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まあ、いいか【連載版】  作者:
悪魔狩、再追試
104/133

堕天使⑤

 




 銀色の光と黒い光が衝突し、周囲を巻き込み被害を拡大させていく。濃度の高い魔力と神力が巻き散り二人の近くにいるだけで危険極まり、速やかにこの場を離れようとヴィルに手を引かれジューリアは走った。

 堕天使に堕ちたカマエルの攻撃を真っ向から受け止めたネルヴァの足下がカマエルに掛けられる力により沈んでいき、一際強い神力を出しカマエルをヴィルとジューリアがいた方とは反対方向に飛ばした。勢いよく後方へ吹き飛ぶカマエルを一瞥すらせず、元いた場所より幾らか距離を取った。神の座に就いていた頃から思い出しても堕天使になった天使はいない、闇に堕ちた神族もいない。ネルヴァ以前の神となれば話は別だが、気の遠くなる昔の話になり無関係となる。



「全部が全部私の所へは来ないか」



 吹き飛ばしたカマエルは無傷の状態でネルヴァの前に舞い戻った。上空にいる堕天使の一部は、逃げたジューリア達の方へ行ってしまっている。

「仕方ない。——リゼ君を呼ぶか」と零した直後、眼前に気配なくカマエルが迫る。振り下ろされた拳を横へ難なく躱し、神力を込めた手がカマエルの顔面をわし掴み地面に叩き付けた。強い銀色の光はカマエルの肉体を容赦なく襲い、絶叫を上げさせた。


 攻撃の手を続けながらネルヴァの空いている手は即座に通信蝶を創り上げ速やかに魔界へ転送した。これが無事リゼルの許に辿り着ければ、リシェルやジューリア達の心配はしないで済む。天使見習いの堕天使とは言え油断ならない。魔力が高くても戦い慣れていないリシェルやビアンカ、ジューリアに至っては魔力操作の練習中で使える魔法がなく、ヴィルに関してはまだまだ元の身体に戻れない。最悪、リゼルが来られない場合を想定し、一刻も早くカマエルを倒すのが最優先となる。



「あああ゛ああああ!!」

「痛い? 痛いよね、魔に堕ちた天使が神の神力を食らえば」

「お、おマエ! 天使では、ないのか!!?」

「私は一言でも天使と名乗った覚えはないよ? カマエルもろとも消えてもらおう」



 手に込める神力がより増幅。ネルヴァの銀瞳がネルヴァの力に呼応し輝きを増した。絶叫を上げるカマエルの声量も力を増幅された事により増す。

 大地が揺れ、空気が震える。戦況は圧倒的ネルヴァが優位。堕天使になった直後にあった異常な殺気も魔力も格段に削れている。このままいけばすぐに決着。——と思われた直後、ネルヴァが力を引っ込めカマエルから大きく距離を離した。この場にリシェルがいたら驚かれただろう。険しい視線を向けていれば、全身から血液を噴き出し、どこを見ても怪我を負うカマエルが息も絶え絶えに立ち上がった。



「はっ……はあ……っ、お、己、勘だけは……良いようだな」

「一つ聞くがカマエルの意思は何処へやった?」

「そんなもの、あるか! 全て私が食らってやったわ!」

「はあ」



 ネルヴァは当てが外れたと溜め息を吐いた。瀕死に追い込んだ後、一時的に攻撃の手を止め、異空間に閉じ込めている神官達を解放させるつもりだった。側を離れたのは態と。当主の言う通りカマエルの意識がないのなら、やり方を変えるのみ。



「もう一度同じ目に遭わせてあげよう」

「図に乗るな若造!」

「年下なのは認めるよ」



 二人同時に地を蹴り、銀と黒の力が再びぶつかる。


 力の押し合いはネルヴァが勝利。力を打ち消され、四方を囲んだ銀の縄がカマエルの身体を拘束。激痛に叫ぶカマエルを神力で創造した球形に閉じ込める事に成功。藻掻き、苦しみ、絶叫する彼を前にネルヴァはカマエルの全身をのた打ち回るように走る黒い靄の意思を操るか考えていた。カマエルの意思が当主に消されたのなら、当主の意思を操って異空間を開けさせればいい。思念の耐久性を知らず、力加減を間違えて消滅されては困る。



「おっと」



 こういう時、イヴかヴィルがいてくれれば……と嘆く間もなく、上空にいる堕天使達が一斉にネルヴァを攻撃し出した。彼等が手に持つのは黒い槍。天使だった頃は白くても、堕天使になれば何もかも黒く染まる。

 軽々と攻撃を躱しながら一人一人確実に消滅させていく。


 離れた場所から聞こえる音や感じる魔力……リシェルやビアンカが追い掛けて来た堕天使に魔法を使っているのだ。即席で作成した通信蝶はリゼルの許に行けなかったか、或いは来れないのかどちらか。

 悪魔狩が始まってしまった以上、魔界の安全は厳重に管理される。合図によって多数の魔族が帰還した筈。次の段階として魔界への扉を閉めた可能性が高い。



「リゼ君でも一度魔界の扉を閉められれば、簡単には人間界に来れなくなってしまうのかな。エル君が戻ったなら、リシェル嬢が関わっていればすぐに飛んで来ると思ったのに」



 期待外れ、と零したネルヴァは地を大きく蹴って宙を舞い、体を一回転させるなり、自身が立っていた場所目掛けて槍を突き刺した堕天使を消した。

 光の粒子が周辺に舞う地に降り立ち、前後左右を囲む堕天使の軍勢を見回す。遠くにヴィル達がいるにしろ、大勢を相手にするなら神力を広範囲に広げ殲滅するのが得策。一斉に襲い掛かった堕天使達へ酷薄な笑みを浮かべ見せた。



「可哀想な君達に、先代神である私から祝福を授けよう」

「は!? 神だと!?」



 驚愕の声を上げたのは当主しかおらず、限界まで瞠目する様を嘲笑う。

 上昇させる神力の影響で全身が銀の光に包まれ、ふわり、ふわりと同じ色の髪が舞う。理性も知性も失った堕天使と違い、当主に操られているカマエルは危機的状況にただ震えていた。





読んでいただきありがとうございます。



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