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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第二章 関係構築編
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バランスって凄く大切【皇さつき】

 働きすぎも、休みすぎも体に悪い。


 これは私の経験なのだが何事も程々にというのが理想なのだ。


 具体的には20分を一区切りとして作業を進めれば、集中力を欠く事無く作業を進行できる。というのをどこかの本で読んだことがある。


 実際に試してみたら私には見事にハマったのでなるべくその習慣を取り入れている。


 コンコンッ


 「む、開いてるぞ!」


 人が休憩しようとした矢先に、来客を告げるノックの音が響く。私は少しばかり嫌悪感を抱きながらも務めて明るく返事をする。


 「よっ! さつき」

 「なんだ、翔馬か」


 知った顔の来客に一安心する。文化祭が近いという事もあり予算の交渉や出展場所の拡大などで生徒会室に訪れる輩がいるのだ。



 「忙しいそうだなさつきは」

 「まぁな、これでもマシになった方だぞ?」


 生徒会役員が尽力しているお陰で私の負担は随分減ったものだ。それもこれも彼のお陰というのが妙に面白い。


 私は口元を隠しながら、ふふふと笑う。


 以前はもっと殺伐とした雰囲気の生徒会を知っているから今のこの現状が少し面白く感じる。



 「どうしたんだ? まさか、忙しすぎて壊れたとか」

 「バカを言うな。昔の事をちょっとな」


 「昔ねぇ」


 彼はあまり興味が無さそうに話題を変える。


 「今日の仕事は終わったのか?」

 「いや、あと少しデータ入力したら終わるんだが、今は休憩中だ」


 「そっか」


 そっけなく返す彼は不意に私の元へ近づくと机にコトリと2つの物を置く。


 「ナナメの入れ知恵か」

 「どっちがいい?」


 置かれた2つの飲み物を見て笑う彼は楽しそう。私もつられて笑ってしまう。


 ぷるるんるんるんプリン

 チャチャッと抹茶(激苦)


 「わかっている癖に」

 「まぁな、それじゃあコレで」


 「「じゃーんけん……」」


 私はプリンを勝ち取った。そして彼は渋い顔をしながら抹茶を飲んでいる。そして、飲み終わった頃に彼がまた口を開く。


 「さつきさんや。データ入力手伝うので終わったら商店街に行かいかい」

 「商店街か」


 「うん。町の人達に最終確認と出展場所の変更を通達したくて」

 「ふむ。それがいいだろうな……急遽内容が変わった訳だしな」


 私達は当初、町の人達と共同で出店をする予定だったのだが……睦希の一件があって色々と変更しなければいけなかった。


 それでも、以前から打診していた商店街の店の人達は快く承諾してくれた。それの最終通達と出展場所の変更を彼にお願いしていたのだ。


 「まぁ、1人で行ってもいいんだけど」

 「けど?」


 彼は少しそっぽを向きながら答える。


 「息抜きになればな、と」


 こういう不器用な優しさに私は惚れたのだろうな。


 「そんな事を言ったら、濡れるではないか」

 「替えの下着なら持ってるよ」


 「嫁になってくれ!」

 「俺は男だっつの!」


 「ははっ」

 「ふふふ」



 忙しさの中にある一時の安らぎ……これを求めて私は今頑張っているのだろう。


 何気ない会話、少しの優しさ、誰か1人でも私の事を見てくれているという現実。


 「ありがとな、翔馬」

 「文化祭成功させような!」



 誰かの為に頑張るのではなく、私の恋の為に頑張ってみよう。


 だってこれがきっと、私の初恋なのだから。

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