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幸せの降る夜  作者: 里桜
3/31

3.

「なんだかすみません・・・」

「いえいえ」


そんなに距離があるわけでもなく、5分もかからずにお店に着いた。


「こんな近くに専門店あったんですね。知らなかったなぁ。先月、引っ越してきたばかりで」

「人事異動ですか?」

「そうなんです。へぇー、美味しそうなのたくさんありますね」


夜勤のある仕事って、何をしてるんだろうか。

ホテル、医療、製造、警察、消防、コールセンター、あとは監視のエンジニアとか?


「俺はサラダサンドとカツサンドと・・・あなたも何か買いますか?」

「私は・・・メンチコロッケサンドを買おうかと」

「一緒に払いますよ。連れてきてくれたお礼に」

「いや、そんな困ります! 自分で・・・」


止めるのも間に合わず、お会計が済んでしまった。


「こちらこそ、すみません。払っていただいて」

「いや、全然。教えてもらって良かったです。夜勤の時は毎回来ようかな」

「あの、お仕事って・・・」

「ああ、俺、看護師なんです。駅前から、バスで10分くらい行ったところに大学病院ありますよね? あそこに勤めてて」

「へー、看護師さん・・・」

「男なのに、って思ったでしょ?」

「へっ?」

「ほら、思ってる」


まぁ、確かに、思った・・・。

でも思ったのは、どうして看護師を選んだのか、って。


「あー、そろそろ行かないと夜勤に間に合わないな。俺、坂本です。あなたは?」

「中村です」

「中村さん、お店、教えてくれてありがとうございました。じゃ」

「こちらこそ、サンドイッチありがとうございます。お仕事・・・行ってらっしゃい」


頑張って・・・というのも、おかしな気がして、これから行くなら『行ってらっしゃい』だよね。


「行ってらっしゃい・・・すごい久しぶりに言われた気がします。行ってきます!」


坂本さんはバス停に向かって走っていった。

その後ろ姿を見送り、手元に残ったメンチコロッケサンドをバッグにしまった。


その時、景色がゆがんだ。


めまいだ・・・最近、増えてきた。このところ、ちゃんと薬飲んでなかったからな。また飲まなきゃ。

頭を左右に振り、めまいが治まったことを確認してから家に帰った。



メンチコロッケサンドを食べながら、さっきまでの出来事を思い出していた。

まさかサンドイッチが縁で、男の看護師さんと知り合うことになるとはね。


坂本さん・・・。

年齢は、同年代くらいかなぁ。背はそんなに高くなくて、身体はちょっとガッチリめで、顔は・・・誰に似てたかな。


って、私、あの短時間で観察しすぎじゃない?


考えてみたら、まともに男性と話すのって仕事関係ばかりで、仕事抜きで話をしたのっていつぶりだろうか。

付き合っていた人もいたけれど、それだって仕事関係ばかりで、いま思えばずいぶん狭い世界だ。


しまいこんでいた鉄剤を白湯で飲みながら、めまいが治まることを願った。しかしこの鉄剤、どうも身体に合わない・・・久しぶりに飲んだのに、やっぱり胃が痛む。

痛みを我慢しつつ、また坂本さんに会えるかな・・・と、バス停に向かった後ろ姿を思い浮かべていた。




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