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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第二章 関係構築編
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思い出の隙間に見える陰【皇さつき】

 

『一体なんの為に頑張っているのだろう』


 まさか、ここにきてこんな事を思うとはな。


 私は生徒会室の椅子座り、夕陽が沈む窓を眺めながら昔を思い出していた。



【幼少期】

 まだ体調が良かった頃の母に甘えてばかりいた。当時は父も優しく会社も成功していたので何不自由なく生活していた。兄とはたまに玩具の取り合いで喧嘩をしていたが、末っ子と言う事もあり甘やかされて育っていった。


【小学校低学年】

 体が弱くなった母親の代わりに、家事や炊事をする事が多くなる。使用人を雇えばいいと父は言ったが、私と家族を繋ぐ唯一の行為だと思い反対した。


 その頃から父は仕事ばかりになり、私は表ではいい子を演じていたが、父親への不満は溜まっていく一方。唯一、兄と共に母さんの面倒を見る事が楽しみだった。


【小学校高学年】

 私も女の子としての自覚が出てきて、オシャレやファッションに興味を持つようになった。その頃からだろうか……母の回復を願って髪を伸ばし始めたのは。


 しかし、周りの連中は余程友達と呼べる人間ではなかった。親から私の父親の会社の事を聞いたのだろう……私を見る目がお金の形をしている事くらいすぐにわかった。


【中学時代】

 いよいよ本格的に人間不信になっていた。周りからの期待の目、皇家に対する眼差し、社長令嬢としての羨望、嫉妬、欲望……


 それらが私に襲いかかり、父親に当たる事も多くなった。また、兄も父の手伝いをする為に家に帰ることが少なくなり、私は母と共に家で過ごす事が多くなる。


 「さつき、私の為にそこまでしなくていいのよ? 自分の為に生きなさい」


 そんな事を言ったって、母上は私がいないと。


 きっと私は言い訳を探している。誰かの為に頑張る事で自分自身を肯定したいだけなのだ……それはきっと依存というのだろう。


【高校時代】

 学園長の教育方針に感銘を受けて入った高校。自由な校風、挑戦を尊重してくれる環境……しかし凄いのは学園長であって私ではない。いつの間にか自分を殺して、皆の中の皇さつきを演じている。


 高校1年生の秋頃に、教師の推薦で生徒会選挙に出てみたものの、結局の所は皇グループのご令嬢として扱われたに過ぎない。生徒会役員に決まったのに私はまるで実感が無かった。


 そんな、自分を殺しているヤツがまともに生徒会をやれるはずも無く、当時の私の評判はあまり良くなかった。程なくして当時の生徒会メンバーが引退を迎え、私はまた教師の推薦でエスカレーター式に生徒会長になってしまった。


 退屈な毎日とプライベートの重圧に押しつぶされながら、私は高校2年生になる。


 春、生徒会室に部活の申請書を提出する為に訪れたという彼と出会う。


 「こんちはー! 部活の申請に来たんですけど」

 「……あぁ、そこに置いておいてくれ」


 「――なんだこれは? ふざけているのか?」


 当時の私は表情もほとんど無く、なんとも素っ気ない態度だった。母の事、父の事、自分の事、その全てが嫌になり自暴自棄になっていた。


 だから、部活申請に来た彼に八つ当たりみたいな事をしたのだろう。

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