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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第二章 関係構築編
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圧力鍋のように圧が凄い【皇さつき】

【圧力】

 押し付ける力。

 最近では同調圧力など少数意見を数の暴力で封じ込める賛同や、マイナス面での捉え方が目立ってきているが、単語だけを切り取ってみればそんな面ばかりではないだろう。


 圧力釜とか圧力鍋とか、炊事に関して言えば便利な道具の代名詞みたいである。


 しかし、押し付ける力が親切心によるものだったら世間はもっとにこやかに過ごせていたのだろうか……今の私のように







 「あらやだ〜翔馬きゅんじゃない〜」

 「これ、今日仕入れたトマトよ〜」


 「まぁまぁ! そちらの可愛いお嬢さんにもサービスね! ちょっとあなた〜お花があったでしょ? 持ってきて」

 「おう小僧、アジのいい奴が入ったんだよ! サービスするから買っていきな」

 「翔馬君、これはいつも来てくれるお礼ね」


 私は、苦笑いを浮かべていた。


 「さつきさん……手伝って」

 「ふむ、こういう事か」


 翔馬について行き、商店街に到着するとこの歓迎ムードに飲み込まれた。学校に届く手紙や電話では知っていたがここまで凄いとは思わなかった。


 そういえば、買い出しに行く弥生さんや葉月も似たような事を言っていたような。


 「凄いな翔馬は」

 「冷静な判断は今はいらない。持てないから手伝ってくれ」

 「うむ」


 商店街の暖かで優しい圧力をその身に受けつつ、本来の仕事もこなしていく。



 「――今回少し内容が変わって、出店場所と時間はここに」



 かれこれ1時間半をかけて組合や出店者への通達を終えた。


 「みんな好意的で良かったな」

 「あぁ、それもこれも翔馬のお陰だよ」


 私達はお茶屋の前の長椅子に座って一息入れていた。


 「うぉ! この団子めちゃくちゃ美味い。さつきもどうだ?」

 「そうか、では頂こう」


 私は翔馬から差し出された竹串にパクリと噛み付く。あんこがこれでもかとあしらわれた団子はほっぺがゆるゆるになるほど甘かった。


 「美味いな! そして渋めのお茶によく合う」

 「だろう? っていっても俺もこれを食べるのは初めてなんだよね」

 「そうなのか?」


 話としてはたわいない内容でも翔馬と一緒にいる時間が心地よく感じる。


 「あぁ、時子さんに教えて貰ってな」

 「なるほどな。というかお前はどこでも人気者なんだな」


 そんな事を私は思ってしまう。普段学校と家でしか彼の事を知らなかったので、今日の外出は新たな一面を知れて嬉しかった。


 「さつき程ではないさ」

 「お世辞はいいぞ」

 「本心なんだけど」


 彼の優しさが今は少し胸に突き刺さる。



 「俺はさ。あの学校で尊敬出来る人をあげるなら間違いなく皇さつきって言うぜ」

 「ふふふっそうか、私は逆にお前を推そう」


 笑う私に翔馬は団子をもう1つ食べながら口にする。



 「もちつもたれつってやつだ」

 「餅だけにか?」


 「くくくっ上手いなさつき。ここの餅は弾力があって最高だぜ」

 「職人さんの想いが詰まっているのだろう」


 私と彼はお互いに冗談を言い合いつつ、黄昏に染まる空を見つめる。


 「押し付ける力にも、色々あるんだな」

 「うむ。できればその力を誰かの為に使いたいものだ」


 私の独り言ともとれるその言葉を聞いて、彼はあんこよりも甘い言葉で締めくくる。




 「俺の力はさつきの未来の為に使おう」

 「……翔馬」



 惚れてしまうではないかっ!!




 ずっと前から惚れていた。

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