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幸せの降る夜  作者: 里桜
8/31

8.

「仕事、終わったら連絡して」

「うん」

「紗絵、これ着て。帰り、もっと寒いから」


蓮斗は上着を脱いで、私の両肩に掛けた。


「いいの?」

「いいよ。バス乗るから」

「ありがとう」

「じゃあ・・・行くよ。ほら、紗絵も行って」

「うん、じゃあ」


ビルに入り、エレベーターで上の階に登りながら、なんだか寂しい気持ちになった。

さっきのは夢・・・?

そう思うほど、不思議な時間だった。


夢ではありませんように・・・。

そう願って、オフィスのドアを開けた。



「中村さん! こっち、フォロー頼む」

「部長、もう原因は分かってるんですか?」

「分かってる。だけど、その後のリカバリーが結構大変で・・・」

「私そこやるので、部長はユーザーへの説明を」

「そうだな、電話してくる」


予想はしていたけれど、メンバーは、みんな自分の目の前のことで精一杯のようだった。


「今からタスク整理します。みんなで手分けしてやりましょう。5分後に始めるので、それぞれ飲み物用意して、会議室に集まってください!」


私はひと足先に会議室に入り、壁一面のホワイトボードに状況を整理した。

誰が何をすればいいか、どういう順番で進んでいくのか、どんな結果が出れば終わりなのか・・・できるだけ分かりやすく書いた。


「中村さん、僕は3番のデータ作成でいいですか? 何件くらい作りますか?」

「そうだな・・・念のため、一通りの組み合わせで頼める?」

「了解です。30分くらいで」

「ほんと? さすがだね、早い!」


会議室に集まったメンバーは、それぞれホワイトボードを見て、自分のやる事を理解して席に戻っていった。


「中村さん、助かるよ。状況整理と成果物確認、引き続きよろしく頼む」

「はい、承知しました。ユーザーは何て言ってました?」

「明後日の夜までに、システム処理結果が欲しいって。月曜の朝イチから業務に使いたいらしい」

「明後日の夜ですか・・・。じゃあ、いま整理したタスクが一通り終われば、今夜は解散で良さそうですね。続きは明日の昼からでどうですか?」

「そうだな。そうしよう」


時計はもう、22時を回っていた。


「終わりました!」

「お疲れさま。今日はもう帰っていいよ。まだ電車ある?」

「え、いいんですか? てっきり徹夜かと」

「その代わり、また明日の昼からお願いね」

「はい、お先です!」


ひとり、またひとりと、オフィスから人が帰って行った。

なんとか全員、日付が変わる前に帰れそうだ。


メンバーが作業してくれた結果をひとつずつ確認しながら、明日の段取りを考えていた。

ほとんど人がいなくなったオフィスで、大きなあくびをした。溜まった疲れには勝てないな・・・。


ホワイトボードを明日用に書き換えて、パソコンの電源を切った。

ちょうど24時を過ぎたあたりだった。


「もう寝ちゃったかな・・・」


蓮斗の電話を鳴らすと、1回の呼び出し音で声がした。


「紗絵?」

「うん」

「仕事、終わった?」

「いま終わったところ」

「迎えに行くからそこで待ってて」

「え?」

「すぐ行くから」


私の返事を待たずに、電話は切れた。

誰かに迎えに来てもらうなんて、いつ以来だろうか・・・。嬉しかった。




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