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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第二章 関係構築編
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悩む黒髪

 チュンチュン……


「んん……なんだぁ、なんか重たいような……」


 俺は体に違和感を覚えながら目を覚ます。その違和感の正体を確かめる為、布団をめくると……


「すぅ……すぅ……」

「…………」


 可愛いらしい寝息を立てる睦希がそこにはいた、俺の胸を枕替わり……いや抱き枕替わりにして寝ている。


(こうやってると、あの頃の睦希なんだけどな)


 俺はそんな、感想を抱きつつ時計を見る。

 時刻は午前5時18分


(女性陣と過ごすようになって、益々早起きなんだが……)


 翔馬は気づいていないが、彼は無意識の内に防衛本能が働いているのである。度重なる襲撃により本能が早く起きろと覚醒を促すのだ。


「はぁ……眠れない」


 この状態で二度寝など出来るわけはなく、俺はそのまま小一時間ほど抱き枕の役割を全うした。


 ◆

「ふぁ〜……んにゃ、翔馬〜おはよ〜」

「あはよ、睦希。ヨダレ垂れてるぞ」

「ふいて〜」


 寝ぼけているのか、普段とはエラい違いを見せてくる。そこも含めてお世話するのが今週のパートナーとしての役割か……


「ほら、顔こっち向けろ」

「うみゅ〜」


 なんとも水生生物みたいな声をだしながら、顔をくしゃくしゃにしてこっちを見てくる。


「はい終わり、顔洗ってこい。朝ごはん食べるぞ」


 俺はゴミ箱に睦希のヨダレで濡れたティッシュを捨て、部屋を出ようとした所で後ろから暖かい温もりを感じた。


「……どうした、睦希」

「……学校……行きたくない」

「…………」


 泣きそうな睦希の声……彼女は部活を休んでいる。きっとその事が原因なんのかもしれない。


(どうすっかなぁ……ソフィアの時とは少し違う気もするが……)


 俺は迷いに迷った挙句、睦希を無理に学校に行かせる必要は無いと判断した。


「じゃあ、サボるか!」

「……えっ?」


 俺は睦希の不安を取り除く決意をする。


「いや……今のは冗談で……」


 慌てて睦希は俺から離れようとする、しかし俺は知っている……俺を掴む睦希の腕が震えていた事に。だから今度は俺が睦希を掴む番だ。


「冗談の顔には見えないぞ……」


 俺は振り向き、睦希の肩にそっと手を置く。その瞬間、彼女の震えが少しだけ和らいだ気がした。


「ダメ……なのに……」

「なにがダメなんだ?」


 優しく尋ねる。


「もうすぐ……大事な文化祭なのに」

「うん……」


 俯いてる睦希の頬に触れる。


「私が……しっかりしなきゃ……なのに」

「お前はいつもしっかりしてるよ」


 俺の手に……暖かな雫が伝う


「翔馬を助けなきゃ……いけないのに」

「十分助けて貰ったさ」


 俺の胸に暖かい黒髪揺れて……震えている。

 だから……


「今度は俺が助ける番だ!」

「…………うん」




 俺は今度こそ返せるのだろうか……暗闇に沈みそうになっていた俺の心を救ってくれた、あの優しさに……黒くてしっかりとした絆に……報いることは出来るだろうか



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