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まあ、いいか【連載版】  作者:
転生先の世界
32/133

相手は純血種の魔族


かなり短めです。






 大教会の客室にて、難しい顔をして光の球形を眺めるヴィル。側にはミカエルが控える。



「分かった、ありがとう」



 ヴィルがそう告げると光の球形は粒子となって消えた。



「帝国に上位悪魔、純血種の魔族が潜んでいるのは間違いなさそうだよ」

「なんと……」



 険しい相貌を浮かべたミカエルの方を向かず、光の球形があった場所を見たままヴィルは続けた。



「兄者が魔王の補佐官から得た情報だよ。まず偽物じゃないだろうね」

「先代神の座にいた方が魔族、あろう事に魔王の……」

「はいはい、小言はそこまで。今はその魔族を見つけるのに専念するよ」



 純血種の魔族は混血の魔族と違い桁違いに強い魔力、そして超越的な美貌を持つ。面食いジューリアが見たら、見目だけであっさりと引っ掛かってしまう。ヴィルが一番だと笑うジューリアは本心から言っていても心配なのは心配。


 魔界の王となる魔族の殆どが純血種。今の魔王もそうだ。たとえ、情けなさが目立ち補佐官に鬼畜の如く扱き使われようが、である。


 居場所は知らなくても連絡を取り合っている長兄のネルヴァに、神が祝福を授ける帝国に上位悪魔の魔族が潜んでいると報せたらすぐに調べると返事がきた。調べるのは兄者ではなく魔王の補佐官なのだが。



「ミカエル君、勝てる自信ある?」

「正直、厳しいでしょう」

「そっか」



 至高の天使でも、純血種の魔族相手は難しい。彼等と対等に渡り合えるとしたら熾天使(セラフィム)を呼び寄せないとならないがヴィルは熾天使(セラフィム)が苦手、否、大嫌いだ。


 四大天使と呼ばれ、神に次ぐ実力者で特別な天使。ネルヴァの予備として教育をさせられていたヴィルが逃げ出すと無理矢理連れ戻し両親の許可を得ているからと痛めつけられた。後からネルヴァに両親共々瀕死の重傷を負わされ、仕返しでヴィルは一度熾天使(セラフィム)を人間界に捨てた。重症のまま。死にはしなくても帰還するのが大変だろうと。

 口を揃えて命令だったから、神のご指示だからと言い訳をする熾天使(セラフィム)の戯言を聞きたくもなかった。


 ミカエルはヴィルの熾天使(セラフィム)嫌いを知っており、悪魔との戦いに秀でる中位三体の三位能天使(エクスシア)を呼び寄せるか問うた。



「はは。この間、兄者は規則……ルールを破った天使見習いや天使、天使を監視する主天使(ドミニオン)を含めた大勢の天使を黒焦げにしたんだよ。天界は今天使不足で毎日多忙だ。何時見つかるかも分からない魔族に能天使(エクスシア)を割く暇はない。元々、振り分けられた任務だってあるんだから」

「なら、私とヴィル様で何とかするしかありませんな」

「そうだね」



 子供の姿ではなく、大人の姿のヴィルなら純血種の魔族だろうと対等に渡り合える。力の加減に波があり、強い力を引き出す一瞬を神経を集中させる戦闘中に見つけるのは至難の技。


 対策を講じましょうと真面目なミカエルと異なり、今日は眠いとベッドに寝転がったヴィル。湯浴みは早くから済ませており、夕食も頂いた。後は眠るだけ。



「ヴィル様」



 ミカエルに咎められるがヴィルは「目的は何だと思う?」と放った。



「目的?」

「そう。目的。確かにジューリアはフローラリア家では冷遇され、不要な子供扱いをされていた。純血種級の魔族なら、姿を見せ信用させた所を殺して食らえばいい」



 ジューリアの部屋の結界は意図的に薄くされていた。侵入も容易。何故魔族は姿を見せず、中位の悪魔にジューリアを襲わせたのか。



「姿を見せられない理由があると?」

「そう考えてる。少し前に、魔界で大規模な粛清があったでしょう?」



 魔王の補佐官とその娘を陥れようとした魔族の家門が補佐官の手によって皆殺しにされた。ただ、幼い子供は記憶を弄られ人間界に捨てられていたり、嫌々従っていた家門は寝返ったとも聞く。



「俺の予想だけど、人間界に捨てた子供に憑依してるかもね。魔力も封じられていたら、人間では見抜けない。ミカエル君」



 ヴィルが何を言おうとしているか察したミカエルは「すぐに向かいます」と姿を消した。ミカエルが立っていた場所には天使の羽が落ちていた。

 ベッドから降りて羽を拾った。



「子供に憑依していたとしても、純血種の魔族に変わらない。俺が相手するしかないか」



 さて、どう戦う?







読んで頂きありがとうございます。



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