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カレー、そして首

代は買い物袋片手に雪降る夜道を一人、歩いていた。

「そう言えば……何であの山に迷い込んだんだろ?」

自分では覚えていないのだろうか?

「まあいいや」

いいのか。

代は神社を目指して歩いていた。

少し歩くと、見知った顔が向こうからやってきた。

「あ、狸さんこんばんは」

代がそう言うと狸は

「おや、奇遇だね」

と驚いたように言った。

「こんな時間にどうしたんですか?」

二人(?)は並んで神社に向かって歩いていた。

「いや、ちょっと酒を買いにね…」

狸はそう答えた。しかし今狸は神社に戻るように歩いている。

「でもまあ、今日はいいんだ。それより、代わり人を神社に返す事の方が重要だからなぁ」       狸はそう言った。

「返すって……来た道くらい分かりますよ?」

代はそう言って辺りを見回した。見覚えは……無かった。

「あら?」

代は辺りをキョロキョロした。しかし、やはり見覚えはなかった。

「見覚え無いじゃろ。こんな時間になるとな、妖怪に化かされるのはよくあることじゃ。……ところで」

狸は代の顔を見た。

「代ちゃんは何でわしらが見えるんで?」

代は少し考えた。

「さあ……」

が、答えは結局こうだった。

「もしかしたら……代ちゃんは妖視ができるのかもなぁ」

狸はそう言った。

「なあ、今までに妖怪とか、見たことあるか?」

「さあ……多分無いかと」

「じゃあ幽霊」

「それならちょっとだけ」

「やっぱり、代ちゃんは妖視する力があんのやな。妖視する代、略して『妖しろ』ってとこか。ハハハハハハハハハハ」

狸さんの笑いはうるさかった。


その後、世間話やらをしているうちに、神社に続く階段の前に着いた。

「じゃ、わしはこれで。頑張りや、妖しろ」

狸は森へと消えていった。

「……何か、変なあだ名付けられた気がする」

代は少し立ち止まっていたが、寒かったのでさっさと神社に戻ることにした。

階段を登り切った先には、石造りの大きな鳥居がある。そこには『白山神社』と掛かれた板がかけられている。

「へ〜……。白山神社って言うんだ」

代は神社の名前を今まで知らなかった。と言うのも、きちんと神社の敷地に足を踏み入れるのはこれが初めてだからである。    

「……ってことは、ここは白山っていうんだ…」

代は気付いた。白の名前はここから来ているのか。



「ただいま〜」

「おかえり〜」

居間から白の声がする。

「あら、こたつの使い方分かったんだ…」

代は驚いた。

居間に行くと、白はこたつで震えていた。髪が濡れていたのでどうやら先に風呂に入ったようだ。

「このこたつ壊れてんじゃないの〜?」

と白。それに対して代は無言でこたつのコンセントを差してスイッチをいれた。

三分ほどして

「おお……おおおお!」

どうやら暖かくなってきたようだ。

「こりゃぁ便利!さっすが、かがくってのは凄いねぇ」

白は何だか上機嫌だ。が、こたつには恐ろしい欠点があるのだ。       

それは、こたつ中毒である。


説明しよう!

こたつ中毒とは、入ったこたつから抜け出せなくなることである(物理的に、ではない)。


こたつ中毒を心配した代は

「あ、気をつけて。こたつに長く入ってると足焼けちゃうからね」

と言っておいた。白は

「はいはい」

とだけ返事をした。

「それよりさ」

と代。

「ん?」

白はそう反応した。

「夕食作るの手伝って」

「ん?ああ、別にいいよ」

白は意外な返事をした。絶対に手伝わないと思っていたのに。




「じゃあ、玉ねぎを縦に切って」

代がカレーの箱の裏を見ながらそう言った。

どうやら夕飯はカレーのようだ。まあ、カレーの箱を見ながらカレー以外の物を作るというのはあまりないのだが。

「えーっ…ヤダよ。だって玉ねぎって切ったら『目がァーッ!』ってなるんでしょ?」

白はそう言って目を押さえた。

「あはは〜。そんなにはならないよ〜」

「じゃあ代がやって」

結局、代がタマネギを切ることになった。


「むむ……難しい」

白がジャガイモの皮を剥いていた。皮むき機を使っているので楽なはずなのだが。

「しっかりやってね」

そう言う代の包丁さばきも危なっかしい。切った玉ねぎの大きさがいびつすぎる。

「あっ……」

突然代の包丁が止まった。

「どしたの?指でも切った?」

白が心配そうに代をみた。代の目には涙がうかんでいた。

「代……いったい」

「うがあぁぁぁ!目がァーッ!」

代はそう叫んでどこかへ行ってしまった。

「………玉ねぎって、怖いねぇ」

白が切り刻まれた玉ねぎの山を見ながらそう言った。

にしてもカレーなのに玉ねぎ切り刻むって……ドライカレーじゃあるまいし。



五分ほどして、やっと代が帰ってきた。

「これは泣けるよ」

代はそう言った。

「後は、人参だけだよ」

白はそう言って人参を渡した。

「え?」

代は少し戸惑った。

「私がやるの?」

「そ。その間に私玉ねぎ炒めちゃうから」

「炒めるって……できるの?」

「炒めることなら、前にいた代わり人に教えてもらった」

「切るのは?」

「教えてもらってないよ」

「何で第二段階(炒める)は教わって第一段階(切る)は教えてもらってないの?」

「さあ……」

二人の妙な会話はこれから少しの間続くことになる。




「お、何だかいい感じになってきましたよ」

白がそう言った。台所中にはカレーの匂いが漂っている。

「ん〜……いいんじゃないかな?」

と代。

「意外と簡単だったね」

白は笑顔でそう言った。

「玉ねぎさえなければね」

代は苦笑いしながら言った。

「……よし、完成!」

そしてついに、カレーが完成したのである。




二人は居間に移った。

「それでは……いただきまーす!」

二人は早速カレーを口にした。

それとほぼ同時に二人の表情が険しくなった。

「この人参……固い。何か生で食べてる感じ」

代がそう言った。

「一体何分煮込んだの?」

その後、代には思いがけない返事が来た。

「え?煮込むって、なに?」





「アハハハハ!何、そんな事が昨日あったわけか」

大宮は大笑いした。

「あの時はほんとにびっくりしましたよ」

代は呆れ顔でそう言った。

「で、その張本人は?」

「あそこに」

代は居間の隅を指さした。そこには、白が足を抱えて壁を向いて座っている姿があった。白のまわりの空間が黒く変色している。

「うわっ!……ぜんぜん気づかなかった」

大宮は驚いていた。

「なんか、昨日の晩からあんな感じなんですよ…。話しかけても『うん……』しか言わないし」

代は白を心配そうに見ながらそう言った。     

「こりゃ、相当きてるな…」

大宮はそう言うと鞄からひよっこを取り出した。

「こう言うときは甘いもので釣るのが一番」

そう言うと、白のそばまで歩いていき、ひよっこを手渡した。

「ほら、これで元気出せよ」

「………ありがと」

白は小さくそう言うとひよっこを受け取った。


それから少しすると、白のまわりの黒くゆがんだ空間が普通に戻った。そして白は立ち上がり、くるっと半回転してこちらを向くと

「ふう。やっぱ落ち込んでるときには甘いものが一番ね!」

満面の笑顔でそう言った。

「……うわぁ、単純」

代がそうつぶやいた。

「なんか言った?」

白は代をギロッと睨んだ。どうやら聞こえていたらしい。

「あ、いや、何でも」

「単純な奴だって言ってたよ」

大宮がそう言った。

「ちょ、大宮さん!」

代はあわあわと慌てた。

「ハハハハハハ。面白いね。いい風景だよ。実に微笑ましいね〜」

しかし、大宮はとても嬉しそうだった。

代は不思議な気持ちで大宮を見ていた。すると突然

「代っ!覚悟!」

「え?」

振り向いた代の顔に白の回し蹴りが直撃した。

代はそのまま畳に倒れこんだ。          

「……いくら何でも、やり過ぎじゃないの?」

大宮が気絶した代を覗き込みながらそう言った。

「う…うん……。もしかして、死んじゃった?」

白が何だか後味悪そうにそう言った。激しく瞬きしている。どうやら動揺しているようだ。

「多分、生きてはいると思うけど……。お〜い、代ちゃ〜ん」

大宮は代の頬を軽く叩いた。代は起きない。

「………ま、とにかく寝かせとこう。山神、布団しいて」

「う、うん…」     

白は直ぐに言われたとおりに布団を敷き、代を寝かせた。

「もしかしたら、首の骨おれてるかもな……」

大宮が真剣な表情でそう言った。

「えっ!」

白は少し叫んでしまった。かなり驚いたようだ。

「嘘。折れてるわけ無いでしょ」

そう言うと大宮はクククと怪しく笑った。

それを見た白は

「大宮さん……何だか怖い」

といった。



「んん…………」

代は目を覚ました。何だか目を覚ますのは本日二度目でございますみたいな気がする。

額には濡らした雑巾……雑巾!?…違った、濡らした布がおいてある。

代が起きあがろうとしたとき

「うっ……!」

首に鋭い痛みがはしった。

「あぁ……痛って〜」

代はまたゆっくりと横になった。

「ううう…白の奴……」

「あ、起きた!良かったー死んだかと思ったよ」

どこからともなく白がやってきた。噂をすれば何とやらってやつか?

「下手したら死んでたよ」

代は苦笑いでそう言った。

「とにかく、今お医者さん呼んだから」

白はそう言った。

「医者って……まさか妖怪の?」

「人間の!里見先生っていうの」

「ふーん……。あ、そう言えば大宮さんは?」

「里見先生を迎えに行った。車で。……首、大丈夫?」

白が心配そうに言った。

「いや……残念ながら大丈夫じゃないみたい…」

代は冗談抜きで言った。 

「これで歩けなくなったりしたらどうしよう」

代がそう言うと、白は

「まあ、何かあったらちゃんと埋めてあげるから心配しないで」

と、純粋な笑顔で言った。

「まあでも、もうそろそろ先生来るはずだから心配しないで」



「ほら、急げこの藪医者!」

「なによ!来てやってるんだから少しは感謝しなさい!」

玄関の方でそんな言葉が聞こえる。代は心配になった。

「(なんか……逆に殺されそうな気がする)」

代は真剣にそう思った。

ドタドタ足音が聞こえる。

「あ、彼女がそう?」

女性の声がした。

「こんにちは。お嬢さん。私は里見律子よ。これからよろしくね」

黒い、ストレートの長髪、適当な服の上から羽織った白衣が印象的な女性が代の顔をのぞき込んだ。美人である。白が嫉妬しそうなくらいに。        

だが、代は心配になった。医者の腕と美しさは関係ないのだ。それにさっき、藪医者って呼ばれてたし。

今回は急いだからあんま面白くなかった。


反省反省。

次回からは気をつけます。

と言っても、何を気をつけるんだか(笑)

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