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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第二章 関係構築編
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裸の付き合い【皇さつき】

 

 「はぁ、生き返るなぁ」

 「……翔馬よ」


 「ん? どうしたさつき。まさか今更恥ずかしくなったのか?」

 「いや、そうではないんだが」


 「珍しくハッキリしないな。なんか悩みでもあるのか?」


 私は翔馬に今の悩みを打ち明けるべきかどうか悩んでいた。


『自分は一体何の為に頑張っているのか』


 他の人からしたら大した悩みではないのかもしれない。成績も悪くなく、家柄もあり、自分が言うのはどうかと思うが、容姿にもそれなりに自信がある。これ以上何を望むというのか。



 「さつき」

 「ん? なんだ翔馬」


 「髪の毛、洗っていいか?」


 はて? 髪の毛を洗う……翔馬が?

  今までそんな事をされた覚えはないのだが、せっかくなので委ねてみるのもいいかもしれない。汚れと一緒に私の悩みも洗い流してくれたらいいのだけれど。


 「うむ、ではお願いしようかな。ついでに前も洗ってくれて構わないぞ」

 「そっちは自分で洗ってくれ」


 「ちっ」

 「子供かっ」


 彼はまず私の髪にゆっくりとお湯をかけてほぐしてくれる。そして、シャワーを頭の上から毛先まで満遍なくかける。そしていよいよシャンプーかと思うがそうではなく彼は自身の指を使って私の頭皮をマッサージしてくれる。



 「手のリハビリになるんだよな」

 「なるほどな、気持ちいいぞ」


 おでこの生え際から、耳の付け根、そして後頭部、最後に頭頂部からジグザグに頭皮をほぐしていく。


 「おぉ、なんか……すごい安らぐ」

 「俺も最近気付いたんだけど、どうやら俺は髪フェチらしくて、こうやって人の髪を触るのが好きなんだよな」


 「ようこそ、変態の園へ」

 「さつきの変態はハードルが高いよ」

 「確かに」


 「「ははは」」



 誰かと話ながら風呂に入るのは楽しいものだ。いつもはソフィアと葉月が水鉄砲で遊んでいるからな。それも見ていて楽しいんだが、こうやって想い人との入浴は安らぎと愛おしさが随分と違う。



 「普段どのシャンプー使ってるんだ?」

 「シャンプーはこれだよ」


 このお風呂には各女性陣で使う物が全部違うので、シャンプーやトリートメント、ボディソープ、はてはタオルまで様々なものが置いてある。


 「すまんな、占領してしまって」

 「構わないさ、風呂場は広いし、ここまで賑やかだと逆に楽しくなる」


 「そっか」


 彼は私が指さしたシャンプーを手にとると、ゆっくりと馴染ませて、髪に触れさせる。そして丁寧に毛先まで指を通していく。



 「んっ」

 「わりぃ、変な所触ったか?」


 「いや、大丈夫だ続けてくれ」


 髪が性感帯ではないのだが、彼から触れられるとなんとも艶なまめかしい声が出てしまう。


 はぁ気持ちいい、ずっとこうしてたい。


 彼の優しさが髪を通して伝わってくる。大胆で繊細な指使い、時折見せる荒々しさ、それでいて細部にまで気を使うその心。


 ダメだ……濡れてきた。


 「しょ〜ま〜」

 「おわっと、ちょっとまだ洗い終わってないんだが」


 私は後ろを振り返り翔馬に抱きついていた。そして、裸なのをいい事に自分の魅力の一つである、たわわなたわわを彼の胸に押し付ける。


 「どうだ? 柔らかいだろう?」

 「柔らかいのはわかったから、どいてくれ。髪が途中だ」

 「せっかく女性が迫っているというのに、翔馬は意気地無しだ!」

 「そうかもなぁ」


 そんな私の反論に、彼は同意してきた。いつもなら文句の1つでも言ってくるのでちょっと意外だ。


 「なにか悩み事か翔馬?」

 「それはさつきだろ?」


 先輩として後輩の悩みを聞くつもりだったのだが、翔馬はそれを読んで逆に質問で返してきた。全く、この男は。


 「……翔馬は意地悪だ」

 「知ってる」


 そんな彼に私は白旗をあげて、今日感じた事、思った事をポツリポツリと話始める。


 彼は私の髪を丁寧に洗いながら、ときどき相槌を打ちながら聞いてくれて、そして最後に。



 「ほんっっっっっとうに頭硬いな、さつきは」



 私の頭をグリグリしながら答えた彼の手は……仄ほのかに薔薇の香りがした。

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