徒然なるままに書き記す【皇さつき】
官能小説家
翔馬から言われたこの単語が頭から離れない。もしかしたら初めて自分から何かをしようと思えるかもしれない。
そう思うとベットから起き上がってしまう。
「んぁ。さつきさん?」
「すまんな翔馬、起こしたか?」
「いや大丈夫」
「ちょっとトイレに行ってくる」
「んん、いってら〜」
私はトイレに行きつつ今日の出来事を少し思い出していた。
秘宝館から帰った私達を皆はニヤニヤした顔で出迎えた。事前にどこに行くか言っていたので早く内容が知りたかったようだ。
睦希に至っては、綺麗に染めた金色の髪よりも目が輝いている。葉月も興味津々。エプロンを着ておたまを持ったまま鼻息荒く見つめてくる。
「男子禁制!!」
「男俺しかいないじゃん」
ソフィアがおもむろにそう言うと私は2階の彼女の部屋に連れていかれた。
「で、どうだった聖地は?」
「ですです! 気になってご飯が喉を通りませんでした」
「私も気になって練習どころじゃなかったわ」
「ワクワク、ドキドキッ」
弥生さんに至っては擬音を言ってるだけなのだが、皆内容が知りたくてウズウズしている。だから私は結論から述べる。
「パンツを替えた枚数で言うと10枚だな」
「「「「おぉ!」」」」
いや、おぉ!
と言われても少し複雑なのだが。
「さつきちゃんのパンツ10枚いただきました」
「ヤバいわね、それは大事よ」
「山田くんッ替えのパンツをー」
「キャー秘宝館ってそんなにエッチな所だったの」
みんなして大盛り上がり。
「うむ! 展示内容も素晴らしかった、特にだな」
それから私は秘宝伝の秘宝たらしめるものをつらつらと述べていく。
「キャー」
「わぁ〜」
「昔はそんな物で」
「うむ。実に見応えがあったぞ」
「お客さんは居たの? そんなマニアックな所、少ないイメージなんだけど」
「いい質問だ睦希よ。私も行くまで少ないと思っていたんだが、案外いっぱいだった」
「「「「へぇ!」」」」
「女性客も多くてな。同じ展示物で共感してる光景を見ると、私も1人じゃないと思えて心強かったぞ」
「ワタシも行きたかったな」
「じゃあ今度みんなで行きましょう」
「弥生さんナイスです!」
「ですです!」
それからも質問攻めに合い結局2時間程話し込んでしまった。
料理を途中で抜け出してきた葉月は慌てていたが、そこは流石翔馬だ。文句1つ言わず残りの作業を終えて、しらたま達と遊んでいた。
「ご、ごめんなさい先輩!」
「気にすんなよ、みんなが楽しく話してるのは聞こえてたからな。もういいのか?」
「はい」
「んじゃ、飯にすっか!」
彼の器の大きさは些細な事でも垣間見えてくる。そこがまたカッコイイ所だ。
「「「「「いただきます」」」」」
食事を終えて後片付けは弥生さんと睦希に任せて私達はお風呂に入る事にした。他の4人は既に済ませているのでゆっくり長風呂といこう。
「さつき、ちょっとちょっと」
「ん、なんだ翔馬?」
先に脱衣所で服を脱いでいた私に、後から入ってきた翔馬が小声で話しかける。そしてコソコソしながらお腹に何か隠していた。
「お風呂でコレ食べよーぜ」
「そ、それはっ!」
なんとさっき晩御飯を食べたばかりだと言うのに彼の手には、2つの雪のもっちりしたやつが2個握られていた。
「お風呂で食べるコレが美味いんだよ。な? いいだろ?」
「確かに美味そうではあるが」
こっそり持ってきたとあって、翔馬は少し汗をかいていた。だから私は彼の背中を先に流してやる。
「ありがとな、さつき」
「構わんよ、今日付き合ってくれたお礼だ」
「いつでも付き合ってやるさ」
「じゃあ夜の体操にも付き合ってくれ」
「それはダメ」
「ケチ」
そんな事を話しながら少し窓を開けて外気を取り入れる。
「あぁぁぁぁ〜気持ちいい〜」
「いい風だな」
翔馬の家は一軒家であり周りに他の家もない。加えて風呂の周囲には鬱蒼とした木々が生えているから覗きの心配もない。
プラス同居人が女の子ばかりという事もあり、人感センサーやら監視カメラやらをいつの間にか設置してくれていたのだ。もちろんホームセキュリティも入っているらしい。
気の効かせ方がもはや要塞レベルではないか。
「さつき、コレ食べよーぜ。ちょうど半生くらい」
「ふむ! どれ」
私はのぼせていたのか本気なのか翔馬の言葉に従い彼の下半身を鷲掴みにした。
「おまっそっちじゃないって! なに自然に揉んでんだよ」
「おっと失礼。半生と言ったからな」
「びっくりしたわ! あまりにも躊躇いがなくて」
「私はいつでもウェルカムだ!」
バカ話をしながらのお風そして翔馬の半生の感触を手に残しながら食べるアイスは絶品だった。
「とまぁ、こんなものか」
トイレに行った帰りに自室によって今日あった出来事を記す。
「今度、官能小説を借りてくるか」
文書を書く事がこんなに楽しいとは思わなかった。
報告書やテストとは違い、私の書きたいように書ける。そして心の内をさらけ出しても誰も文句を言ってこない。
「小説、書いてみようかな」
私の初めての目標ができた瞬間だった。