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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第二章 関係構築編
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暖色の風景【皇さつき】

 

 「たっだいま〜」

 「今帰ったぞ〜」


 「おかえりショーマ、会長」

 「夕飯はもう出来てますよ」

 「あらあら、なにかいい匂いがするわねぇ」


 私達を出迎えてくれる同居人達、睦希は自室で歌の練習をしているとの事。


 「何か美味いメンチカツ屋があってさ。さつきと一緒に行って買ってきたんだよ」

 「うむ、アレは美味かった……あっ」


 「つまみ食いしたのね」

 「あらあら、さつきちゃんったら」


 私はあまりの美味しさについつい感想を言ってしまった。


 「まっ皆でまた食べればいい」

 「あははは、そうだな」


 翔馬が苦笑い気味にフォローしてくれたので皆も笑っている。そして睦希を呼んで6人揃った所で夕飯を食べ始める。


 「しらたまちゃん、美味しいですか?」


 失礼、6人と2匹だ。私達と一緒に朝と夕飯を食べている先輩猫がいた。


 「ぜんざいも沢山食べてね!」


 しらたまぜんざいの餌やり当番はもっぱらこの2人、葉月と睦希に任されている。そしてそれを見つめる悲しい目……飼い主本人だ。


 「しらたまとぜんざいが俺の元から離れてゆく」


 普段はちょっと生意気でそれでいて頼りになる男なのだが、猫には甘々な気がする。


 ん? だから猫田ナナメに相談したのか?


 いやいや、名前だけで判断してはいけないとあれほど。


 「さつき、食べないのか?」

 「だったらワタシに頂戴よ〜このメンチカツ、サクサクしててめちゃくちゃ美味しいわ!」


 「弥生お姉ちゃん、今度一緒に買いに行きたいです」

 「いいわよ葉月ちゃん。お姉さんが連れて行ってあげるわ」


 なんとも賑やかな食卓。母と2人きりで食べていた頃とは大違いな風景だ。


 「私はお腹いっぱいだからソフィアにあげるとしよう」

 「わーい! ありがとう会長」


 私はメンチカツの残りをソフィアにあげると、味噌汁を飲み干してご馳走様をする。食べ終わった食器をシンクに置いて水を張る。リビングのソファに座るとこの家のマスコット、ぜんざいが私の横に来て撫でろ言わんばかりに見つめてくる。


 「ぜんざいが私の所に来るのは珍しいな」


 そういえばこの子は、ソフィアや睦希が悩んでいる時にもこうして傍に寄っていたような。もしかしたら動物にしかわからない第六感みたいなものを読み取っているのだろうか。


 「よしよし……ありがとなぜんざい」

 「にゃお」


 一声鳴くと嬉しそうにゴロゴロと言い始めた。そうしている間に皆も食事が終わり片付け当番の睦希とソフィアが鼻歌を歌いながら食器を洗い始める。


 「さつきちゃ〜ん、お風呂沸いたわよ〜先に入ってきなさ〜い」


 どうやらお昼に1度お湯を止めて風呂掃除をしてくれていたらしい弥生さん。そんな彼女から一番風呂の誘いを受ける。


 「いや、私は最後でいいぞ? それよりも翔馬が先に」

 「なに言ってんだよさつき。順番なんて気にすんなよ。入りたいやつから入ればいいさ」


 彼はそう言ってくれるが、家主より先に入るのはと私は考えてしまう。いつもは女性陣皆で一緒に入るから気にしなかったが、最近は個別に入ることも多くなっている。


 「私はしらたまちゃんと遊ぶので」

 「私達は片付けがあるので」

 「私は大学のレポートがあるので」

 「俺は……寝るので」


 翔馬はとってつけたような事を言っていたが、多分皆は私を気遣ってくれたのだろう。どこかいつもと違った雰囲気の私に気づいてくれた。その事が少し嬉しく思う。


 だから私はその思いを汲み取るように返事をする。


 「ありがとう皆……ではお言葉に甘えて」

 「あぁ、そうしてくれ」


 「翔馬! 一緒に入るぞ!」

 「なんでだよ?」


 今週は私のターン。

 だから一緒にお風呂も許されるだろう。そこで少し愚痴を言わせて貰おう。きっと彼ならなにかアドバイスをくれるかもしれない……いや、くれないかもしれない。


 まぁ、どっちでもいいか!

 翔馬とお風呂に入れるなら。


 「さぁ、行くぞ! きりきり歩け」

 「まっいいか」


 彼は何かを諦めたように私の後ろを付いてくる。

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