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幸せの降る夜  作者: 里桜
2/31

2.

中村 紗絵(さえ)、36歳。

システム開発会社で、開発担当のエンジニアをしている。10人ほどのチームを任されるようになって、3年が過ぎたところだ。


私が担当しているシステムは、年末年始や真夜中のトラブルは無いけれど、モノによっては、24時間365日トラブルが起きる可能性がある。


夜中に電話がかかってきたり、休日に呼び出されたりして、そのまま徹夜・・・なんてこともあったりする。

私もシステムトラブルで徹夜したことがあるけれど、本当に何日か身体がおかしくなった。


それが嫌で、とにかくトラブルを未然に防ぐために、開発中は目を皿のようにしてイライラしながら仕事をしているのだけれど。


「中村さん、おはようございます。昨日見てもらったところ、再実施終わってます。結果、確認してもらえますか?」

「もちろん! 沢田くん、朝からありがとう!」


メンバーの頑張りや気付きには、ちゃんと『ありがとう』を言うようにしている。

その一言で、メンバーとのバランスは保てているんじゃないか・・・と思っている。


「俺、中村さんのチームに入れて本当に良かったですよ。開発中は大変だけど、システムリリースしてからのトラブルがほとんど無いんで、精神的にかなり楽になりました」

「そっか、沢田くん、前は上島チームだっけ・・・先週も、夜間の大量処理でトラブル起きてたもんね」

「はい、同期が死にそうになってました」


チームメンバーに、できるだけ負荷が掛からないように、いろいろ考えてやってきた効果が出ていた。

その結果が評価されて、ポジションやお給料が上がったのも嬉しかった。




ただ。


抱え込みすぎたのか、イライラを重ねすぎたのか。




毎年受けている婦人科検診で、釘を刺されてしまった。


「子宮筋腫が大きくなってきています。仕事、あまり無理しないようにね。ストレスが一番良く無いのよ」

「・・・分かりました」

「ひとまず経過観察ね。貧血症状が強くなってきたりしたら、すぐに来て」

「はい」



困ったな・・・。

これから先、いくつか大きなプロジェクトが控えてるのに、大丈夫だろうか。

でもここまで頑張ってきて、誰かに渡すのもシャクだしな・・・。


仕事は仕事で充実していたけれど、身体のことを考えると、ため息しか出なかった。


せめて、今日は早く帰ろう。

そう決めて、山のようなタスクを片付け始めた。



「昨日譲ってもらったんで、今日はどうぞ」

「え?」


帰り道に寄ったコンビニ。パン売り場のコーナーで、ふいに声を掛けられた。


「サンドイッチ、好きなんですか?」


声に聞き覚えがあった。

昨日の・・・。


「俺も好きなんです。仕事の合間にも手軽に食べられるし」

「仕事の合間・・・これから仕事ですか?」

「はい、夜勤なんで」

「あの、サンドイッチ好きなら、今の時間だと商店街のサンドイッチ専門店、まだやってますよ」

「え? 専門店?」

「はい。知りませんか?」

「知らないです。結構種類あるんですか?」

「さすがにもう夜だから、売り切れてるものもありますけど、コンビニより多いですよ」

「そうなんだ。商店街のどこにあるんですか?」


「・・・一緒に行きます?」




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