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幸せの降る夜  作者: 里桜
9/31

9.

「紗絵!」


ビルの前に着いたと連絡があり、外に出た。


「こっちこっち!」

「蓮斗、クルマ持ってたの?」

「寒いから、早く乗って」


わ、メガネだ♡

蓮斗、メガネの横顔が田中 圭に似ている。


「紗絵、俺の顔はいいからさ、家どこ?」

「あ、えっと・・・」


カーナビに住所を入れた。


「いまの時間だと20分もあれば着くな」

「早いね」

「道が空いてるから・・・紗絵、寝てたら? 着いたら起こすから」

「寝ない」

「ん?」

「寝たら、あっという間に終わるから」


ふふ、と笑って蓮斗は言った。


「紗絵、必要なもの取りに行って、良かったら、そのままうち来る?」

「え?」

「多分そうしたとしても、あっという間に終わると思うけどね」

「行こう・・・かな」


そう答えながら、もちろん、小さな葛藤はあった。

私は蓮斗のことをよく知らない。

知っているのは、職業が何かと、どこに勤務しているかの、たったふたつだけ。


だけど、上手く説明できないけれど、あっという間に、離れ難くて、一緒にいたくて、何かが呼び合うような、そんな存在になった。


例えて言うなら、遠い過去でふたつに分かれた、その半分を見つけたような気がしていた。


「紗絵、誘っといて何だけどさ」

「うん」

「俺のこと、そんなに信用して平気?」

「え?」

「何だろ、いろんな順番すっ飛ばしてると思うけど、気にならないのかなって」

「蓮斗」

「ん?」

「蓮斗の横顔、いいね。なんかドキドキする」

「茶化すなよ、紗絵」

「・・・気にならないことは無いけど、自分の勘を信じてるから。蓮斗に違和感、感じない」

「違和感?」

「うん。キスした時に分かる。あ、このキス、違和感ある・・・って。この人じゃないなって思う」

「俺は合格だったわけ?」

「合格っていうか、今回は自分からしたくらいだし」

「そうだった。紗絵に抑え込まれたんだった」

「アハハ」


20分は、本当にあっという間だった。


「着いたよ」

「うん。少し待っててくれる? 10分もあれば出て来れるから」


降りようとバッグを肩に掛けた時、蓮斗が私の右手首をつかんだ。

そして、覆い被さるような格好で、私にキスをした。


「もう一回、確かめた方がいいよ」

「・・・」

「俺といて、平気? 止めるなら、今だよ」


違和感どころが、キュンキュンし始めた・・・。私、間違いなく蓮斗が好きなんだ。


「止めるって言ったら・・・」

「え?」

「本当に止めるって言ったら、どうするの?」

「・・・分かんない。余計なこと言ったなって思った」

「蓮斗・・・」

「紗絵ごめん。もうこのまま連れてっていい?」


キスする時に外したメガネを掛けて、蓮斗はクルマを出した。


「紗絵、明日の昼まで、このまま一緒にいてくれないかな。バカなこと言ってるって思うかもしれないけど、俺、紗絵に運命感じてて。だから・・・だからっていうのも変だけど、正直言うと、少しも離れたくないんだよね」


涙が出た。

それも、ボロボロ出た。


「わ、紗絵どうした? ティッシュ・・・」

「ねぇ、蓮斗」

「ん?」

「蓮斗も確かめてみたら?」


信号が黄色から赤になるのを確認して、私は蓮斗にキスをした。




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