物だ。親子関係が高校生になってからはお互い反省もありかなり改善されたと語っていた。



 ——それに比べてあの父親と兄達は……



 どうして自分だけがこうも家族に縁がないのかと内心落ち込んだ。高校生になっても父も兄達も相変わらずであった。



「ヴィル」



 お茶会がどんなものか想像して銀の瞳を輝かせるヨハネスを視界の端に入れつつ、小声でヴィルを呼んで前世について訊いてみた。



「前世の私の周りがどうなってるかちょっとは知ってるんじゃないの? 前にちらっとミカエル様から聞いたの」

「ああ。ちょっとだけなら見たよ。ただ、俺にはどう説明したらいいか分からない」

「もしかして、そんなに酷い有様なの?」

「もう少しちゃんと見てから話すよ」

「う、うん」



 ヴィルが言うのなら、とジューリアは引き下がった。家族だった人はどうでもいいがどうしても親友の小菊や祖父母が気になってしまう。元気にしているだろうか、とか。小菊は大学生活を送っているだろうか、とか色々。



「ヨハネス」

「なに、叔父さん」

「人間のお茶会に参加するからと言ってもマナーはちゃんと守るんだ。それが守れないなら参加させない」

「それ以前に人間のマナーを知らないよ」

「それもそうか」



 天界でもお茶会を開く事はあるらしいがやっぱりヨハネスは参加経験が無かった。現神の座に就いているヨハネスに婚約者はいないのかとヴィルに訊くと、視線がヨハネスに向けられていて。視線で自分で話せと言うヴィルにヨハネスは「いない」と告げた。



「いないというか、父さんが分家筋の神族から選んでる最中って言った方が良いのかな。なるべく、神力の強い子を探してる」

「大変ね神様も」

「全くだよ。ネルヴァ伯父さんの考えで言うなら、僕じゃなくたって父さんがなればいいのに」



 ネルヴァはネルヴァ、アンドリューはアンドリューで考え方が異なる。ネルヴァが神は存在しているだけで尊いと考えても、強い神力を持つ神族こそ神になるべきというアンドリューの考えは決して交わらない。

 元はと言えば、ネルヴァが神の座に就いたままなら誰も苦労はしなかった。

 ジューリアは窓に向かって蝶を放った魔王に目をやった。



「何してるの?」

「うん? ああ、一応ネルヴァくんに報せておいた方が良いかなって。仮にまた追試がされるのなら、ネルヴァくんが出張った方が早く解決するかなって」

「天使が黒焦げになって終わりそうじゃない?」



 再追試に参加した天使がネルヴァに黒焦げにされて、より天使不足に陥りそうだと指摘すると魔王は困ったように苦笑するだけ。天界の問題は神族か天使が解決するべきで、魔族の自分が首を突っ込むことじゃないと首を振る。引き込んでいる側としてはこれ以上は言えず。



「兄者に報せが行ったら、案外こっちに来そうだね。そうなったらヨハネス」

「絶対やだって言ってんの!!」



 ヴィルが何を言おうとしているか瞬時に察したヨハネスは先にヴィルの言葉を遮った。ネルヴァが来ようが天界に戻る気は断固としてないヨハネスに呆れた息を吐いたヴィルであった。


 


 部屋を出たジューリアとヴィル、それからヨハネスは一旦大教会へと戻った。あの後ビアンカが訪れたかは不明だがきっと行っていただろうとジューリアは予想してみた。


 部屋でのんびりしようと提案すると「お嬢様」と神官に呼び止められた。



「どうしました?」

「お嬢様宛に招待状が届いています」

「ありがとうございます」



 神官から招待状を受け取り、封蝋が皇家の家紋なのを見て例のお茶会の招待状だと察した。思っていたより早い到着だと、部屋に戻りペーパーナイフで封を切った。早速招待状の内容を確認してヴィルとヨハネスにも見せた。

 天使様の参加は是非にと書かれており、他には日時が書かれていた。



「お茶会に行くとなるとフローラリア家からドレスを持って来ないといけないか……」

「前に俺が預かったドレスは?」

「そうね……どうせお茶会って殆ど参加した事ないから、一度袖を通しても他家の人は知らないからそれで行きましょう」



 ヴィルに預けたドレスは一度すら袖を通していない物もあり、皇后主催のお茶会で着用しても見劣りしないだろう。そうと決まればヴィルに預けたドレスを明日出してもらい、どれを着るか決めよう。



 ——空が紺色に染まった時刻。多数の小さな星をバルコニーで眺めるネルヴァの許に、ひらり、ひらりと蝶が舞い降りた。伸ばした手に止まった蝶から伝えられた事柄にネルヴァは呆れた溜め息を吐いた。



「やれやれ、懲りないお馬鹿さん達だ」



 以前、規則を破った天使や神族を黒焦げと半殺しのセットに遭わせたのに、まだ諦めていないらしく悪魔狩りの再追試を画策している。

 これを報せたのが魔族の王で、側に現神である甥っ子と弟のヴィルがいる。


 更に甥っ子を連れ戻す為、熾天使が来るともあった。



「エル君がいるから、私は要らないね」





 


読んで頂きありがとうございます。



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